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上を向いて歩こうよ – 歌と幸せについて

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Studio Mene and Counseling Services
高田 Dill 峰子さん

Mineko Takada-Dill, MA, LMHC, ATR
カウンセリング:
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アート・セラピー・スタジオ:
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幸せでいたくない人はいないと思いますが、朝起きでまず自分に、「また一日が始まる」「仕事に行くのがイヤだ」「今日もいやなことが起きるんだろうな」など、ネガティブなメッセージを送っていませんか?ストレスがあって人生がスムーズに行ってない時でも、自分にハッピーなメッセージを送ることができたら、自己暗示というわけではありませんが、ポジティブで前向きな自分を発見できたりします。

長期的なヒットとなっている、ファレル・ウィリアムスの 『Happy』 のミュージックビデオを見ていると、なんとなく手拍子を打って、体を動かしたくなり、気分が良くなってきます。世界中の人々が同じ音楽に乗って踊るビデオが公開されていますが、中でも福島発信のビデオは、とてもハッピーな気持ちにさせてくれます。以下、”Because I’m happy” という歌詞の間に繰り返し歌われる部分の抜粋です。

Clap along if you feel like a room without a roof
(屋根のない部屋のような気分なら、手をたたこう)
Clap along if you feel like happiness is the truth!
(幸せが真実なら、手をたたこう)
Clap along if you know what happiness is to you
(幸せがどんなことか知っているなら、手をたたこう)
Clap along if you feel like that’s what you wanna do
(幸せでいるつもりなら、手をたたこう)

『Happy』 は昔からの童謡 『If you’re happy and you know it』(幸せなら手をたたこう)に比較されたりしていますが、今日は日本語版の 『幸せなら手をたたこう』 を歌った坂本九さんの名作 『上を向いて歩こう』 に焦点を当ててみたいと思います。

この曲は、第二次世界大戦の敗戦から15年たった日本で、作詞家の永六輔が、米軍の基地存続を反対する学生運動にもかかわらず、日本政府は安全保障条約に署名し、米軍が継続して日本にいることになった失望感を表現したとも言われています。数年後には東京オリンピックを控え、戦後を脱出しようとしていた日本にとって、とても辛い時代です。

この曲は 『Sukiyaki』 というタイトルで、1963年に全米ビルボード・ナンバーワンになり、今でも日本人で唯一の全米ナンバーワンの記録を持つ歌謡曲です。最初その話を聞いた時は、坂本九さんがすき焼きを食べる歌を英語で歌ってヒットしたのかと軽く考えていましたが、実は日本で 『上を向いて歩こう』 を聞いて気に入ったイギリス人ミュージシャンのケニー・ボールが歌なしのバンドで演奏するのに、『Ue o Muite Aruko』 ではイギリス人にはわかりにくいので、食べたことがなくても皆が名前を知っている「Sukiyaki」というタイトルで売り出したのがその由来です。

さらに、父親の仕事の関係で日本のアメリカン・スクールに通っていた女の子が、日本で聞いた坂本九さんのレコードをアメリカに持ち帰り、学生寮で皆に聞かしていたところ、その寮友達の一人の父親がラジオ局で仕事をした関係でアメリカのラジオで放送されたとのことです。すごいのは、歌はオリジナルの日本語のままで、アメリカ人は歌の意味がわからないまま、この曲に惹かれたということです。当時のニューズウィーク誌は、「まるで 『ムーンリバー』(オードリー・ヘップバーンの 『ティファニーで朝食を』 の主題曲)を、ビーフ・シチューというタイトルで売り出すようなものだ」と批判したそうです。当時は、その 『ティファニーで朝食を』 は、白人のコメディアン、ミッキー・ルーニーがメーキャップで目を細くし、出っ歯の入れ歯を入れた、今ならありえないような偏見のある差別的なキャラクターの日本人が出てくるような時代でもありました。

その後、『上を向いて歩こう』 は世界各地でさまざまな言語で歌われるようになりましたが、アメリカでは黒人のデュオの Taste of Honey が英語のラブソングの歌詞をつけ1980年代にヒットを飛ばしています。が、お琴の音や西洋人がアジアを象徴する時に使うリズムや楽器が入っていて、何か違和感を覚えます。英語で歌われたものでしっくりするものは中学までロサンゼルス育ちの西田ひかるさんのものではないかと思います。日本の歌と英語の組み合わせは、さすがに日米の両文化で過ごしたことのある表現力だと思います。

それでは、本題の幸せに戻りますと、『上を向いて歩こう』 の歌詞は、明らかに悲しみを歌っていますが、その中で、「涙がこぼれないように上を向いて歩いていると、幸せは雲の上に、空の上にある」という表現があります。歌詞自身は悲しいものでも、曲の方は明るい部分が多く、笑顔がかわいらしく、「九ちゃん」という愛称で親しまれた坂本九さんの映像は本当に希望を感じさせられるものです。悲しくても、悲しさを把握し、上を向いて希望を見つめていくのも、幸せになるにはとても大切なことだと思います。悲しさがあってこその幸せ。『上を向いて歩こう』 は東日本大震災の復興イメージソングとしても使われているそうです。

掲載:2014年7月

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