H-1Bビザは、特殊な技術や知識を必要とする専門職に従事する外国人労働者に適用されるビザで、専門分野での学士号、または同程度の実務経験が必要となります。 通常、アメリカの4年制大学を卒業した外国人が利用するケースが多い一方、国外で学士号を取得した外国人や、あるいは同程度の実務経験がある外国人にも適用されます。
このコラムでは、H-1Bビザの新しい申請要件と最新の移民法動向について解説します。
トランプ政権による特定の非移民労働者の入国制限
2025年9月19日、トランプ大統領は特定の非移民労働者の入国を制限する「Restriction on Entry of Certain Nonimmigrant Workers」と題した宣言を出しました。
この大統領宣言(presidential proclamation)にもとづき、2025年9月21日アメリカ東部時間午前0時1分以降に提出された新規のH-1B申請は、通常の申請料の他、追加申請料金として、10万ドルを支払うことが義務づけられました。
さらに、10月20日、移民局はこの大統領宣言がどのように導入されるのか、どの申請者に該当するのかなどの詳細を補足しました。
大統領宣言の対象
- 2025年9月21日アメリカ東部時間午前0時01分以降に、アメリカ国外に在住し、有効なH-1Bビザを保持していない外国人労働者のために提出されたH-1B申請
- 2025年9月21日アメリ東部時間午前0時01分以降に、アメリカに滞在中の外国人労働者のために提出されたH-1B申請で、consular notification (領事通知)、port of entry notification (入国通知)、またはpre-flight inspection (飛行前検査) をリクエストした場合
- 2025年9月21日アメリカ東部時間午前0時1分以降に提出されたH-1B申請で、change of status (ステータス変更)、amendment of status (ステータス修正)、extension of status (ステータス滞在延長)をリクエストし、移民局が、H-1B申請は認可したものの、外国人労働者がステータス変更、ステータス修正、またはステータス延長の対象外と判断した場合
大統領宣言の対象外
- 2025年9月21日アメリカ東部時間午前0時1分までに提出されたH-1B申請で、すでに発行され、現在も有効なH-1Bビザを保持している外国人労働者
- 2025年9月21日アメリカ東部時間午前0時1分以降に提出されたH-1B申請で、change of status (ステータス変更)、amendment of status (ステータス修正)、extension of status (ステータス滞在延長)をリクエストし認可された場合
なお、対象外の外国人労働者が、現在のH-1Bビザで米国への再入国を求める場合や、アメリカを出国し、承認された申請にもとづき米国領事館でH-1Bビザを申請した場合でも、大統領宣言の対象になることはありません。
申請料の支払い方法
10万ドルの追加申請料の支払いは、申請者であるスポンサー(企業・団体・政府機関など)が、米国政府の公式サイト pay.gov から行います。スポンサーは、10 万ドルの支払い証明書を申請書類と一緒に移民局に提出します。
申請には支払い証明書が必要です。あるいは、該当しない場合、または下で説明するように、例外に該当する場合には、その証拠を添付します。
National Interest Exemption: 米国の国益への貢献による例外
外国人労働者の活動がアメリカの国益になると判断した場合、10万ドルの支払いが免除される可能性があります。判断基準は以下の通りです。
- 外国人労働者の活動がアメリカの国益になる
- 役割を担うアメリカの労働者がいない
- 外国人労働者がアメリカの安全保障や福祉を脅かさない
- 支払いを義務づけることがアメリカの国益を損なう
スポンサーは「外国人労働者が、この基準を満たしている」と考える場合、証拠資料を H-1BExceptions@hq.dhs.govに送り、例外の対象となるかどうかの判断をリクエストします。
現段階では、どのような資料の提出が必要なのか、また審査にどの程度の時間がかかるのかなどの詳細は発表されていません。
H-1B 制度における、その他の見直し案
これ以外にも、トランプ政権は H-1B制度の見直しを検討しています。
会計年度(10月1日から翌年9月30日まで)におけるH-1Bビザの新規発給数には限りがあり、これをCAPと呼びます。現在、このCAPは一般枠が6万5,000件、特別枠(アメリカの大学で修士号以上の学位を取得した人)が2万件と定められています。
現在、H-1B申請は、上限の対象となる外国人労働者の雇用を求めるスポンサー企業が、登録期間中に電子登録システムに申請を希望する外国人労働者を事前登録し、無作為抽選のもと当選した場合にのみ申請を提出する資格が与えられるシステムになっています。
しかし、この抽選方法を、現在の無作為方式から賃金水準ベース方式に変える案が出ています。高給職種を優先し、当選確率を高くするといったシステムです。執筆段階では、このルールに対するパブリックコメントの期間が締め切られたばかりで、最終決定・発表はありません。
H-1B制度に限らず、移民法に関しては、多くの見直し案が検討されており、今後も頻繁に変わり得ますので、ご注意ください。
琴河・五十畑法律事務所 弁護士・琴河利恵さん
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コラムを通して提供している情報は、一般的、および教育的情報であり、読者個人に対する解決策や法的アドバイスではありません。また、移民法は頻繁に改正があります。提供している情報は、掲載時に有効な情報です。読者個人の具体的な状況に関しては、米国移民法の弁護士にご相談ください。

