アメリカの交通ルールは慣れてしまえば難しくありませんが、初めてアメリカで運転する時は混乱することがあります。そこで、この記事ではアメリカで迷いやすい・間違えやすい交通ルールをいくつかまとめてみました。これからアメリカで運転する方や、交通ルールを知りたい方は必読です。
ここでご紹介しているルールは、ワシントン州の交通法規に基づいています。米国全土でほぼ共通のものもあれば、州・地域によって異なる場合もあります。ワシントン州の詳しい交通ルールは、Washington Driver Guide などをご覧ください。
基本中の基本 ー アメリカでは右側通行
アメリカは右側通行です。「わかってるよ!」という声が聞こえてきそうですが、左側通行の日本などから来て運転していて「交差点を曲がったときに間違って左側に行ってしまいそうになった!」という話を耳にします。くれぐれも気をつけましょう!
自転車やオートバイ(モーターサイクル)と道路を共有
「常に車が優先」ではなく、バスやモーターサイクル(オートバイ)、自転車と道路を共有する必要があります。
- 道路の右側の白線の歩道側は、バス専用車線(bus only)または自転車専用車線(bike lane)でない場合は、「路肩」(shoulder)です。
- 路肩は自動車もモーターサイクルも自転車も走ってはいけません。
- 自転車やモーターサイクルが安全に走行するのに必要なスペースは、その車輪の幅ではなく、それに乗っている人の体の幅よりも大きいスペースです。
- ワシントン州では2020年から車でサイクリストを追い越す時は最低3フィート(91cm)の間隔を空けることが義務付けられています。違反が認められた場合は、ドライバーに罰金が科されます。
- 自転車やモーターサイクルは、車には影響のない、またはドライバーは気づかない、段差や危険物を避けるために、シフトダウンやウィービングをしなければならないことがあります。
- 自転車やオートバイ(モーターサイクル)は、車と比べると小さく、視界に入りづらいなど、安全面で独特の問題があります。交差点で左折・右折する前など、特によく確認しましょう。
National Safety Council によると、2022年に自転車に乗っていて死亡した人は1360人。そのうち928人が自動車との衝突事故で、432人がその他の事故で亡くなりました。死亡者の87%が男性で、女性の死亡者数の8倍以上に上ります。
赤信号での右折禁止
右側通行のアメリカでは、たいていの交差点は赤信号でも完全に停車して安全を確認すれば右折することができますが、赤信号で右折してはいけない交差点もあります。それは、上の写真のように、信号の横に『NO TURN ON RED』(赤信号では右折禁止)という標識がある場合です。
自分の前のドライバーが赤信号で右折しないからとすぐにイライラしたり、クラクションを鳴らしたり(honking)する前に、前方の信号の横に『NO TURN ON RED』の標識がないかどうか確認しましょう。
シアトル市内の中心部では車が歩行者やサイクリストをはねる事故が多いことから、赤信号での右折が禁止されている交差点が増えています。これに気づかないで赤信号で右折したところを警察が目撃した場合、違反チケットを切られて罰金を課されることがあります。
右折や左折をする時は、曲がる角に一番近い車線、そして右折や左折しても良い車線を使います。
信号のない横断歩道や交差点では、歩行者が優先
アメリカでは、信号のない横断歩道や交差点では、歩行者を優先します。信号のある交差点で右折や左折をする時も、歩行者や自転車がいないか十分に確認しましょう。
「赤信号で右折禁止」となっている交差点もあります。その場合は、『NO TURN ON RED』という表示があります。
道路のセンターライン、白色や黄色の実線・破線・二重線の意味とは
道路の端にある白色の実線(sold white lines):白色の実線は、双方向道路の両端、一方通行道路の右端、および自転車レーンを他の交通と分けるために使用されます。下の写真の場合、白色の実線の右側は「路肩」(shoulder)です。
車線の間にある白色の実線:車線の間に白色の実線がある場合は、特別な状況がない限り、他の車線に入らないようにします。
白色の破線(dashed white lines):車線の間の白色の破線は、安全であれば車線変更ができるという意味です。
黄色の実線(solid yellow lines):双方向道路の中央にある黄色の実線は、センターラインです。二重の黄色い実線であれば追い越し禁止を意味します。自分の側が破線であれば、安全を確認した上で、対向車線に出て追い越すことが可能です。追い越してはいけない場合、『NO PASSING ZONE』という標識がある場合があります。
左折専用車線(turning lane)とは
広い道路では、左折専用車線(turning lane)という車線が道の真ん中にあります。黄色の実線と破線の囲まれた中央分離帯のような車線に入り、対向車線の車がなければ左折できます。ただし、この車線は対向車線から左折する車も入ってくるので、うまく対応する必要があります。
ALL WAY STOP は先着順
日本から来て「わかりづらい」と言われることが多いのが、全車一時停止を意味する「ALL WAY STOP」。交差点で一時停止し、先に交差点に到着した車から順に進みます。
でも、複数の車が同時に交差点に到着した場合、どの車が優先されるかは、状況によって異なってきます。一番右にいる車が優先される(right of way)のが基本ですが、歩行者がいる、直進か、曲がるのかなどによって異なります。「rules of four-way stops」などと検索してみると、英語での解説がオンラインにたくさん見つかるのは、それほど混乱する人が多いという証でもあります。
「STOP」という標識は、「一時停止」という意味。一時停止し、先着車がすべて動いたら、安全を確認した上で速やかに進みましょう。先着車がいなくなったのに他の車に譲っていると、後続車にクラクションを鳴らされたり、譲られた側のドライバーを困惑させたりすることに。
赤信号が点滅している交差点は、ALL WAY STOP と同じ扱いになります。停電などで信号が点いていない時も同じです。
また、「STOP All Way」と書いてある場合が多いですが、交差点では「STOP 4-WAY」、T字路では「STOP 3-WAY」と書かれていることもあります。また、「STOP 2-WAY」と書かれていたら、完全停止が必要なのは標識が立っている2方向のみ。残る2方向は停まらずに通過します。
ラウンドアバウト(roundabout)では減速
環状交差点のこと。中央に設けられた円形のスペースを取り巻く環状道路に、3本以上の道路を接続したものをラウンドアバウトと言います。車両はこの環状道路を反時計回りに通行します。
ここ数年、日本でもラウンドアバウト=環状交差点が増えつつあり、2016年秋時点で約50カ所あるそうですが、まだ実物を見たことがないという人の方が多いかも。アメリカではごく一般的で、市街地でも郊外でもよく登場します。
日本とアメリカの違いは、1)日本では時計回り(右回り)なのに対し、アメリカでは反時計回り、2)日本では環状交差点を出る時だけ左ウィンカー(英語では turn indicators、または turn signal。でも日常会話では signal と言うことが多いです)を出します。ワシントン州運輸省は、ラウンドアバウト進入時は方向指示器を出す必要はなく、出る直前に右の方向指示器を出すように説明しています。
日米どちらの場合も、すでに環状道路を走っている車が優先。急にラウンドアバウトに進入したりすることがないよう十分に気をつけましょう。
ヘッドライトは、自分と周囲の安全のために使う
ワシントン州では、日没後30分、または日の出前30分にはヘッドライトを点けることが法律で義務付けられています。
なぜなら、自分が前方や周囲をよく見えるように、そして対向車線や周囲のドライバー、そして歩行者に自分の車がよく見えるように使うものだからです。
また、ワシントン州西部は秋から冬にかけて日照時間が短く(冬至では日照時間は午前8時から午後4時までの約8時間となります)、雲が垂れ込めて雨や霧などで視界が悪い状況で運転することも増えます。なので、日中でも安全のためにヘッドライトをつけたまま運転しても、なんら問題ありません。
交差点で信号待ちする時、「対向車線のドライバーがまぶしいだろう」とヘッドライトを消すことはしません。逆に怪しまれるか、ヘッドライトをつけ忘れていると誤解される可能性があります。
対向車線のドライバーに何らかの合図を送る(前方に事故発生、警察が待機しているなど)ために、走行中にヘッドライトを素早く点滅させること(日本でいう「パッシング」)こともあります。そういうことをされた場合は、自分がヘッドライトをつけ忘れていないか、前方に事故が発生していないかなど確認するのがおすすめです。
今は車のナビ、アプリの Google Map や Wayz などが、”Accident ahead.”(前方に事故発生)、”Red light camera ahead” など教えてくれます。
なお、ハザードランプ(hazard lights)やクラクション(car horn)は、周囲のドライバーに緊急事態や危険を伝え、注意を引くために使うものなので、それ以外の目的で使うのは誤解されるかもしれません。お礼を伝えたいときは、片手をあげたりするのもおすすめです。
シートベルト、カー・シート(チャイルド・シート)は必須
命を守るため、シートベルトの着用は、法律で義務づけられています。シートベルトをしていなかった本人が罰金を支払うことになります。また、子どもには年齢や体の大きさに応じたチャイルドシートやブースターシート(日本でいう「ジュニアブースター」)が必要です。
YIELD は相手が優先です。
YIELD(「譲れ」という意味)の標識があるところでは、自分が今から合流する車線を走っている車を優先します。標識の手前で徐行、または停止し、安全を確かめてから合流します。
ポイントは、日本の一時停止とは違って、車が来ていなければ止まらずに進んでよいという点。見通しがいい場所などで、合流する道路に車がいないのが明らかなのにいちいち停止すると、後続車に追突されるかもしれません。
合流される車線を走っているドライバーは、そのまま通行します。合流してくる車を優先してあげようと勝手に決めて停止したり減速したりすると、後続車に追突されるかもしれません。
KEEP CLEAR の上で停車しない。
道路に KEEP CLEAR と書かれている場合、「この部分で停車してはいけない」という意味です。
向こう側に渡りたくてこの部分に入ってしまい、信号が赤になって渡りきれなくなった・・・なんてことになると大ブーイングで、罰金が課されることがあります。
踏み切りの手前で一時停止しない。
バスやトラックなど大型車以外は、踏み切りの手前で一時停止する必要はありません。踏み切りの信号に従って、必ず左右の安全を確かめてから横断しましょう。
日本と同じ感覚で一時停止をすると、逆に後ろから追突されるかもしれません。
スクールバスに遭遇したら安全第一
登下校の時間帯に運転していると、スクールバスに遭遇することがあります。子どもたちがスクールバスを安全に乗り降りするために停車しなくてはならない場合に停車しなかったら、事故にならなかったとしても、ドライバーに罰金が科される可能性があります。
緊急車両は最優先!妨害しない!
消防車や救急車、警察車両など緊急車両のサイレンが聞こえたら、また、サイレンを鳴らした消防車や救急車が来たら、すみやかに道路わきに寄って停車します。
緊急車両が対向車線から来た場合、基本的には減速・停車とされていますが、道路わきによって停車するのが最適な場合はそのようにしましょう。中央分離帯があっても同じです。(Move Over Law)。
追い越し車線/HOV/CARPOOL LANEの使い方
追い越し車線:日本でも高速道路で追い越し車線があるように、アメリカでは一番左側(HOVレーンを除く)は追い越し車線です。この車線をゆっくり走っていると、後ろからクラクションを鳴らされたり、短気なドライバーにあおられたりすることがあります。
エクスプレス・レーン:シアトル地域を南北に走る I-5とレイク・ワシントンの東西を結ぶ I-90では、エクスプレス・レーンと呼ばれる優先車線を時間帯によって南行きと北行き、西行きと東行きで交替して使用することになっています。エクスプレス・レーンについてはこちら。
HOV/Carpool Lane:渋滞緩和の目的で2人以上、または3人以上乗車してる車の優先車線を、HOV(High Occupancy Vehicle Lane)または Carpool Lane(相乗りしている車専用車線)と言います。利用するのに必要な人数が書かれた標識をチェックしましょう。I-405 のベルビュー市とリンウッド市の区間は、1~2人しか乗っていない場合、月~金の午前5時から午後7時までは有料になります(3人以上は無料。この時間帯以外は、人数に関係なく無料)。詳しくはこちら。
左側に設置されている標識には、次のように書かれています。
HOV
VIOLATORS
MAXIMUM
$536 FINE
HOV の規則に違反すると、最大で536ドルの罰金が科される可能性があります。