皆さん、こんにちは。Yukoです。
前回は、赤ちゃんの人生の最初の「1001日」における、肌と肌が触れ合うこと(タッチケア)の重要性についてお話ししました。今回はそこから一歩進んで、私たちが触れ合うときに身体の中で起きているサイエンスと、言葉の壁をも越える「歌とタッチ」の力についてお届けします。
“触れる”がつなげる人と人、文化と文化
― 言葉を超えて伝わる、声とリズムとタッチ ―
ベビーマッサージには、赤ちゃんの便秘解消や睡眠の質の向上など、さまざまな身体的効果があります。しかし、続けていくうちに多くの親御さんが実感するのは、そうした効果以上に「子育てへの自信」が湧いてくること、そして我が子との間に「深い心のつながり」を感じられるようになることです。
さらに、私のベビーマッサージクラスに参加してくださる親御さん同士の間にも、言葉の壁を越えた横のつながり(コミュニティ)が自然と生まれていきます。クラスの後に「なんだかしあわせな気持ちになりました」という声をよくいただくのですが、この温かい現象の背景には、いわゆる“しあわせホルモン”と呼ばれる「オキシトシン」の働きがあります。
オキシトシンは脳の視床下部から分泌されるホルモンで、肌と肌が心地よく触れ合うことで分泌が高まります。ストレスを軽減して心を安らげ、相手への信頼感や愛着を深める効果があります。
このオキシトシンはマッサージを受ける赤ちゃんだけでなく、触れている親御さんの脳内でも同じように分泌されます。心地よい声、リズム、タッチが共有されることで、言葉の枠組みを超えて心がダイレクトにつながりやすくなるのです。
さらに、オキシトシンには心身をリラックスさせるだけでなく、記憶力の向上や社会性・学習の発達を促す効果も期待されています。安心・安全の中でかけられる言葉は、赤ちゃんの脳にすんなりと吸収されやすいため、ふれあいながら歌ってあげることは、赤ちゃんの「言葉の土台」を築くことにもつながっていきます。
どの言語で話しかける?という悩み

国際結婚のご家庭や、シアトル近郊で暮らすバイリンガル環境のご家庭から、よくこんな相談を受けます。
「子どもには日本語と英語、どちらの言語で話しかけるべき?」
「私は英語が完璧ではないけれど、現地での育児のために英語で話しかけるべき?」
「パートナーが日本語を話せないのでため、家庭内で孤立させてしまわないか心配……」
結論からお伝えすると、「親御さん自身が、一番心が落ち着き、自然に感情を乗せられる言語」で話しかけるのがベストです。
なぜなら、赤ちゃんは言葉の意味を理解する前に、親の声のトーン、話すリズム、そして触れられる手の温もりから「私は愛されている、ここは安全な場所だ(セーフスペース)」という感覚を敏感に受け取っているからです。
脳は、心からの安全と安心を感じて初めて、新しい環境や言葉を学ぶことができます。無理に慣れない言語で緊張しながら話しかけるよりも、親御さんがリラックスして、愛おしさを100%込められる言葉を使うことこそが、赤ちゃんの心の安全基地を作ります。
日本語と英語の歌 × ベビーマッサージ
言語の壁や「何をおしゃべりしたらいいんだろう」という緊張を、一瞬で溶かしてくれるのが「歌」の力です。私のクラスでは、日本語の伝統的なわらべうたと、英語のナーサリーライムの両方を取り入れたベビーマッサージを提案しています。
例えば、クラスでよく歌うのは『Tobby Thumb(トビー・サム)』という英語の歌。簡単なフレーズを繰り返しながら指のマッサージをしていくのですが、国籍を超えてママもパパも一緒になって大合唱になることがあります。それは本当にミラクルで温かい光景です。
逆に、日本語のわらべうた『うえから したから したから うえから おおかぜ こい』を使ったふれあい遊びも、日本語がわからない親御さんに「楽しい!」と大人気です。
歌のリズムに合わせて肌を撫でることで、手の動きに心地よいテンポが生まれます。日本語が第一言語の親御さんにとっては、英語の歌を一緒に歌うことが、現地社会と我が子をつなぐ小さな「架け橋」のように感じられることもあるでしょう。どちらの言語であっても、そこに流れるのは「ひとつの温もり」です。
ベビーマッサージは「日常の関わり」

「ベビーマッサージ」と聞くと、オイルや時間をしっかり確保して……と大仕事のように構えてしまうかもしれません。でも、中心にあるのは、決して身構えて行う特別なイベントではないということです。
お風呂上がりにスキンケアをしながら優しくなでる、絵本を読んだあとの流れで手をマッサージする、授乳後や寝る前にわらべうたを口ずさみながら背中をトントンする。日常のほんの数秒、数分の関わりすべてが立派なタッチケアであり、ベビーマッサージの本質です。
身体心理学の第一人者である山口創先生は、その著書『幸せになる脳はだっこで育つ』の中でこのように述べています。
「金銭は生活に必要な分だけあれば、それ以上持っていても幸せにはつながらない。むしろ愛、思いやり、信頼、感謝といった人間関係でのポジティブな感情が人を幸福にするということです。このポジティブな感情の土台となるのが、スキンシップといえるのです。」
異国の地での育児には、時に迷いや葛藤がつきものです。けれど、日々の忙しさの中で、少しだけ呼吸を合わせて「触れる」瞬間を重ねてみてください。その手のぬくもりこそが、お子さんがこれからの長い人生を幸せに生きていくための、一番強固な土台になっていくはずです。
リビングストン 祐后(ゆうこ)
元看護師。ベビーマッサージ教室主催&産後ドゥーラ。2008年より東京都立小児総合病院(旧・清瀬小児病院)にて、小児科や産科など多岐にわたる領域で10年以上の臨床経験を積む。2024年、Blossom&Berry ベビーマッサージインストラクター認定。現在はシアトル近郊を拠点に、日本語と英語のバイリンガルで親子向け教室を開催。発達心理学に基づいたアタッチメント(愛着形成)を軸に、マッサージを通じた「子どもの心を育む親子の絆づくり」をサポートしている。
公式サイト:yukomylilnest.podia.com
公式インスタグラム:@yuko_lilnest_babymassage
メール:yukoliv0513@gmail.com

