暖冬によって州内の山岳部にほとんど雪が残らなかったことを受け、ワシントン州エコロジー局(Department of Ecology)は、州全域に干ばつ緊急宣言(a statewide emergency drought declaration)を発令しました。このまま夏を迎えれば、水の需要に供給が追いつかないと判断したためです。
州の一部または全域が干ばつ宣言の対象となるのは4年連続。2015年以降では4度目の州全域を対象とした緊急宣言です。過去10年のうち実に7年間、どこかで干ばつが起きていたことになります。
雨はたくさん降ったのに、なぜ?
今冬は10月から2月にかけて平年比104%の降水量を記録した冬であったにもかかわらず、干ばつ緊急宣言が出される事態となりました。その理由は、降水量のほとんどが雪ではなく雨だったこと。その雨で雪が溶けたことが影響し、積雪量は例年の約半分にとどまっています。
今後の見通しとしても、NOAA の長期予報では6月まで気温が平年を上回り、降水量は平年を下回ると予測されています。
ワシントン大学の副州気候学者、カリン・バンバコ氏はこう説明します。
「降水量は平年並みでしたが、とにかく気温が高かった。観測史上最も暖かい12月の後、1月初旬にようやく積雪が積み始めましたが、3月初旬まで続いた乾燥した時期が積雪の増加を止めてしまいました。3月中旬の大雪も焼け石に水で、早春の暖かさがその雪もほとんど溶かしてしまいました」
10月から2月の州内気温は1895年の記録開始以来3番目に高く、3月下旬時点の平均積雪量は過去40年で4番目に少ない水準でした。
農業・漁業・山火事 あちこちに影響が
ワシントン州では、水供給量が平年の75%を下回り、水利用者や環境への影響が深刻になると判断された場合に干ばつ宣言が発令されます。今回は少雪と過去の干ばつの影響が重なり、州全域がその基準を超えてしまいました。
影響は地域によってさまざまですが、心配されているのは主にこの3点です。
- 農業: かんがい用の水が足りなくなり、作付けを断念する農家も出てくる可能性があります。
- 漁業: 川の水位が下がり水温が上がることで、魚への打撃が懸念されます。
- 山火事: 雪が少なく早く溶けてしまうため、山火事のリスクが高まっています。
今冬の経緯 洪水から干ばつへ

今冬の積雪不足は、一度にやってきたわけではありません。2025年12月の大雨は州全域に洪水をもたらし、一部の貯水池を満たした一方、せっかく積もり始めていた雪をほぼ全て溶かしてしまいました。洪水の水は結局、そのまま海へ流れていきました。
その後、1月と3月の嵐で一部地域の積雪は回復しましたが、たびたび訪れた温暖な気候がその都度雪を溶かし、なかなか積もりませんでした。
今回の「積雪不足型干ばつ」は、2025年よりも深刻な状況です。2025年は4月にヤキマ川流域で宣言が出され、6月に予想外の高温による急激な融雪を受けて州の約半分に拡大されました。今年はその段階を一気に超えて、最初から州全域が対象となっています。
このままだと2050年代は10年で7年が干ばつに
エコロジー局によると、気候変動による冬の気温上昇とともに、積雪不足型の干ばつはワシントン州の「普通の冬」になりつつあります。1990年代には5年に一度ほどだったものが、今では約40%の確率で発生しています。
さらに、研究によれば、2050年代には10年のうち7年が積雪干ばつになると予測されており、このままでは構造的な水不足が避けられない状況です。
今回、干ばつ緊急宣言が出されたことで、エコロジー局は緊急対応交付金の配分や水利権の許可申請の迅速な処理が可能になります。現在、水供給に影響を受けている公共機関向けに最大300万ドルの交付金が用意されています。
山火事研究の拠点も閉鎖へ 最悪のタイミングと専門家
追い打ちをかけるように、米国森林局(U.S. Forest Service)が全国の研究ステーション70か所のうち50か所を閉鎖すると発表しました。この再編は、本部をワシントンD.C.からソルトレイクシティに移転し、9つの地域事務所を15の州レベル事務所に再編するという大規模な組織改革の一環ですが、ワシントン州ウェナチーを含む北西部のステーションも含まれており、200人以上が解雇されることになります。
地元ラジオ局KUOWによると、森林局は「リーダーシップと意思決定を、森林と地域社会により近い場所に移すための改革」と説明していますが、山火事の専門家からは「研究の多くは長期的なもので、今夏の消火活動にも影響が出かねない」との声が上がっています。積雪不足で山火事リスクが高まっているこの夏、現場の研究体制が縮小されることへの懸念は大きくなっています。
シアトル大都市圏などへの影響は?

2020年9月12日撮影
水道に関しては、シアトル、タコマ、エベレットの水道事業者は冬の早い段階から干ばつに備えており、現時点では利用者への影響は見込まれていないと、エコロジー局は発表しています。
ただし、これは飲料水・生活用水の話であり、電力グリッド全体への影響は別の問題です。現在、シアトルを含め、ワシントン州では安価な水力発電と豊富な水資源を目的としたデータセンター増設の問い合わせが集まっており、住民の電力使用やが水力発電が落ち込めば、電力会社は化石燃料由来の電力を市場から買い入れることになり、コスト上昇や温室効果ガスの排出増につながりかねません。
また、山火事による大気への影響は可能性として否定できません。2020年には西海岸各地で大規模な山火事が発生し、シアトルのAQI(大気質指数)が一時、世界最悪レベルに達したこともありました。屋外活動の自粛が呼びかけられ、多くの人がマスクなしでは外に出られない状況が数日間続きました。積雪不足による山火事リスクが高まっている今年の夏、同様の事態が再び起きる可能性は否定できません。
州全体の水の状況については、お住まいの地域の水道事業者に確認し、節水対策が出ている場合は協力しましょう。

