8月9日、シアトル・マリナーズは、本拠地 T-Mobile Park でイチロー氏(鈴木一朗)の背番号「51」を永久欠番にする式典を開催しました。アジア人初の米国野球殿堂(National Baseball Hall of Fame)入りを果たした功績を称えるもので、この栄誉により、イチロー氏はケン・グリフィーJr.(#24)、エドガー・マルティネス(#11)らと並び、マリナーズにおいて背番号が永久に使用されない選手の一人となりました。
会場を沸かせたユーモアあふれるスピーチ

式典では、過去のプレー映像が大型スクリーンに映し出された後、MC を務めた実況アナウンサーのリック・リズ氏によるアナウンスで、スーツ姿のイチローさんが外野から登場。一礼してからフィールドに入り、ゆっくり歩きながら観客に手を振り、ランディ・ジョンソンやダン・ウィルソン監督、ケン・グリフィン・ジュニア、エドガー・マルティネス、弓子夫人らの待つマウンド近くへ歩きました。その後、大型スクリーンの左側に設置された「ICHIRO51」のプレートが披露され、球場は大歓声に包まれました。
スピーチの冒頭、イチロー氏は「What’s up Seattle?(シアトル、調子はどうだ?)」と観客に呼びかけ、場内はさらにヒートアップ。続けて、「本日、この最高の栄誉をいただけて非常に光栄です。ですが、この2週間で2度も英語でスピーチをさせるなんて、一体誰のアイデアなんでしょうか? 私のキャリアの中で最もタフな挑戦です」と、7月27日の米国野球殿堂入り式典に続く英語スピーチを自虐的に語り、球場が笑いに包まれました。
また、「私が最も好きな哲学者の言葉を引用したい」と、ケン・グリフィーJr. 氏の名文句「I am damn proud to be a Seattle Mariner!」を引用して笑いを誘った後、「この栄誉はファンのサポートなしには得られなかった。シアトル、ありがとう」と感謝を述べました。
さらに球団幹部、通訳のアラン・ターナー夫妻らにも感謝した後、弓子夫人に「今日の試合で一緒にまたホットドッグを食べるのを楽しみにしている」と述べて笑いを誘いつつ、改めて感謝の気持ちを伝えました。試合が開始してから、球場のクラブ席でイチロー氏と弓子夫人が仲睦まじくホットドッグを食べているのを観客席から見ることができました。
ランディ・ジョンソン氏への敬意とMLBでも珍しい「二重永久欠番」
イチロー氏は、加入前に背番号「51」をつけていたレジェンドの左腕投手ランディ・ジョンソン氏への感謝も表明。「シアトルの51といえばランディだった。彼の寛容さなくして自分がつけることはなかった」と振り返りました。
さらに、2026年に予定されているジョンソン氏の永久欠番式典への出席と、「いつかキャッチボールをしたい」との希望も口にしました。
背番号51は、2026年にジョンソン氏も永久欠番に制定されることが決定しており、同じ背番号が異なる選手に対して永久欠番になるのはMLBでも極めて珍しい事例です。
現役選手への熱いメッセージ
現在も会長付特別補佐兼インストラクターとしてチームに関わるイチロー氏は、ダグアウトに並んだ現役選手たちへこう語りかけました。
「今年のチームには素晴らしいチャンスがある」とイチロー氏。
「君たちは強く、才能にあふれている。その才能を当たり前のものと思わないでほしい。素晴らしいチームと素晴らしいチャンスが目の前にある。勝たなければならないというプレッシャーがあるのは理解しているが、勝つことは常に難しく、プレッシャーなしに達成できるものではない。そのプレッシャーを受け入れ、プレッシャーの中でどうすれば自分の力を最大限に発揮できるかを見つけて欲しい」
「私はもうヒットやレーザービームのような送球で直接助けることはできないが、君たちを思う気持ちと願いは常にそこにある。その瞬間に備えられるように手助けしたいから、私は毎日、球場に来る。私は、君たちがその瞬間をつかめると確信している」
最後は「Now, let’s play ball!」でスピーチを締め、球場は再び大きな拍手に包まれました。
銅像建立の発表
式典では、2026年にT-Mobile Park外にイチロー氏の銅像を建立する計画が正式に発表されました。現在、球場のホームプレート入口付近には、すでに殿堂入りしたケン・グリフィーJr.とエドガー・マルティネスの銅像が設置されており、試合日以外でも多くのファンが訪れて記念撮影を楽しんでいます。ここにイチロー氏の銅像が加わることで、背番号51の永久欠番とともに、その功績と存在がシアトルを象徴するランドマークとして、永遠に刻まれることになります。
