11月の第4木曜日は、アメリカの祝日「感謝祭(Thanksgiving)」です。家族や友人が集まって七面鳥の丸焼きを囲み、午後はテレビでアメフトの試合を見る。そんな過ごし方が一般的に知られています。アメリカの感謝祭は国の成り立ちと深く結びついており、起源とされる1621年の収穫の祝宴は、先住民にとっては土地と命を奪われていく歴史の始まりでもあり、この日を「嘆きの日」として過ごす人たちもいます。この記事では、感謝祭の意味と歴史、定番の過ごし方、先住民から見た感謝祭をまとめました。
2026年の感謝祭は11月26日(木)
感謝祭(Thanksgiving Day)は、自然の恵みや日々の暮らしに感謝する日で、家族や友人が集まって食卓を囲むのが一般的です。あいさつは「Happy Thanksgiving」。祝日名は「Thanksgiving Day」と一語で書きます。
感謝祭の過ごし方

感謝祭の日は連邦祝日で、多くの会社や学校が休みになります。翌日の金曜日も休みにして、4連休にするところも少なくありません。
ニューヨークでは、1924年に始まった「Macy’s Thanksgiving Day Parade」が開かれます。巨大なバルーンとマーチングバンドが街を練り歩く、感謝祭の朝の名物です。
午後はNFLの感謝祭ゲームを見て過ごすのが、アメフトファンの恒例。感謝祭の午後のお楽しみになっています。
感謝祭の翌日の金曜日は「ブラックフライデー(Black Friday)」と呼ばれ、ホリデー商戦が始まる日です。各地の店で大きなセールが行われます。
感謝祭の食卓の主役は、七面鳥(turkey)の丸焼きです。詰め物(スタッフィング)、マッシュポテト、クランベリーソース、パンプキンパイなど、秋の収穫を祝う料理が並びます。詳しくは下の記事で紹介しています。

感謝祭の起源と歴史
感謝祭の物語は、1621年にマサチューセッツ州プリマスで開かれた収穫の祝宴に由来するとされます。イギリスから渡ったピルグリム(入植者)と先住民のワンパノアグ族(Wampanoag)が、ともに食卓を囲んだという言い伝えです。今も多くの学校でこの物語が教えられ、そのまま信じている人も少なくありません。ただ近年は、この物語は一面的で、当時の先住民が受けた苦難を省いているという指摘があります。
国の祝日としての感謝祭は、南北戦争中の1863年10月3日に始まります。この日、リンカーン大統領が「11月の最終木曜日を感謝の日とする」宣言を出しました。1870年には連邦議会が法律で、感謝祭を首都ワシントンD.C.の祝日と定めています。その後、1941年12月26日にルーズベルト大統領が議会の決議に署名しました。これにより、翌1942年から「11月の第4木曜日」が連邦の感謝祭の祝日になりました。
先住民から見た感謝祭
感謝祭は「感謝の日」として知られていますが、先住民にとっては悲しみを思い起こす日でもあります。
National Geographicによると、ニューイングランド沿岸に暮らしていた先住民の多くは、1610年代後半に広がった伝染病で人口の最大90%を失いました。病気の正体はわかっておらず、これまでに黄熱病、天然痘、ペストなどが候補に挙げられてきました。2010年に米疾病対策センター(CDC)の学術誌に発表された論文は、新しい仮説として、ヨーロッパの船から持ち込まれたネズミが広めたレプトスピラ症(leptospirosis)だった可能性を示しています。
弱体化したワンパノアグ族は入植者と同盟を結びましたが、1675年のキング・フィリップ戦争で壊滅的な被害を受けました。その後も入植者による土地の収奪と強制移住が続き、先住民の文化や暮らしは深刻な打撃を受けました。
1970年、メイフラワー号の到着350周年の記念式典で、ワンパノアグ族のワムスッタ・フランク・ジェームズ氏はスピーチを頼まれました。しかし、迫害の歴史を訴える原稿を事前に提出したところ、内容が扇動的すぎるとして、そのままでは読ませてもらえませんでした。ジェームズ氏は式典での登壇を断り、感謝祭の日に、プリマス・ロックを見下ろすコールズ・ヒルで本来のスピーチを読み上げました(スピーチ全文)。これが「National Day of Mourning(嘆きの日)」の始まりです。今も毎年感謝祭の日にコールズ・ヒルで集会が開かれ、先住民の尊厳と歴史を伝える日として続いています。
マサチューセッツ州プリマス市が設置した記念碑「National Day of Mourning」には、次のような内容が書かれています。
「1970年以来、ネイティブ・アメリカンは、感謝祭の祝日にNational Day of Mourningを記念して、正午にプリマスのコールズ・ヒルに集まってきた。多くの先住民は、ピルグリムや他のヨーロッパからの入植者の到着を祝わない。彼らにとって感謝祭は、何百万人もが虐殺され、土地が盗まれ、文化が容赦なく攻撃されていることを思い起こさせる日である。National Day of Mourningの参加者は、先住民の祖先と、今日を生き延びるための先住民の奮闘を称える。この日は、記憶と精神的なつながりの日であると同時に、先住民が今も経験している人種差別と抑圧に対する抗議の日でもある」
こうした歴史は、広く知られていないことが少なくありません。2012年の感謝祭に全米で人気のラジオ番組『This American Life』が放送した「Little War on the Prairie」は、現在のミネソタ州で暮らしていたダコタ族が入植者に迫害された歴史をたどる内容で、大きな注目を集めました。
ホワイトハウスの伝統行事「七面鳥の恩赦」

2021年にバイデン大統領に恩赦を与えられた七面鳥は、インディアナ州ラファイエットにあるパデュー大学農学部に送られました。
感謝祭の前に、大統領が七面鳥に「恩赦(pardon)」を与えて食卓に上らないようにする、ホワイトハウスの恒例行事。恩赦が毎年の行事として定着したのは、1989年のジョージ・H・W・ブッシュ大統領のときからです。
近年は毎年2羽の七面鳥が恩赦を受け、大学の農場などで余生を過ごしています。2025年11月25日に恩赦を受けたGobbleとWaddleは、生まれ育ったノースカロライナ州に戻りました。今はノースカロライナ州立大学で、家禽の専門家や学生の世話を受けて暮らしています。
『Thanksgiving』と『Thanks Giving』の違い
アメリカの祝日としての「感謝祭」は、正式には Thanksgiving と一単語で書きます。「Thanksgiving Day」は「感謝祭の日」という固有名詞であり、年に一度の祝日を指します。
日常の英語では、“Thanks Giving” と二語に分ける表記は誤りです。たとえば「Happy Thanks Giving!」と書くと不自然さがわかるでしょう。祝日を指す場合は必ず “Happy Thanksgiving!” と書きます。
でも、「Thanks Giving」を下記のような形で使うことがあります。
This season is all about thanks giving and kindness.
(この季節は“感謝を与えること”と優しさの季節です)
このように「Thanks」を「Giving」する、つまり「感謝を行動で表す」という動詞的・概念的な意味を強調したい場合に、意図的に分けて使うケースがあります。広告コピーやスピーチ、グリーティングカードなどで見られる用法です。
- Indian Country Today: A Wampanoag retelling of Thanksgiving
- Washington Post: This tribe helped the Pilgrims survive for their first Thanksgiving. They still regret it 400 years later.
- Time: 400 Years After the ‘First Thanksgiving,’ the Tribe That Fed the Pilgrims Continues to Fight for Its Land Amid Another Epidemic


