2022年から鳥インフルエンザの拡大が続くアメリカでは、卵の価格が上昇し続けています。セントルイス連邦準備銀行のデータによると、2024年12月時点で米国における大きめのグレードA卵(Average Price: Eggs, Grade A, Large)の1ダース平均価格は4.15ドルとなり、2024年11月の3.65ドルから13.7%上昇しました。店頭で卵が品切れになっている状況に直面することも少なくありません。
今後の見通し
米国農務省農業マーケティングサービス(USDA AMS)の2月5日付の報告によると、2024年12月の卵の価格は、全米平均で1ダース7.34ドル(前月比+0.64ドル)、ニューヨーク市場では7.95ドル(+0.32ドル)、中西部では7.47ドル(+0.44ドル)、カリフォルニア州では9.11ドル(+0.14ドル)となりました。
また、小売業での卵の価格は2024年12月に8.4%上昇し、2023年12月と比較して36.8%高くなりました。しかし、2023年1月のピーク価格には達していません。
供給は依然として非常に少なく、高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)の影響により、今後すぐに改善する見込みは薄く、卵の価格は2025年にさらに20.3%上昇すると予測されています(予測範囲0.1%〜45.3%)。
高級品になってしまった卵が盗まれる事件も起きています。2月2日午後8時40分ごろ、ペンシルバニア州で、300以上の農場と契約している企業の配送トレーラーの後部から卵8,000箱(価値4万ドル)が盗まれました(ABC News)。また、2月5日にはシアトルのカフェから推定540個の卵(約387ドル相当)を含む食品が盗まれました。どちらの事件も犯人は現在も捕まっていません。
トランプ大統領は「就任初日から」食品の価格を下げると発言していましたが、その根拠や方法は具体的に示してきませんでした。現時点でもトランプ政権は食料品価格を引き下げるための包括的な計画を発表しておらず、消費者は引き続き高騰する食品価格に直面しています。
高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)の大流行
この値上がりの背景には、2020年にヨーロッパで始まり、2022年にアメリカでも始まった高病原性鳥インフルエンザ(avian influenza:HPAI)の大流行があります。
CDC(疾病予防管理センター)によると、高病原性鳥インフルエンザウイルスは非常に感染性が高いウイルスで、今回のアウトブレイクは2022年1月から2025年2月6日までに全米50州とワシントン D.C. で1億5625万羽以上が処分され、米国史上最大規模となっています。アウトブレイクが発生すると、卵生産者は感染拡大を防ぐため、鶏を処分せざるを得なくなり、市場に供給される卵の量が減少します。
これまでに殺処分された鳥類の個体数は、動植物の健康保護を通じて農業を支援する米国農務省の動植物検疫局(U.S. Department of Agriculture’s Animal and Plant Health Inspection Service, APHIS)の公式サイトでも公開されています。
ケージフリー卵の供給不足
NerdWallet.com は、ケージフリー卵(cage-free egg)の供給不足が拡大していると指摘しています。これは、動物福祉を理由に、ワシントン州やカリフォルニア州など8州で従来型卵の生産を禁止する新しい法律が施行されたことが、鳥インフルエンザの大流行に重なっているためです。
ケージフリー鶏は全米の卵産業の3分の1を占めるものの、現時点で鳥インフルエンザ感染の60%近くを占ています。この影響で供給が減少し、価格が高騰しています。また、厳しい規制がある地域では、基準に適合する供給業者の確保が難しく、価格上昇や品薄が生じています。
アメリカの典型的な朝ご飯にはオムレツや目玉焼きなど卵を使ったメニューが多く、また、日本食にも卵は欠かせない食材となっていますが、そんな身近な卵が高級食材となってしまっているのが現状です。