シアトル在住時に立ち上げたイラストと文章でコーヒーの知識やトリビアを解説する英語ブログ 『I LOVE COFFEE』 が大ヒットし、2017年から日本を拠点とするライターとして活躍している岩田リョウコさん。今回は、その岩田さんに中部国際セントレア空港でオープンを間近に控えた『フライト・オブ・ドリームズ』を取材していただきました!
約10年住んでいたシアトルを離れて1年が過ぎ、やっぱりなんだかシアトルを恋しく感じていた今日この頃。そんな時に飛び込んで来た中部国際セントレア空港にシアトルをコンセプトとした「フライト・オブ・ドリームズ」という複合商業施設がオープンするというニュース。早く見に行きたいな、なんて思っていたら10月12日のグランドオープン前に取材に行くことができました。
実はシアトルを恋しく思うばかり、今回このフライト・オブ・ドリームズに行くにあたり、とにかくいきなりシアトルに来た感を味わいたくて、内部写真やどんな店舗が入っているかなど前情報を一切シャットダウンして行きました(でもそれが功を奏しまくる結果に)。これを読んでいる皆さんもわたしと一緒に初フライト・オブ・ドリームズ体験を味わっていただければと思います。
ターミナルビルから歩く歩道を渡って進んで行くとフライト・オブ・ドリームズの大きな建物が見えて来ます。シアトルのみなさんにはおなじみのエバレットにあるボーイング工場を彷彿させる外装です。もう一度言いますが、わたしはフライト・オブ・ドリームズが一体何なのかまったく知らずに行ったので「BOEING」の文字が見えただけで、すでにシアトルを感じてワクワク。この時点では「ボーイングが絡んでいるのだね?」くらいの気持ちです。この先、もっともっとシアトルが待っているとも知らずに・・・。
ドアを開けると「FLIGHT OF DREAMS」のサインが出迎えてくれます。もちろん奥には緑のあのロゴ。
とりあえずスターバックスに引き寄せられるように歩いて行くと、そこには「SEATTLE TERRACE」の文字が!
ここは飲食店が入っている商業エリアだそう。なんだかシアトルの名前を使ってくれてありがとうの気持ちになってしまいます。どんなお店が入っているのか、ずんずんと進んで探検してみましょう。まずはシアトルのパイク・プレース・マーケットの近くにある「The Pike Brewing」が見えてきました。
シアトルのクラフトビールも飲めるそうです。ハンバーガーやステーキなどアメリカらしいメニューが並んでいました。再現度高い! そしてここを通り過ぎて目に飛び込んで来たのは・・・。
「え・・・、ウソでしょ」と声を上げてしまいました。
まさかの建物の中に飛行機。そしてよく見ると、我らが787ではありませんか! 外装にボーイング787の絵があったのはコレか! と今さら膝を打つ・・・。
しかもこの787、2009年の冬に初飛行に成功したあの787初号機なのです。(その日は生中継で初飛行を見ていた記憶が。)世界にたったひとつの787初号機がお役目を終えて、これからはここセントレアのフライト・オブ・ドリームズでお客さんを迎えてくれるというわけです。なんて思っていると、照明が暗くなり、急に映像が流れ始めました。普通の映像じゃない!
ピンと来た方も多いかと思います。この映像はウルトラテクノロジスト集団チームラボが手がけたプロジェクションマッピング。チームラボはインタラクティブな体験ができる最先端のデジタルアートを創造することで世界中で注目を集めています。
じっと佇む787にプロジェクションマッピングが新しい命を吹き込み、七色の光の中を飛んでいるよう。それを見ているこちらも一緒に空に浮いているような感覚になりました。
さて、シアトル・テラスに戻りましょう。シアトル・テラスは2階と3階に分かれています。2階部分はフードコートになっていて、好きなお店で食事を買ったらこのテラスで食べられます。そのテラスなんですが、見えますでしょうか。思いっきり翼が入り込んでます。787の翼の真下でごはんを食べられるのは、世界でここだけでしょうね。
お店をぐるりと一周見てみました。まずエスカレータを降りて最初に見えたのは、シアトルのお土産の定番、高級チョコレート『FRAN’S』。海外初出店です。
そしてチーズの『Beecher’s』も! カウンターの感じがパイク・プレース・マーケットのお店に似てますよね。
まさか名古屋で『Beecher’s』のマカロニ&チーズを食べられるとは。感涙です。
そして次に目に飛び込んで来たのは 『Shiro Kashiba』 の文字。シアトルで知らない人はいない寿司職人・加柴司郎さんのお店です。
シアトルで日本が恋しくなった時、司郎さんのお寿司がいつも日本を近くに感じさせてくれました。そんな司郎さんのお店がこうして逆輸入されているのは嬉しいなと思いながら、中をのぞいて見ると・・・
まさかの司郎さん!!
司郎さんご本人が、お寿司を握ってらっしゃるではないですか。「司郎さん、司郎さん!」と声をかけてお話を聞かせてもらいました。
司郎さんは、このお店はフルネームで自分の名前がついていることもあって、「しっかりやっていかないと、シアトルにも迷惑かかっちゃうからね〜」と笑いながらお話してくださいました。シアトルで長い間お寿司を握ってらっしゃる司郎さんですが、日本で勝手が違うことはありますかと聞いてみると「日本もシアトルも水は同じ軟水だから違う味になるということなないですよ」。さすが司郎さん、頼もしい。また「カシバロール」もこちらで出すとのことで、司郎さんは「カシバロールはサバとシソと生姜っていうとてシンプルな中身だけど、美味しくて簡単にできるから日本にも広がってくれたらいいですね」とお話してくれました。
司郎さんとの再会とカシバロールの味でわたしのシアトル・ノスタルジーのボルテージが上がりまくりでしたが、さらに司郎さんのお店の横にはこれまたシアトルのセレブシェフ、イーサン・ストウェルのお店も。
ここで働いているスタッフさんと話をしていたら、彼女がすごくシアトルに興味を持って、シアトルにあるイーサンのレストランのこと、アメリカ人が好きな味のこと、どんな料理が流行っているのかなど逆にたくさん質問してくれました。
このフライト・オブ・ドリームズがきっかけとなってシアトルに興味を持ってくれる人が増えるだろうし、ここで食べた料理をシアトルでも食べたいと思ってシアトルへ旅行にいくという人も出てくるかもしれません。文化交流というのはいろいろな形があるけれど、やっぱり食は強い。
シアトルテラスにはシアトルにあるお店以外にもシアトルにインスパイアされたお店がいくつもあります。そのシアトルぶりと言ったら「このお店、シアトルのどの辺にあったっけな?」と勘違いしてしまうほど。ここから食のシアトルブームが始まってくれたりしたら嬉しいなと思いつつ、次は1階の「Flight Park(展示エリア)」へ向かいます。
ここからは有料エリアとなるそうですが、大人も子供も航空について体験しながら学ぶことができます。下から見上げる787もすごく男前です。
ここでは専用のアプリをダウンロードしてチェックインすると、787の周りを歩きながらパーツを集めて飛行機を完成させるという体験型学習ができます。ただ説明を読むのではなく体を動かしながら視覚で学ぶことができます。また絵に描いた飛行機がデジタル化され、専用のタブレットで操縦して飛ばすこともできたり、紙飛行機を作って飛ばすと映像と音のショーを作り出せたりと、航空に対する興味を最大に引き出してくれます。本当に現代のテクノロジーに感謝です。
こちらはシアトルの人にはおなじみボーイング工場にいるかのような体験ができるエリア。わたしも日本からお客さんが来るとボーイング工場へ連れて行くことがよくあったので馴染み深いのですが、ここでは組み立ての様子がスクリーンで動き、まるで工場内で歩いているような感覚でした。
この他にも航空力学を工作で学ぶ教室などもあります。飛行機を目の前に飛行機のことを学べるというのは、ここしかないものですし、体験を通じた学びというのは特に子供たちにとっては大きく印象に残り好奇心を刺激する経験になると思っています。もちろん大人のわたしも十分にはしゃいでしまいました。
今回、完全に前情報をシャットダウンして行ったおかげで、驚きと感動、そしてシアトルへの懐かしさや恋しさで胸いっぱいになりました。
シアトル在住の方は実際のシアトルと比べてみたり、シアトルに昔住んでいた方はわたしのようにシアトルへの懐かしさを感じたり、そしてシアトルを知らない方はシアトルに行ってみたいと思わせてくれるフライト・オブ・ドリームズ。
今はネットで世界のいろいろな場所を簡単に写真や動画で見られる時代ですが、ぜひ足を運んでいただいて、自分の五感を使い、体を動かしながら、海の向こうのシアトルを体験してみてください。
中部国際空港セントレア
愛知県常滑市セントレア1-1 FLIGHT OF DREAMS
【営業時間】
FLIGHT PARK(フライトパーク)月~金・日 10am-5pm(最終入場16:30); 土 10am-7pm(最終入場6:30pm)
SEATTLE TERRACE(シアトルテラス)飲食店 10am-10pm; 物販店 10am-6pm(一部店舗で閉店時間が異なります)
【チケット】購入 ※シアトルテラスは入場無料/フライトパークは有料/シミュレーターは別料金
掲載:2018年10月 取材・文・写真:岩田リョウコ