ワシントン州・カリフォルニア州・オレゴン州の3州は、トランプ政権下で進められている CDC(米国疾病予防管理センター)の変化を受け、公衆衛生における科学的誠実性を守るための新たな地域連携「西海岸ヘルス・アライアンス(West Coast Health Alliance)」を立ち上げると発表しました。
この取り組みは、ワクチン接種の安全性や有効性について一貫した情報を住民に提供し、政治ではなく科学を基盤とする方針を重視する姿勢を鮮明にすることが目的です。
3州知事による共同声明
ワシントン州のボブ・ファーガソン知事、カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事、オレゴン州のティナ・コテック知事は、次のような共同声明を発表しました。
「トランプ大統領によるCDCの科学者や医師の大量解雇、そして政治的利用は、アメリカ国民の健康と安全への直接的な攻撃である。カリフォルニア州、オレゴン州、ワシントン州の3州は、住民が科学ではなくイデオロギーによって危険にさらされることを許さない」
この発言は、科学的根拠を軽視する連邦政府の姿勢に対する強い懸念を表明したものです。ニュースリリースには、今年2月に保健福祉長官に就任したロバート・F・ケネディJr. 氏が今年6月に CDC(米国疾病対策センター)の予防接種実施に関する諮問委員会(ACIP)の全17人のメンバーを解任したことへの批判も含まれています。
ワシントン州保健局のデニス・ウォーシャム局長
「科学が公衆衛生を導くべきであり、予防によって命を守ることこそが使命だ」と述べました。また、カリフォルニア州のエリカ・パン公衆衛生局長も、「科学やデータを無視することは命を危険にさらす」と強調。さらにオレゴン州のセジャル・ハティ保健局長は、「ワクチンに関する透明で科学に基づいた情報が、信頼回復につながる」
西海岸ヘルス・アライアンスの役割
「西海岸ヘルス・アライアンス(West Coast Health Alliance)」は、以下を目的としています。
- ワクチン推奨の一貫性を確保し、住民に安心できる情報を提供する
- 科学者や医療専門家の知見に基づく指針を策定する
- 透明性・安全性・信頼性を重視した公衆衛生政策を推進する
3州はそれぞれ独自の法律や地域性を尊重しつつも、共通の原則を基盤に協力します。また、部族(Tribes)の主権を認め、ワクチン提供における自治を尊重することも明記しています。
ハワイ州も参加を表明
ワシントン州・カリフォルニア州・オレゴン州が「西海岸ヘルス・アライアンス(West Coast Health Alliance)」の設立を発表した翌4日、ハワイ州がこのアライアンスに加わることが決定しました。
2022年にハワイ州知事に就任した医師ジョシュ・グリーン氏はニュースリリースで、「ハワイ州は、西海岸のパートナーと共に、公衆衛生に関する決定が政治ではなく科学に基づいて行われることを確保できることを誇りに思う」と述べています。
「島で構成される州として、私たちは予防可能な病気から地域社会を守ることがいかに重要かを理解している。西海岸ヘルス・アライアンスに参加することで、ハワイの人々にも、家族や隣人の安全を守るために信頼できる、一貫性のあるエビデンスに基づいた指針を提供することができる。科学を指針とすることで、ハワイ州は世界中のほかの州や地域と比べても最も高いワクチン接種率と最も低い死亡率を実現した」「感染症による深刻な脅威が迫る時代に進んでいく今、このアプローチは極めて重要です」
まとめ
西海岸3州とハワイ州による「ヘルス・アライアンス」の発足は、科学に基づいた判断を公衆衛生の中心に据える強い意思表示と言えます。一方、このアライアンス設立の発表から数時間後、フロリダ州では小児ワクチン接種義務を撤廃し、個人の裁量に委ねるよう仕組みを変更していくことが発表されました。ワクチン政策をめぐり、州ごとの方針の違いは今後さらに鮮明になる可能性が出ています。感染症対策が分断されることがアメリカ全体にどのような影響を及ぼすのか、今後の展開に注意することが必要です。