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ワシントン州の洪水対策と情報リソースまとめ

記録的な降雨によりノースクリークの水位が上昇し、遊歩道や湿地が冠水
2007年12月撮影
Photographer: Marc Studer
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アメリカでは、テキサス州、ノースカロライナ州、ニューメキシコ州、イリノイ州などで突発的洪水(flash flooding)が次々と発生し、多くの人の命が奪われ、現在も現在も多くの人が行方不明になっています。この報道を受け、ワシントン州の河川の多い地域での洪水対策がどうなっているのか、改めて関心を持った方が多いのではないでしょうか。

ここでは、ワシントン州や州内の郡がどのような情報を公開し、警告システムを提供しているかについてまとめました。

目次

洪水リスクがある地域・河川を確認するには

洪水リスクは地域によって異なります。まずは自宅や勤務先の所在地が洪水ハザードゾーンにあるか確認しましょう。

  • FEMA Flood Map Service Center(連邦政府の洪水地図)
    住所、場所、または緯度・経度の座標を入力すると、地図上にリスクが表示されるようになっています。
    https://msc.fema.gov/portal/home
  • NOAA Advanced Hydrologic Prediction Service(洪水予報・水位グラフ)
    全米の河川の状況や洪水などのハザードを、地図で確認できるようになっています。
    https://water.weather.gov/ahps/
  • USGS WaterWatch(全米河川観測)
    NOAA提供のデータ。全米の河川の状況や洪水などのハザードを、地図で確認できるようになっています。
    https://waterwatch.usgs.gov/
  • キング郡洪水リスク地図
    ワシントン州最大の人口を抱えるキング郡(シアトルやベルビューのある郡)も洪水のリスクを示した地図を公開しています。
    https://kingcountyfloodcontrol.org/flood-resources/floodplain-map/
  • キング郡の主な河川情報(例:Snoqualmie、Cedar、Tolt など8河川)
    水位・水流・予報などを10分ごとにウェブサイトやアプリで更新しています。
    https://flood.kingcounty.gov/
  • スノホミッシュ郡の主な河川情報(例:Sauk River、Snoqualmie、Snohomish など)
    NOAA が提供する水位・水流などのデータを更新しています。
    https://snohomishcountywa.gov/925/All-Real-Time-Gauges-by-Basin
  • スカジット郡の主な河川情報(例:Skagit、Samish など)
    NOAA が提供する水位・水流などのデータを更新しています。
    https://www.skagitcounty.net/Departments/EmergencyInformation/levels.htm
2022年11月に撮影したカーネーション市にあるOxbow Farm付近のスノコルミー・リバー。
雨が多くなる11月の最初の大雨の前後24時間後の水位の違いが明確にわかる。
©︎ Go

洪水のアラートを受け取るには

洪水アラートシステムは連邦・州・郡・市がそれぞれの役割で連携して運用しています。大雨(heavy rain)や嵐(storm)、大気の川(atmospheric river)などのアラートをスマートフォンで受け取れるようにしておくと安心です。

連邦緊急事態管理庁(FEMA)の IPAWS

郡別のアラート

洪水が予測されると、郡単位でアラートを受け取るよう登録することもできます。ここではワシントン州西部の一部をご紹介します。ワシントン州39郡別の情報は各郡の公式サイトでご確認ください。

キング郡の Flood Warning Center の電話番号(24時間対応)
電話 206-296-8200
トールフリー 800-945-9263

キング郡が2025年7月に可決した新たな洪水対策

こうした中、ワシントン州で最多の人口を抱えるキング郡の洪水管理区(King County Flood Control District)は7月9日、洪水対策を強化するための新たな動きを発表しました。ここでは、キング郡の発表の要点をまとめました。今回、以下のような対策が進められることになります:

  • 早期警報(early warning system)とアラートシステム(alert system)の見直しと改善の検討
  • 年次配布される資料『Be Flood Ready(洪水に備えよう)』に、突発的洪水(flash flooding)を含む多様なタイプの洪水情報を追加
  • 多言語翻訳の拡充により、英語以外を母語とする住民への情報提供を強化(情報アクセスの公平化)
  • 地域に根ざした「Community Navigators」と連携し、情報が届きにくい地域への支援を強化
  • 洪水対策に関する啓発動画の制作と配信(SNS、キング郡TVなどで展開)

キング郡の洪水対策については、kingcountyfloodcontrol.org をご覧ください。

ワシントン州で発生した主な洪水災害(1948年以降)

ワシントン州では、1948年以降だけでも30件以上の洪水関連災害が連邦災害指定(Presidential Major Disaster Declaration)を受けています。ここでは National Weather Service などによる情報に基づいて、代表的な洪水事例をまとめました。

1948年5〜6月:コロンビア・リバー&支流の流域

  • 被害地域:ワシントン州南部のバンクーバー、カラマ、ウッドランド、ロングビュー、ケニウィック、リッチランドなど。
  • 被害状況:ケニウィックの商業地区も浸水し、少なくとも1名が死亡。州全体では5,000戸が全壊または被害を受け、約50,000人が避難。被害総額は1億ドル前後。
  • 特徴:1948年6月13~14日にワシントン州南部のバンクーバーで水位31.0フィートに達し、洪水危険水位(16.0フィート)の2倍超。コロンビア・リバー支流・地域全体に大規模な水害が発生。

1990年11月:大雨と強風

  • 被害地域:レイク・ワシントンのシアトルとマーサー・アイランドを結んでいた浮橋レイシー・V・マロー記念橋(Lacey V. Murrow Memorial Bridge)は開通から50周年を迎え、改修工事中だったが、激しい雨と強風、さらに施工管理のミスによって橋の中に大量の水が流入。排水作業の甲斐なく1990年11月25日に水没。
  • 特徴橋が水没する様子はテレビ中継され、ワシントン州史上でも最も劇的な技術的失敗のひとつとして記憶されている(KUOW)。すでに新しい橋が建設されていたため、この橋は通行止めとなっていた。現在も使用されている浮橋は1993年に開通したもの。

1996年2月:大気の川に起因する洪水

  • 被害地域:ワシントン州の39郡中24郡が影響。氷結・飽和した地面に雨と融雪が集中し、氷河河川や低地が氾濫。
  • 被害状況:2,600戸超の家屋浸水、数十の橋の流失、3名の死者、被害額は約1.2億ドルに達したと推定。
  • 特徴:13河川(シーダー、チェハリス、コロンビア、クロゥリッツなど)で記録的な洪水を記録し、ワシントン州南西部では史上最高水位を観測。

2006年11月:記録的豪雨と洪水

  • 被害状況:2006年11月2日~11日に太平洋にあった台風の影響もあり、強くて温暖で湿った気象システムが流入し、大気の川(atmospheric river)」現象を引き起こし、各地で豪雨を記録。ワシントン州西部のほぼ全ての河川、ワシントン州東部でも4つの河川が氾濫し、ワシントン州西部の15河川が過去最高水位を記録。NWSシアトル(41地点)、ポートランド(6)、スポケーン(1)、ペンドルトン(4)=合計52地点に警報が出された。
  • 被害総額:7,000万ドル超
  • 特徴:単一の嵐によってもたらされた記録的豪雨により、過去最高レベルの水位を記録した河川が多数となった。特に、台風由来の湿気が流れ込む「大気の川」現象と、積雪のない状態での豪雨という条件が重なったことが、広範囲な洪水を引き起こす要因となった。

2007年12月〜2008年1月:Great Coastal Gale of 2007

  • 被災地域:特にグレイシャー・ハーバー、チェハリス・リバー沿い(高速道路 I-5閉鎖)などで大規模被害 。
  • 被害状況:州全域で75,000戸が停電。洪水によりI‑5の20マイル区間が水没し、復旧に数日必要。死者は少なくとも8名、被害額は10億ドル超と推定。

2009年1月:大気の川に起因する洪水

  • 被害地域:2009年1月6日~11日に大気の川(atmospheric river)が流入して大雨を降らせ、ワシントン州西部のほぼ全ての河川とワシントン州東部の4河川で氾濫。
  • 被害状況:高速道路I-5が冠水で一部通行止め(1990年以来4回目)、主要鉄道(南北線)も運行できなくなり、カスケード山脈の峠のすべての山岳道路が雪崩で閉鎖。州内で1,500件超の地滑りがあり、避難者数は44,000人超、推定被害総額7,200万ドル以上。
  • 特徴:この2009年1月の洪水は、過去数十年でも最大規模のひとつとされる。豪雨、雪解け、地盤の緩みが複合して発生した自然災害の典型例。被害の広がりは都市部から山間部まで及び、交通・インフラ・住宅に深刻な打撃を与えた。

2014年3月:記録的な雨

  • 被災地域:3月22日、スノホミッシュ郡のオソ(Oso)で、大規模な土砂崩れが発生。
  • 被害状況:連日の雨で地盤が緩み、スティルアグアミッシュ・リバー沿いの斜面が崩落。土砂は川をせき止めて洪水を引き起こし、民家や道路が流されたため43人が死亡。全米でも最悪級の土砂災害と記録されている。復旧までに数か月を要し、災害対策と土地利用の見直しが強く求められる契機となった。

2023年12月 洪水:大気の川(Atmospheric River に起因)

  • 被災地域:大気の川(atmospheric river)による記録的な降雨で、Stillaguamish River(スティラグアミッシュ川)が新記録水位に到達
  • 被害状況:Stillaguamish River(スティラグアミッシュ・リバー)が新記録水位に到達し、道路封鎖や浸水被害が発生。死者2名。

まとめ

洪水リスクから自分や家族を守るためには、日ごろの備えが何より大切とされています。以下のようなことから始めましょう:

  • 自宅や通勤・通学路が洪水リスクのある地帯かどうかを確認
  • 洪水警報の通知設定(King County Flood Alerts など)
  • 非常用持ち出し袋や避難経路の準備
  • 洪水保険(flood insurance)の加入の検討
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