アメリカで外食やサービスを利用する際に、戸惑いやすいのが「チップの文化」です。今は、サービスに対する感謝の気持ちを示すものとしての位置付けを超え、レストランやバー、サロンやシャトルなどのサービスでは合計金額の10〜20%のチップを支払うのが一般的とされています。
一方で、基本的なサービスの質が高くてもチップの文化がない国から来た人にとっては、「特別なことは何もしてもらっていないのに、なぜ追加で支払わなければならないのか」と疑問を感じることも少なくありません。
この記事では、アメリカのチップ制度を具体的な例とともにわかりやすく解説します。慌てて払いすぎてしまわないように、事前にしっかり知っておきましょう。
チップはなぜ必要?
チップの文化は、もともと基本給が低いサービス業の従業員の給与を補うために広まりました。また、特別な対応に対する感謝の気持ちとしても機能してきました。
なので、チップは良いサービスの動機づけになると考えられてきましたが、今ではチップは感謝の表現というよりも、制度として当然のように求められる支払いになっています。
とはいえ、アメリカで生まれ育った人でも、長くアメリカで生活している人でも、「チップを払うのが当たり前」と、全員が完全に納得しているわけではありません。実際、アメリカのチップ制度について疑問を投げかける英語の記事や動画は数多くあります。
チップを支払う場面と相場

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以下はEmily Post Instituteなどの情報をもとにした主なサービスとチップの目安です:
サービス | チップの目安 |
---|---|
フルサービスのレストラン | 飲食代の15〜20% |
ビュッフェ形式のレストラン | 飲食代の10% |
バーテンダー | ドリンク1杯につき15〜20% |
テイクアウト | 基本不要、特別な対応があれば10% |
配達(フード、ピザなど) | 10〜15%、または$2〜$5 |
ホテルのバレーパーキング | 車を取ってきてもらうときに$2〜$5 |
ベルスタッフ | 最初の荷物$2、追加1個ごとに$1 |
コンシェルジュ | 基本不要、難しい予約には$5〜$15程度 |
ハウスキーパー | 1泊あたり$2〜$5、「Thank you」のメモを添えると丁寧 |
タクシー/ライドシェア | 15〜20%、最低$1〜$2 |
ヘアサロン/スパ | 15〜20% |
一部のサービスでは、定額のサービス料がすでに加算されている場合があります。請求書に「Service charge included」などと書かれていれば、追加のチップは不要です。
税金に対してもチップが必要?
チップを計算する際、「税金を含めるかどうか」は意見が分かれるところですが、多くの飲食店では税金込みの合計金額に対してチップ率を設定しているのが現状です。
例:
- 飲食代:$100
- 税金(例:10.1%):$10.10
- チップ20%の場合:
計算方法 | チップ額 | 合計 |
---|---|---|
税抜き飲食代の20% | $20.00 | $130.10 |
税込金額の20% | $22.02 | $132.12 |
「税金に対してまでチップは不要」と考える人は、POS端末の “Custom Tip” を選び、自分で金額を入力するのが確実です。
サービス料込みのレストランも増加中

でも、さらにチップを支払いたいという場合は、+ Additional Tip のところに金額を書きます。
最近では、チップの金額をお客の判断に任せるのではなく、「サービス料(Service Charge)」または上記のレシートにあるように 20% Gratuity として一律20%を請求するレストランもあります。
その場合、チップの追加は基本的に不要です。
サービス料に加えて、さらにチップも払いたいなら、上記のレシートの場合は + Additional Tip のところに金額を書き込み、その合計を Total のところに書きます。

チップの支払い方法

POS端末での支払い(カウンターで支払う場合・サーバーがテーブルに端末を持ってくる場合)
- 画面に表示されるチップ率(例:15%、20%、25%)を選択
- “Custom Tip”で金額入力、または “No Tip”も選択可能
- 画面でサインし、控えを受け取る
COVID-19のパンデミックの影響で、コンタクトレスのPOS端末が一気に普及しました。レストランだけでなく、コーヒーショップ、テイクアウト専門の店、フードトラックなども導入しています。
POS端末を使わない店でクレジットカードで支払う場合(テーブル会計)
- サーバーが勘定書きを持ってくる
- 勘定書きを確認し、クレジットカードと一緒にテーブルに置く
- サーバーが会計に持っていって処理し、レシートを持ってくる
- MERCHANT COPYにチップ額と合計金額を記入し、署名してテーブルに置く
- CUSTOMER COPYは自分の控えとする
POS端末が普及する以前は、この支払い方法が一般的でした。
クレジットカードで飲食代と税金を支払い、チップは現金で支払うということもできます。その場合、レシートのTIP欄に「$0.00」と記入し、現金をテーブルに置いて立ち去ります。
現金で支払う場合(現金は受け付けない店もあるので要注意)
- テーブルに勘定書きと現金を一緒に置く
- お釣りをチップにする場合は “Keep the change.” と言う。お釣りが必要な場合は “Can you bring the change?” と一言添える。

こんなチップ・ジャー(tip jar)が置いてあった時代もありました。
覚えておきたいポイント
- アメリカではチップは「感謝」よりも「制度」に近い存在。
- サービス料込みかどうか、レシートや表示をよく見る。
- 価格や個数が間違っていないか確認する。
- 税込・税抜でチップの金額が大きく変わることがあるので注意。
- クレジットカードでも現金でも、チップの支払い方法は柔軟に対応可能です。