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アメリカの健康診断(1) 子どもの健康診断(Well Child Visit)

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アメリカでは、子どもの健康診断 (well child visit) は、家庭医学(family medicine)または小児科(pediatric medicine)の専門医によって行われます。健康診断のスケジュールは年齢によって異なり、たいていの場合、次のような間隔で行われます。

生後1週間以内、1カ月、2カ月、4カ月、6カ月、9カ月、12カ月、15カ月、18カ月、2歳、2歳半、3歳以降は年に一度、多くの場合は18歳くらいまで(正式には21歳まで可能)です。

もくじ

子どもの健康診断の目的

子どもの健康診断には、さまざまな目的があります。

1. 疾患を予防する
これには予防接種などが含まれます。米国の予防接種には、CDC(Centers for Disease Control and Prevention)が推奨するスケジュールがあります。学区によって必須と定められている予防接種もあり、接種記録を提出しなくてはなりません。予防接種の数が多いので、スケジュールから外れると追いつくのに少し大変なことがあります。日本や他の州や他の施設で接種した場合は、その記録を受診時に持参することをお勧めします。

2. 事故を予防する
日常生活をより安全に過ごせるよう、さまざまなアドバイスを受ける機会でもあります。例えば乳幼児突然症候群(SIDS: Sudden Infant Death Syndrome)のリスクを減らす方法、交通事故での怪我を防ぐためのカーシートの使い方などについて知識をつけることも一つの目的です。

3. 成長と発達の確認をする
身長と体重を毎回測定し、それぞれの子どもの成長曲線に沿って順調に成長しているかどうか確認する大事な機会です。また、年齢にふさわしいマイルストーンや社会行動と学習が到達されているかを確認します。それぞれの年齢において、どのように対応できるかアドバイスを受けることもあるでしょう。

4. その他の健康相談を受ける
例えば、睡眠、食事や運動などの生活習慣、その他人間関係などの社会生活の様子を伺うこともあります。受診前に話したいことを大まかに考えておくといいでしょう。もし時間のかかる相談だったり、明らかに健康診断外の内容であれば、改めて予約をすることを勧められることがあります。

5. 子ども自身が健康と体への意識を高める
毎年継続して同じ小児科医や家庭医にかかることで、慣れた医療環境で安心して質問したりすることを勧めています。多くの場合、ティーンエージャーになるにつれて親に席を外してもらい、医師と一対一で医療面接を受けることもあります。

子どもの年齢別の健診のポイント

0~12カ月 新生児、乳児(Newborn)
米国では出産時の入院期間が短いため、退院後の新生児健診は大切です。その時に体重を測り、授乳や人工ミルク(formula)などの食事がうまくいっているかチェックします。誕生直後の受診に際して黄疸の有無の確認をし、採血をする場合もあります。ワシントン州では先天性疾患の二次スクリーニング(second newborn screening)も行います。その後、2カ月、4カ月、6カ月、12カ月の健診の際も成長と発達に焦点を当てつつ、予防接種を受けることが大きな目的です。産後うつ病(post-partum depression)や他の保護者のストレスや気分のスクリーニングをするのも大切です。

1~5歳 幼児期(Early Childhood)
プリスクールや保育園などに通うことで、社会生活も始まる時期です。必要があれば鉛中毒や貧血のスクリーニングが行われることがあります。18カ月と2歳でM-CHATという質問表を用いた自閉症(autism spectrum disorder)のスクリーニングが行われます。トイレトレーニング(toilet training)やしつけについて話すこともあるでしょう。歯が生えたら歯科検診を受けるように勧められます。3歳ごろから血圧を測定します。4、5歳で視力と聴力検査も健康診断の際に行われます。

5~12歳 学童期(Grade schooler and Pre-teen)
学校生活が充実し、スポーツなどの課外活動も増えてくる時期です。子どもの自立を応援し、健康に関する教育(食事、睡眠、運動など)を本人を交えて話し合うのが大事な時期です。友達や学校などについて話をすることがあります。また、思春期にさしかかるにつれて、身体の変化、性教育、タバコ・飲酒・薬物(substance use)について少しずつ教えていく時期でもあります。診療時間の一部は子どもと一対一で話すことがあります。

12~18歳(21歳)青年期(Teenager)
ますます独立する時期です。性的指向(sexual orientation)と性自認(gender identity)などを含む性教育(性感染症や避妊も)、タバコ・飲酒・薬物(substance use)、運転など、幅広いトピックについて話す機会です。成人期に備えて、自分の意思や疑問をしっかり持ち、医療も一人で受けられるよう、さらに慣らしていく時期です。性感染症のスクリーニングや避妊に関する相談も可能です。

特に健康に問題がなくても、定期的な健康診断は子ども自身の健康意識を高め、家族や周りの人への理解にもつながります。大人になってから、「自覚症状がないから健康診断に行かない」「健康診断に行ったら問題が増えそうだから行かない」「病気になったら、その時はその時だ」と考えて、気づかないで健康を損ねることがないよう、幼い頃から健康診断の大切さを親が伝え、継続させることをお勧めします。

執筆:西連寺智子先生(さいれんじ・ともこ)
University of Washington Department of Family Medicine, Associate Professor
Family doctor at UW Primary Care at Northgate Clinic and Northwest Hospital
米国マサチューセッツ州で幼少時代を過ごし、12歳で日本に帰国。国際基督大学卒業後、岡山大学に学士編入。卒業後、福岡県にある飯塚病院での2年間にわたる初期研修を経て、ピッツバーグ大学メディカルセンターで家庭医のレジデンシーとチーフレジデントを行う。同大学で医学教育修士課程とファカルティデベロップメントフェローシップを終え、現在はワシントン大学医学部(University of Washingon School of Medicine)で家庭医療の准教授として医学生の指導を行いながら、UW Medicine のノースゲート・クリニックと Northwest Hospital で家庭医として勤務している。

当コラムを通して提供している情報は、一般的、及び教育的情報であり、読者個人に対する解決策や医療アドバイスではありません。読者個人の具体的な状況に関するご質問は、直接ご相談ください。

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