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グローバル環境におけるリーダーシップ

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日本では、米国を中心に海外事業拡大のニーズが高まる一方で、それを牽引できるリーダー人材の確保・育成が喫緊の課題です。Webrain では、グローバルで活躍できるリーダーの資質を明確に定義し、それを企業カルチャーと結びつけることが、グローバルビジネスでの競争優位につながると考えています。今回の Seattle Watch では、グローバル環境におけるリーダーシップを考察します。

目次

日本企業の海外展開が加速するなかで高まる米国市場への注目

2025年2月に発表された「ジェトロ海外ビジネス調査(日本企業の海外事業展開に関するアンケート)」によると、今後3年で最も重視する輸出先として「米国」を選ぶ企業が急増し、全体の約4割が米国を事業拡大先として挙げています。また、米国で新規拠点の設立を検討する企業は300社を超え、前年から100社以上増加する結果となっています。

米国を事業拡大先とする理由としては、「市場規模・成長性」(88.3%)が最多で、「顧客(納入先)企業の集積」(35.4%)と「自社の海外拠点戦略に基づく(拠点再編・多角化など)」(34.0)が続いています。業界別に見ると、飲食料品や自動車・同部品で、米国を最重要輸出先とする企業の割合が特に高くなっています。

また、2025年度の海外売上高については、全体の56.8%が前年度比で「増加」を見込んでおり、医療品・化粧品、飲食料品、化学、小売では回答企業の6割以上が増加を予測しています。さらに、今後3年程度の海外進出方針では、すでに海外拠点を持つ企業の47.9%が「さらに拡大を図る」と回答し、海外拠点を持たない企業では「新たに進出したい」とする割合が40.8%と、前年より上向く結果となっています。

グローバル経営人材の不足という共通課題

このように、多くの日本企業が事業のグローバル化を進める中で、グローバル経営を推進できるスキル・経験を備えた経営層やリーダー人材の確保や育成は、依然として日本企業にとって喫緊の課題となっています。

実際、三菱UFJリサーチ&コンサルティングがグローバルに展開する大手企業を対象に実施した「グローバルリーダーの計画的育成に関する実態調査」では、グローバルトップ(経営者・役員クラス)について、量的不足を認識する企業が8割、質的な育成の必要性を認識する企業が7割に上るという結果が出ています。

また、育成ゴール(人材像・要件など)が明確でないと答えた企業が6割以上、育成手法が定まっていないとする企業が7割以上といった実態も明らかになりました。

グローバルリーダーに求められる能力と潜在力

グローバル事業を推進できる経営層や事業を実際に率いるリーダーに求められる資質や人材像とは、一体どのようなものなのでしょうか?

Deloitte では、25年間蓄積した60カ国、2万3000人以上の経営者情報を基に科学的に研究した情報から、世界で活躍するリーダーの条件について考察しています。同社では、これらの8つの能力定義に照らして、それぞれの経営課題解決に適した次世代のリーダーを育成を行うことが望ましいと結論づけています。

8つのリーダーシップ能力(ケイパビリティ)定義

  • 企業力:(1) 組織を巻き込む力 (2) 方向性の指示
  • 推進力:(3) 推進力 (4) 人材を育む力
  • 対人関係構築力:(5) 影響力 (6) コラボレーション
  • ビジネスをけん引する力:(7) 判断力 (8) ビジネスにおける優位性

さらに、リーダーシップの能力開発の背景には、個人が持つポテンシャル(個性・価値観)が大きく影響しており、これらの潜在能力に働き掛ける能力開発機会を提供することが、今の時代に求められる能力を効率良く伸ばすカギであると指摘しています。

能力開発を後押しする12のポテンシャル(潜在能力)

  • 認知(Think):(1)変革への前向きさ、(2)明快な判断、(3)概念的思考、(4)視野の広さ
  • 行動(React):(5)推進意欲、(6)精神的なタフネス、(7)リスク志向、(8)心の知能指数
  • 協調(Interact):(9)他者への敬意、(10)社会的柔軟性、(11)自己信念、(12)挑戦意欲

これらのリーダーシップ能力(ケイパビリティ)やポテンシャル(潜在能力)は、時代や業界を超えて普遍的な要素といえます。しかし、Webrain では、それらを企業のカルチャーとどのように紐づけて、従業員に対して伝えていくかが、企業の競争力の源泉になると考えています。例えば、シアトルの代表的な企業である Amazon と Microsoft では、次のようにリーダーシップについて定義をしており、企業のカルチャーの中に取り入れています。

AmazonとMicrosoftに見るリーダーシップの実践

Amazon のリーダーシップの定義

まず、Amazon では、Our Leadership Principles(OLP)という16の原則を掲げています。これは、チームを持つマネージャーだけでなく、社員全員がリーダーであるとする考え方に基づいており、日々の行動を通じてリーダーシップ・プリンシプルを体現・実践することを目指しています。そのため、Amazonでは、採用および昇進においても、OLPの基準を取り入れており、Amazon独自の文化の基盤となっています。

Microsoft のリーダーシップの定義

また、Microsoft では、Growth Mindset(グロースマインドセット:人の能力は固定されたものではなく、経験や努力によって伸ばすことができる)をリーダーの理想像として掲げており、常に学び続けること(learn-it-all)を特に重視しています。そして、同社のCEOであるサティア・ナデラ氏は、トップ自らがカルチャー変革のロールモデルとなって率先しており、自身の発言と行動において常にグロースマインドセットを示しています。

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提供:Webrain Think Tank 社
【メール】 contact@webrainthinktank.com
【公式サイト】 https://ja.webrainthinktank.com/

田中秀弥:Webrain Think Tank社プロジェクトマネージャー。最先端のテクノロジーやビジネストレンドの調査を担当するとともに、新規事業創出の支援を目的としたBoot Camp Serviceや、グローバル人材の輩出を目的としたExecutive Retreat Serviceのプロジェクトマネジメントを行っている。著書に『図解ポケット 次世代インターネット Web3がよくわかる本』と『図解ポケット 画像生成AIがよくわかる本』(秀和システム)がある。


岩崎マサ:Webrain Think Tank 社 共同創業者。1999年にシアトルで創業。北米のテックトレンドや新しい市場動向調査、グローバル人材のトレーニングのほか、北米市場の調査、進出支援、マーケティング支援、PMI支援などを提供しています。企業のグローバル人材トレーニングや北米進出企業のサポートに関しては、直接ご相談ください。

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