「帰国するなら、もちろん一緒に」。アメリカ生活で家族の一員となったペットを日本に連れて帰りたいと考える方は多いです。ただ、日本は世界でも数少ない狂犬病清浄国のため、輸入検疫のハードルが高く、準備を始めるタイミングが非常に重要です。帰国の7~8ヶ月前からの準備をおすすめします。この記事では、犬・猫を対象に、アメリカから日本へペットを連れて帰るための手続きを順を追ってご紹介します。
日本の検疫が厳しい理由
日本で狂犬病の感染が最後に確認されたのは1957年のことです。1950年に制定された狂犬病予防法により、飼い犬への予防接種の義務化と野犬の駆除が徹底され、日本はアジアでも極めて珍しい「狂犬病清浄国」となりました。この状態を70年以上守り続けているのが、現在の厳格な輸入検疫制度の背景にあります。
一方、アメリカは現在も狂犬病の常在国です。日本政府の動物検疫所は、米国本土を「指定地域以外」に分類しており、より厳しい条件が適用されます。手続きに不備があれば、最長180日間、ペットが日本の係留施設に預けられることになります。手順通りに準備すれば、入国当日に一緒に家へ帰ることができます。
準備のタイムライン(帰国7~8ヶ月前から)
手続きの流れは大きく5つのステップです。順番と期間を守ることが最大のポイントです。
ステップ 1:マイクロチップの装着(ISO規格)
すべての手続きの起点となるのがマイクロチップの装着です。日本が認めるのはISO規格(15桁)のマイクロチップのみです。アメリカでよく使われる非ISO規格のチップは認められないため、かかりつけの獣医師に必ず確認してください。すでにマイクロチップが入っている場合は、規格の確認だけ済ませれば、次のステップへ進めます。重要なのは、狂犬病ワクチン接種はすべてマイクロチップ装着後に行う必要があるという点です。
ステップ 2:狂犬病ワクチンを2回接種
マイクロチップ装着後、狂犬病ワクチンを2回接種します。1回目と2回目の間隔は、使用するワクチンの有効免疫期間の範囲内でなければなりません。接種した獣医師に有効免疫期間を確認しておきましょう。猫の場合は1回の接種でも条件を満たせる場合があります。詳細は動物検疫所の手引書で確認してください。
ステップ 3:狂犬病抗体検査
2回目のワクチン接種から30日以上経過した後、農林水産大臣が指定する検査施設で狂犬病の抗体検査(血液検査)を受けます。
ステップ 4:180日間の待機
狂犬病の抗体検査(血液検査)の採血日をゼロ日として、180日間アメリカで待機します。これが最も時間のかかるステップです。狂犬病の潜伏期間が180日とされているため、この待機期間を経て初めて入国当日に一緒に帰宅できます。
待機期間が不足したまま日本に到着した場合、不足分の日数だけ検疫所の係留施設で預かりとなります。費用と精神的な負担を避けるためにも、180日を確実に経過させてから出国することを強くおすすめします。
ステップ 5:アメリカでの書類準備(USDA証明書)と事前届出(到着40日前までに)
日本に到着する40日前までに、到着予定の空港を管轄する動物検疫所に輸入届出書を提出します。届出はオンライン(NACCS)またはメールで行えます。
届出が受理されると「届出受理証」が発行されるので、搭乗手続きの際に航空会社に提示します。この届出を怠ると、日本に到着しても入国できず帰送となる場合があります。
ステップ 6:出国前健康診断
出国前10日以内に、USDA(米国農務省)認定の獣医師による出国前健康診断を受けます。猫の場合は狂犬病、犬の場合は狂犬病とレプトスピラ症(猫は狂犬病のみ)にかかっていない、またはかかっている疑いがないことを確認します。
ステップ 7:輸出証明書の取得
輸出証明書(推奨様式Form AC)を作成します。証明書には、マイクロチップ番号、ワクチン接種歴、抗体検査結果などを正確に記載してもらいます。
その後、USDA の APHIS(動植物検査局)による裏書き証明(エンドースメントスタンプ)を取得します。APHIS の公式サイトはこちら。
ステップ 8:日本到着後の手続き
日本到着後、動物検疫所で輸入検査を受けます。問題がなければ輸入検疫証明書が発行され、自宅に連れ帰ることができます。
その後、犬の場合は入国から30日以内に、居住地の市区町村窓口で飼い犬の登録手続きを行います。日本でも狂犬病予防法により毎年1回のワクチン接種が義務づけられているため、登録後は地元の動物病院で継続的にケアを受けてください。
輸入検査で問題が見つかった場合(日本の輸入条件を満たしていない場合)は、最長180日間の係留検査、または輸入が却下されます。
航空会社の確認
航空会社によってペットの機内持ち込みや貨物輸送のルールが異なります。利用する航空会社に早めに確認し、ペット用のキャリーサイズや予約方法を確かめて準備しましょう。
帰国準備は早めのスタートが鍵
帰国を決めたら、まず動物検疫所の公式サイトで手引書(指定地域以外編)をダウンロードし、かかりつけの獣医師に相談してください。ステップの順番を守ること、特にマイクロチップの装着前にワクチンを接種しないことが最大の注意点です。余裕を持ったスケジュールで手続きを進め、家族の一員であるペットと一緒に日本での新しい生活を始められるようにしましょう!
参考・公式情報

