米国人事マネジメント協会(SHRM)が2025年に実施した採用活動に関するアンケート調査の結果から、採用にかかるコストや期間、内部登用状況など、雇用主にとって非常に有益な結果が明らかになりました。
今回は、この調査の主要な指標を紹介するとともに、経済の先行き不安を背景に、「採用よりも、内部登用や育成」に注力したい企業が実践できることを解説します。
採用コストと期間の変化
SHRM は採用コスト(Cost-per-hire)を、外部費用、社内工数、面接工数、候補者関連費用、システム費の合算として算出しています。
調査によると、一般職の採用コストは、2017年から2025年に27%減少した一方、管理職採用のコストは2017年比で8.9倍、特に大企業では17〜18倍にも達し、管理職採用が専門性・リソース・スピードを要する高コスト領域であることが浮き彫りになりました。
米国のHRで一般的基準である Time to Fill(採用に要する時間)についても、2017年は非管理職が30日、管理職が60日だったのに対し、2025年は両者とも45日で推移しています。
多くの企業は採用コストの存在を認識していますが、正確な計算をしている企業は意外と少ない状況です。人材紹介手数料や求人広告費、Job Fair 参加費などの外部費用に加え、面接対応の交通費・宿泊費・引っ越し費用、人事担当者や面接官の工数、さらには福利厚生費まで含めると、コストは想定以上に膨らむ場合が多いです。
興味深いことに、SHRM の調査では Quality of Hire(採用の適切さ)を測定している企業は、2017年(23%)、2022年(27%)に対し、2025年には20%と低下しており、採用の効果測定が十分に行われていない現状も見て取れます。
依然として外部採用が中心
SHRM の調査によると管理職・一般職ともに、規模が小さい企業ほど外部採用が中心となります。下記は企業規模別の採用ソースである。大企業・超大企業になると内部登用の比率が高まるが、それでも外部採用が半分以上を占める場合が多くなります。

コストがかかる以上に、採用した人がそのポジションにマッチして活躍するかどうかは不明です。しかし、既に社内の別ポジションで働いている従業員であれば、ある程度現実的なパフォーマンスの想像が可能であり、仮に成功しなくても元のポジションで引き続き勤務するだけなのでリスクは少なくなります。
内部登用の促進方法
このように利点があるにもかかわらず内部登用が少ない理由は、内部登用を可能にする仕事の設計がなされていないことにあります。
人数が少ない現場ではリソース不足が原因ですが、一定規模のチームでは、人を動かせる仕組みや権限委譲が不足していることが原因として挙げられます。内部登用を促進するためには、次の施策が有効です。
- 職務を共有する:業務を一人に固定せず、複数メンバーが担当できる体制にする。
→ チーム全体で業務を回せる柔軟性を作る - 1ランク上の経験を与える:上司の業務の一部や判断の場に参加させ、段階的に責任を広げる。
→ 実務経験でリーダーシップを育てる - 業務を可視化する:手順やプロセスを文書化・共有し、誰でも引き継げる状態にする。
→ 人ではなくプロセスで仕事を管理する - 支援型のマネジメントを行う:判断を任せ、挑戦と学習の機会を提供し、必要に応じてフィードバックする。
→ メンバーの成長を促進する環境を作る
これらの施策は、内部登用を念頭に置かなくとも、実施することで外部採用者や新入社員教育、仕事への意欲向上、定着率改善につながります。
SHRM の調査から明らかになった通り、採用には時間とコストがかかる一方、内部人材の育成・登用は戦略的に実施することで組織の柔軟性や生産性を高めます。さらに、業務の可視化や責任範囲の段階的な拡大、支援型マネジメントといった仕組みを日常業務に組み込むことで、社員一人ひとりの成長機会を増やし、組織全体のパフォーマンス向上につなげられます。これらは組織運営の最適化にも寄与するので、時間はかかるものの、導入する価値は十分にあるでしょう。
総合人事商社クレオコンサルティング
経営・人事コンサルタント 永岡卓さん
2004年、オハイオ州シンシナティで創業。北米での人事に関わる情報をお伝えします。企業の人事コンサルティング、人材派遣、人材教育、通訳・翻訳、北米進出企業のサポートに関しては、直接ご相談ください。
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