シアトルを拠点に活動してきたアーティストの市川江津子さんが、シアトル・タコマ国際空港のそばのタクウィラ市にあるフォスター公立高校に、大型作品 『Flowering Diversity』 を完成させました！
「この作品は、フォスター高校とその周辺地域の文化的多様性を称えたものです。花、円、渦巻きは、調和、自由、成長を示唆しています」と、市川さん。
「誰もが集い、タクウィラの過去、現在、未来をつなぐことを歓迎する場所なのです」
遠くから見ると、陰と陽の2色に見えますが、近づいていくにつれ、複数の色とパターンが見えてきて、それがハーモニーを奏でながら、一つの作品になっていきます。
一人の人間にも地域にも多様な側面があること、それが一つのコミュニティ、さらには地球を形作っているというビジョンが頭の中に広がりませんか？
© 2021 Etsuko Ichikawa
また、この作品は、「見るだけ」ではないのがいいですね。
さわったり、すわったり、寝転んだり。作家が作品に込めた思いと一体感を感じられるって、ステキです。
今のワシントン州は、1850年代に白人が入植するまで、1万年以上も前から先住民が住んでいた土地。
このフォスター高校も先住民のドゥワミッシュ族の土地にあり、校内で話されている言語は80以上と言われているぐらい、とても多様なバックグラウンドを持った生徒が在籍しています。
市川さんは、そんな先住民の土地とダイバーシティへの深い思いもこの作品に込めていると話してくれました。
ここ数年、シアトル大都市圏のあるワシントン州西部はドゥワミッシュ族が広く住んでいた土地であることをきちんと認識する動きが活発になり、次のような内容の文章が建物の壁、企業や団体のウェブサイトなど、あちこちで目に留まるようになってきました。
“We would like to acknowledge that we are on the traditional land of the first people of Seattle, the Duwamish People past and present and honor with gratitude the land itself and the Duwamish Tribe.”
「私たちは、シアトルの最初の人々、過去と現在のデュワミッシュ・ピープルの伝統的な土地にいることを認め、土地そのものとデュワミッシュ族に感謝して敬意を表します」
これを単なるパフォーマンスだと思う人もいるかもしれませんが、ドゥワミッシュ族はその公式サイトで、「これは後から来た人たちによるパフォーマンスではなく、ドゥワミッシュ族にとって大事なこと」と説明しています。
「土地の先住民族ではないコミュニティにとって、土地を認知することは、私たちが働き、生活する土地の先住民族に敬意を表し、尊重する強力な方法です。土地を認知することは、先住民の歴史の抹消に抵抗し、真実を尊重し、それを受け入れるためのシンプルな方法なのです」
そのドゥワミッシュ族の土地で、日本人の市川さんによる作品が選ばれたことも、今の世代、これからの世代にとって、とても意味があるように思います。
「生徒たちが本当にカラフルで、居心地が良く感じました。テラゾー制作のチームも全員が移民で、なんだかこうなるべきだったというような感覚が最初からありました」
一つの作品から、さまざまなことを感じたり、考えたりさせられます。
市川さんについてもっと知りたくなった方は、11月12日（金）ハワイ時間午後5時～午後6時（シアトルのPST 午後8時～午後9時）にオンラインで行われるアートトークにぜひ出席してみてください。ハワイのビッグ・アイランドにアート・レジデンシーで滞在中の市川さんが、これまでの作品、現在制作中のプロジェクト、そしてこれから公開するポッドキャスト『Traveling Clouds』について話してくれるそうですよ。
市川 江津子（いちかわ えつこ）/東京都中野区出身のアーティスト。中学校から女子美術学校に通い、大学は東京造形大学を卒業。その後、さまざまな美術関係のクリエイティブな仕事を転々とし、ガラスアートに出会う。仕事を辞め、一年間にわたり英語の勉強をした後、ガラスアートを学ぶため渡米。世界的に有名なガラス・アーティストのデール・チフーリ氏のスタジオで働き、現在はアーティストとして独立して活動している。
公式サイト：www.etsukoichikawa.com
