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第146回 H-1Bビザ保持者に対するトランプ大統領の大統領宣言|企業業務への影響と雇用リスク

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2025年9月19日、トランプ大統領は大統領宣言を発表し、9月21日以降にH-1Bビザを申請する雇用者に対し、10万ドルの支払い義務を課しました。これまでの申請料は780ドルであったため、費用が100倍以上に跳ね上がることになり、多くの企業にとって深刻な経済的負担となります。特に、外国人労働者をH-1Bビザで雇用している企業は大きな影響を受けます。

目次

大統領宣言の正当性と法的問題

政権側は「ビザ保持者の入国を禁止するものではないため正当」と主張していますが、宣言には多くの疑問点が残されています。H-1Bビザ保持者からは「外国人従業員に対する組織的差別だ」との声も上がっています。

さらに、雇用者が10万ドルを支払わなかった場合に、トランプ大統領が移民法第212(f)の権限でビザ停止を実行できるのかという法的論点が浮上しており、大統領宣言の停止をめぐって訴訟が予想されています。

雇用法と差別禁止の観点

企業にとって重要なことは、従業員との雇用問題を回避する対策です。

1964年公民権法(Title VII of the Civil Rights Acts of 1964)のもと、ワシントン州法(RCW49.60)では、国籍や民族による差別的な待遇・解雇を禁止しています。この1964年公民権法(Title VII of the Civil Rights Acts of 1964)に基づいて、各州にそれぞれの州法でほぼ同様の規定があります。

つまり、雇用者がH-1Bビザが必要であることを理由に採用を却下したり解雇したりすれば、ビザ保持者から差別で訴えられる可能性が高くなります。

市民権保持者からの逆差別訴訟

一方で、市民権を持つ従業員が雇用者を訴えるケースもあります。実際、Tesla(テスラ)では、市民権を持つ従業員が「H-1Bビザ保持者を優遇し、自分たちが解雇された」と集団訴訟を起こしました。

企業が取るべき対策

こうしたリスクを避けるためには、企業は次のような対策を取ることが求められます。

  • 採用段階で市民権保持の有無やH-1Bビザ有無の質問を避ける。
  • 採用後も雇用者はすべての従業員の業績を書面で記録する。
  • 解雇の際は「ビザ保持者だから」「低賃金だから」といった理由ではなく、正当な評価に基づいていることを証明する。

雇用主は、H-1Bビザ保持者だけでなく市民権保持者を解雇する場合でも、差別ではなく公正な理由に基づく決定であることを示す必要があります。

シャッツ法律事務所
弁護士 井上 奈緒子さん
Shatz Law Group, PLLC
www.shatzlaw.com

当コラムを通して提供している情報は、一般的、及び教育的情報であり、読者個人に対する解決策や法的アドバイスではありません。 読者個人の具体的な状況に関するご質問は、事前に弁護士と正式に委託契約を結んでいただいた上でご相談ください。

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