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サウンドガーデン、ロックの殿堂入り決定:シアトル発グランジの先駆者が音楽史に名を刻む

©︎TDC Photography / Shutterstock.com
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2025年4月27日、シアトル出身の伝説的グランジバンド「サウンドガーデン」が、ロックの殿堂(Rock and Roll Hall of Fame)入りを果たしました。1984年に結成され、シアトル発のグランジ・ムーブメントを牽引したバンドのひとつである彼らが、正式に音楽史に名を刻んだことになります。

この記事では、サウンドガーデンの功績に加え、創設メンバーのヒロ・ヤマモト、シアトル出身でロックの殿堂入りを果たしているアーティストやバンド、そしてロックの殿堂についてもご紹介します。

目次

サウンドガーデンとは? グランジ黎明期を支えた伝説的バンド

Chris Cornell and Soundgarden Perform at the Sound Academy on January 25, 2013 in Toronto.
©︎Brian Patterson Photos / Shutterstock.com

サウンドガーデンは、1984年に日系アメリカ人ベーシストのヒロ・ヤマモトがギタリストのキム・セイル、4オクターブの声域を持つボーカリストのクリス・コーネルとともに結成したシアトル発のロックバンドです。2年後の1986年には、伝説的なコンピレーションアルバム『Deep Six』に参加し、グランジシーンの注目を集めました。

その後、ドラマーのマット・キャメロンが加入し、サウンドガーデンはシアトルのインディーズレーベル『Sub Pop(サブ・ポップ)』からデビューEP『Screaming Life』をリリース。この作品はサブ・ポップにとっても記念すべき2作目のスタジオリリースとなり、シアトルの音楽シーンを象徴する存在へと成長していきました。

1989年には『Louder Than Love』を発表し、グランジバンドとして初めてメジャーレーベル(A&M Records)からアルバムをリリース。ヒロ・ヤマモトが離脱した後、1990年にベン・シェパードが加入し、続く『Badmotorfinger』(1991年)、600万枚以上のセールスを記録した『Superunknown』(1994年)、『Down on the Upside』(1996年)で、サウンドガーデンはメインストリームで確固たる地位を築きました。

サウンドガーデンは1997年に一度解散しましたが、2010年に再結成。ライブ活動や新作アルバム『King Animal』(2012年)をリリースしました。しかし、2017年5月18日にボーカリストのクリス・コーネルが急逝したことで、サウンドガーデンは事実上その活動に終止符を打つこととなりました。代表曲には、「Black Hole Sun」「Rusty Cage」「Outshined」「Spoonman」「Fell on Black Days」などがあります。

シアトルのMoPop前に設置されたサウンドガーデンのフロントマン 故クリス・コーネルの銅像
©︎Jie Liu

ロックの殿堂:「サウンドガーデンが築いたメインストリームへの道は、ニルヴァーナ、パール・ジャム、その他多くのグランジバンドにとって道を開くものとなり、さらにブリットポップ、インダストリアル、ライオット・ガールといった多様なオルタナティブサウンドがメジャーシーンに進出する土壌を作った。彼らがハードロックやメタルの新世代に与えた影響は計り知れず、その遺産は今も世代を超えて響き続けている」

ロックの殿堂入りメンバー

  • マット・キャメロン(Matt Cameron)
  • クリス・コーネル(Chris Cornell)
  • ベン・シェパード(Ben Shepherd)
  • キム・セイル(Kim Thayil)
  • ヒロ・ヤマモト(Hiro Yamamoto)

創設メンバー、ヒロ・ヤマモトの歩みと情熱

サウンドガーデンの初期を支えたヒロ・ヤマモト氏は、1984年から1989年にかけてベース演奏や作曲、時にはリードボーカルも担当し、バンドの音楽性を形作る重要な存在でした。

その後、サウンドガーデンがメジャーデビューを果たし、商業的な成功を収める中で、ヤマモト氏は音楽産業のビジネス的な側面に違和感を抱くようになります。「音楽が製品として扱われ、ジャンルに縛られることで個性が失われていく」と感じたことからバンドを離れる決断に至りました。この思いは、2022年にアジア系アメリカ人の功績をたたえる『Asian Hall of Fame(アジア系アメリカ人の殿堂)』入りを果たした際に受けたKING5とのインタビューでも語っています。

その後、ヤマモト氏はウエスタン・ワシントン大学で化学工学を学び、現在は飲料水の検査を行う企業で有機化学の主任として活躍しています。科学や数学、量子力学への情熱を持ち続け、「変わったことを数学で表現するのが好き」と話すヤマモト氏は、音楽活動も続けており、2016年にはサーフロックトリオ「Stereo Donkey」を結成。2018年にはEPをリリースするなど、今も音楽への情熱を絶やしていません。

ロックの殿堂とは? 歴史と意義

ロックの殿堂(Rock and Roll Hall of Fame)は、音楽業界において革新をもたらし、広く影響を与えたアーティスト、プロデューサー、業界関係者を顕彰するため、1983年に設立されました。

通常、デビューから25年以上経過し、かつ大きな影響力を持ったアーティストが対象となり、オハイオ州クリーブランドにある専用ミュージアムも音楽ファンの聖地となっています。

2025年 ロックの殿堂入りアーティスト一覧

今年、ロックの殿堂に選ばれたアーティストは以下の通りです。

  • パフォーマー部門:
    • サウンドガーデン
    • バッド・カンパニー
    • チャビー・チェッカー
    • ジョー・コッカー
    • シンディ・ローパー
    • アウトキャスト
    • ザ・ホワイト・ストライプス
  • 音楽的影響賞:ソルト・ン・ペパ、ウォーレン・ジヴォン
  • 音楽的卓越賞:トム・ベル、ニッキー・ホプキンス、キャロル・ケイ
  • 業界功労者賞(アーメット・アーティガン賞):レニー・ワロンカー

授賞式は2025年11月8日にロサンゼルスのピーコック・シアターで開催され、Disney+で生配信、後日、ABC と Hulu で放送予定です。

ロックの殿堂入りを果たしたシアトル出身のバンド&アーティスト

サウンドガーデンの殿堂入りは、シアトルの音楽史に新たな1ページを加える出来事となりました。ロックの殿堂入りを果たしたシアトル出身のバンド&アーティストをまとめました。

ジミ・ヘンドリックス(The Jimi Hendrix Experience)

殿堂入り年:1992年
シアトル生まれのギタリスト。エレクトリックギターの革新的な演奏スタイルで、ロックの歴史を塗り替えました。『Are You Experienced』『Electric Ladyland』などで世界的に高い評価を得ています。

ハート(Heart)

殿堂入り年:2013年
アン・ウィルソンとナンシー・ウィルソン姉妹を中心としたロックバンド。ハードロックとフォークを融合させた独自のサウンドで、1970年代から80年代に数々のヒットを生みました。代表曲は『Barracuda』『Alone』など。

クインシー・ジョーンズ(Quincy Jones)

殿堂入り年:2013年
シアトル育ちの音楽プロデューサー、作曲家。ジャズからポップス、映画音楽まで幅広く活躍し、マイケル・ジャクソン『Thriller』のプロデュースなどで知られます。音楽界に与えた影響は計り知れません。

ニルヴァーナ(Nirvana)

殿堂入り年:2014年
カート・コバーン、クリス・ノヴォセリック、デイヴ・グロールによるバンド。1991年のアルバム『Nevermind』でグランジを世界的なブームに押し上げました。代表曲は「Smells Like Teen Spirit」「Come as You Are」など。

パール・ジャム(Pearl Jam)

殿堂入り年:2017年
シアトルで結成され、グランジを象徴する存在として世界的成功を収めたバンド。音楽性だけでなく、社会的なメッセージを重視する姿勢でも、高く評価されています。

サウンドガーデン(Soundgarden)

殿堂入り年:2025年
クリス・コーネル、キム・セイル、ヒロ・ヤマモトらによって結成。グランジ黎明期を支え、「Black Hole Sun」「Rusty Cage」などの代表曲で知られる、シアトルサウンドの象徴的バンドです。

アリス・イン・チェインズ(Alice in Chains)は、 2025年現在、殿堂入りはしていませんが、グランジの “Big Four”(Nirvana、Pearl Jam、Soundgarden、Alice in Chains)の一角として非常に高く評価されています。今後のノミネートが期待されています。

グランジバンドが育ったシアトルのライブハウス

シアトルのグランジムーブメントは、小さなライブハウスを中心に育まれました。代表的なライブハウスは以下の通りです。

  • The Crocodile(クロコダイル):グランジの聖地とも呼ばれ、ニルヴァーナやパール・ジャムも初期に出演。
  • The Showbox(ショーボックス):シアトル中心部にあり、サウンドガーデンなどがライブを行った歴史ある会場。
  • Moore Theatre(ムーア・シアター):ライブハウスよりは大規模なライブもできる劇場。多くのグランジバンドが飛躍するきっかけとなった場所。

グランジムーブメントを最初に支えたラジオ局:KEXP(旧KCMU)

世界で初めてオンエアされたニルヴァーナのアルバム 『Nevermind』を手に持つボランティアのジャックさん。
注:2025年現在、KEXPの局内ツアーは催行されていません。

また、サウンドガーデンやニルヴァーナの楽曲をいち早くオンエアしたのが、シアトルの非営利ラジオ局KCMU(現KEXP)です。KCMUはワシントン大学のキャンパスラジオ局としてスタートし、メインストリームに乗らないインディーロックやグランジを積極的に紹介していました。当時のKCMUのスタッフがサウンドガーデンのデモテープを取り上げたことが、地元シーンの広がりに大きな影響を与えたと言われています。

KEXP は、シアトル・センターの一角に拠点を移した後も独立精神を貫いており、オルタナティブミュージックファンに支持されています。


サウンドガーデンのロックの殿堂入りは、シアトルで生まれたグランジが世界の音楽に与えた影響の大きさを改めて示すものとなりました。そのサウンドはさまざまなアーティストにも影響を与え、ソーシャルメディアなどを通して今の若い世代にも受け継がれています。

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