CDC(疾病予防管理センター)によると、2025年4月17日現在、ワシントン州を含む全米25の州および市で麻疹(はしか:measles)感染が確認された症例が800件報告されています。
2025年には、3件以上の関連症例から成る「アウトブレイク(集団感染)」が10件報告されており、確認された麻疹症例800件のうち94%(751件)がこれらのアウトブレイクに関連しています。
「はしか」感染が確認された州・市
「はしか」感染が確認された地域には、アラスカ州、アーカンソー州、カリフォルニア州、コロラド州、フロリダ州、ジョージア州、ハワイ州、インディアナ州、カンザス州、ケンタッキー州、メリーランド州、ミシガン州、ミネソタ州、ニュージャージー州、ニューメキシコ州、ニューヨーク市、ニューヨーク州、オハイオ州、オクラホマ州、ペンシルベニア州、ロードアイランド州、テネシー州、テキサス州、バーモント州、そしてワシントン州が含まれます。
参考までに、2024年にはアウトブレイクが16件報告されており、確認された症例285件のうち69%(198件)がアウトブレイクに関連していました。
「確定症例」とは、検査によって麻疹ウイルス感染が確認されたケースを指します。今後の調査や報告によって変動する可能性があります。
ワシントン州で確認された症例数:5
2025年にワシントン州で報告された麻疹(はしか)の第1例から第5例までの概要は以下の通りです。(シアトル・キング郡公衆衛生局発表)
例 | 患者 | 感染経路 | 曝露場所 | 公衆リスク | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
第1例目 | キング郡在住の乳児 | 海外渡航中に感染した可能性 |
・2月20日:ベルビュー・スクエア Apple Store ・2月21日~22日:シアトル小児病院 救急部 ・2月24日:Bothell Allegro Pediatrics ・2月25日:Redmond Northwest Asthma & Allergy Center |
あり | 2025年最初の症例 |
第2例目 | スノホミッシュ郡在住の成人 | 第1例目患者の曝露場所で感染 | なし | なし | 第1例目との関連あり |
第3例目 | スノホミッシュ郡在住の乳児 | 最近の海外渡航中に感染 |
・3月27日:シアトル・タコマ国際空港 ・3月29日:Providence Monroe Clinic ・3月31日:Providence Mill Creek Walk-In Care ・3月31日:シアトル小児病院 |
あり | 他の症例との関連なし |
第4例目 | カナダ在住の成人 | 海外渡航中に感染 |
・4月6日:Sea-Tac空港(S10ゲート、税関、手荷物受取所) ・4月6日夜~7日朝:Comfort Suites Tukwila Airport ・4月7日:Sea-Tac空港(S1ゲート) |
あり | ワクチン接種状況不明 |
第5例目 | キング郡在住の乳児 | 最近の海外渡航中に感染 |
・4月15日:Sea-Tac空港 S10ゲートなど ・4月17日:Seattle Children’s Hospital ・4月18日:Seattle Children’s Hospital Ocean棟 |
あり | ワクチン未接種 |
はしか感染状況(2025年4月17日時点)
2025年4月17日時点でのアメリカでの麻疹症例は次のとおりです。(CDC 発表)
総症例数
800件
年齢別内訳
- 5歳未満:249件(31%)
- 5〜19歳:304件(38%)
- 20歳以上:231件(29%)
- 年齢不明:16件(2%)
ワクチン接種状況
- 未接種または接種状況不明:96%
- MMRワクチン1回接種済み:1%
- MMRワクチン2回接種済み:2%
アメリカ国内の入院状況(2025年)
- 全体の11%が入院(800件中85件)
年齢別の入院割合
- 5歳未満:19%(249人中47人)
- 5〜19歳:7%(304人中21人)
- 20歳以上:6%(231人中15人)
- 年齢不明:13%(16人中2人)
アメリカ国内の死亡者数(2025年)
- 3人
- 確認された麻疹による死亡:2人
- 現在調査中の死亡:1人
この状況から、麻しんの感染が主にワクチン未接種者の間で広がっていることがわかります。特に、小児(5歳未満)と学齢期の子ども(5〜19歳)で感染が多い点が注目されます。
はしかの予防接種率は地域や国によって異なりますが、アメリカではワクチン接種率が高い地域と低い地域があるため、発生リスクも地域ごとに異なります。接種率が低い一部の地域では、アウトブレイク(集団感染)のリスクが高まっています。
CDCによると、はしかの予防接種は、2回のMMRワクチン接種で約97%の効果があり、接種を受けていない場合、感染リスクが大幅に増加します。予防接種率が高いほど、集団免疫(herd immunity)が強化され、感染の広がりを防ぐことができます。そのため、予防接種を受けることが重要です。
はしかの症状や予防方法
この記事では、バージニア・メイソン・メディカル・センター 感染症科指導医の千原晋吾さんとワシントン大学医学部保健指標評価研究所研究員の千原泉に、はしかの症状や予防方法について解説していただきました。
ウイルスが空気感染で広がる感染症
はしかは、インフルエンザやCOVID-19と比べても感染性が非常に強く、ウイルスの空気感染で簡単に広がり、重症化する可能性がある深刻な感染症です。
はしかに感染した人が部屋からいなくなっても、ウイルスは約2時間にわたり部屋の中に残り、後から部屋に入った人でも感染する可能性があります。
免疫のない人がはしかのウイルスに暴露された場合、ほぼ9割以上の確率で罹患します。一人の麻疹患者が免疫のないグループと接触すると、平均12人から18人に感染させると言われています。
ワクチンが開発される前は、ほぼ全員が子どもの時にはしかに感染していました。しかし、感染すると、幼い子どもは死亡したり合併症を起こして後遺症が残るリスクがあり、ワクチン未接種の妊婦は流産や死産、早産のリスクが高まる病気です。
はしかの一般的な症状
ワシントン州保健局によると、一般的な症状は次のとおりです。
- 発熱(fever)
- 下痢(diarrhea)
- 咳(coughing)
- 鼻水(runny nose)
- 目の充血や目やに(red and watery eyes)
- 疲労感(tiredness)
感染から数日後、発疹(rash)が出始めます。通常は顔から始まり、全身に広がることもあります。はしかは通常、7~10日間続きます。
はしかの合併症
ワクチン未接種の5歳未満の子ども、20歳以上の大人、妊婦、白血病やHIVなどが原因で免疫機能が低下している状態の人、栄養失調の人、慢性疾患を持っている人は重症化し、肺炎や脳炎などの合併症や、失明、難聴、死亡などの深刻な場合もあります。詳細は「️CDC: Measles complications」「ワシントン州保健局:Measles」をご覧ください。
米国ではワクチン未接種の人がはしかにかかると、約5人に1人が入院することがわかっています。
- 子どものはしかによる死因で最も多いのが肺炎で、20人に1人は肺炎にかかるとされています。
- 子ども1,000人に1人の割合で脳炎(脳の腫れ)になり、けいれんを起こしたり、耳が聞こえなくなったり、知的障害が残ることがあります。
- 子ども1,000人に1~3人近くの割合で、呼吸器や神経系の合併症で死亡することがわかっています。
- MMRワクチンを接種していない妊婦が感染すると、早産や低体重児を出産する原因になることがあります。
ワクチンの有効性は95%以上
はしかは、ワクチンで予防可能な感染症であり、感染を予防するには、予防接種が唯一の確実な方法とされています。
はしかのワクチンは95%以上有効です。
でも、これは生ワクチンなので、免疫の低下している人はこのワクチンを受けることができません。
また、子どもの予防接種は生まれてすぐ始まりますが、はしか(Measles)、おたふくかぜ(Mumps)、風疹(Rubella)の3つのウイルス感染を予防するためのMMRワクチンの接種は、生後12〜15ヶ月に1回目の接種をし、4歳から6歳の間に2回目を接種することが推奨されています。
CDC は、米国から外国に旅行する場合、生後6ヶ月からはしかの予防接種を受けることを推奨すると発表しました。また、住んでいる地域全体ではしかが流行している場合、保健所は生後6カ月から11カ月の乳幼児への早期接種を推奨することがあります。かかりつけの小児科医に相談しましょう。

ワシントン州では、子供がデイケアや学校に入学する前に MMR ワクチンの予防接種を受けることを個人的な理由や信条を理由に避けることは認められていません。
アメリカのキンダーガーテンや学校に子供が通園・通学する場合、予防接種の記録を学校に提出する必要があります。基本的に、デイケアやプリスクールでも予防接種が必要とされます。また、大学でもはしかの予防接種証明の提出を義務付けているところもあります。

監修:
千原晋吾 バージニア・メイソン・メディカル・センター 感染症科指導医
千原泉 ワシントン大学医学部保健指標評価研究所研究員