第13回:
2011年アップデート(1)米国連邦遺産税
ジャングルシティの読者の皆様、ご無沙汰しております。連載としては既に終了しているのですが、法律というものの性質上、頻繁な変化があり、特に税法面では近年かなり大きな変化がありましたので、再度スペシャル・アップデートとして何回かに分けて書かせていただくことになりました。 今回はまず、米国遺産税の近年の状況について説明します。
■ 連邦遺産税
過去のコラムでも書きました通り、過去10年ほどの間に、連邦遺産税は税率と免除額共に大きな変動がありました。(注:「免除額」と訳していますが、英語でも近年は名前に統一性がなくなっており、"unified credit equivalent amount"、"estate tax credit amount"、"estate tax exemption" など、さまざまな名称で呼ばれています。現行の法律での正式な名称は、"applicable exclusion amount" です。基本的な意味は、「遺産のうちこの額までは連邦遺産税が免除となる」です。)
2009年に亡くなられた方については免除額は遺産の$3,500,000まで、それを超える分には45%の税率で課税されましたが、2010年には、遺産税が一旦廃止され、2011年になってから "部分的に2010年1月に遡って"、しかもこれまでと異なる税率と免除額で遺産税が復活するという前例のない事態が発生しました。
これはどういうことかというと、2001年に現行の遺産税法が立法された際に、2010年に遺産税は廃止となりましたが、その時の条件として、2011年1月1日以前に「廃止を継続する」、または「別の形で遺産税を存続する」形で新しい法律が可決されなければ、遺産税の廃止は1年のみで、2011年には免除額が$1,000,000で、税率は昔どおり最高55%までの累進課税の状態に戻ることが決められていました。多くの政治評論家はおそらく2009年末までには議会がどうにかするだろうと考えていたようですが、議会では何も議決されなかったため、2010年の「遺産税廃止」に至ったわけです。
ところが、上記の通り、放っておくと2010年の1年のみ遺産税が廃止され、2011年以降は2009年よりもはるかに高い税金となるため、この方面に携わる人は2010年の間は議会の様子を見守っていました。結果として2010年12月17日、年末間際になってようやく新しい法律が立法されたのですが、その時点では既に2010年になってから亡くなった人の数も多く、単純に1月に遡って遺産税を適用するというわけにも行きませんでした。従って2010年の死亡者については2通りの税法のどちらかを選ぶという過去にない状況となったのです。
選択肢の一つは免除額$5,000,000、税率35%という形での遺産税の適用です。この法律を望む場合は、特に何の行動をとらなくてもこの税法が適用されますので、遺産が$5,000,000以下であれば連邦遺産税の申告は必要ありませんし、それ以上であれば申告が必要です。
この法律が適用された場合には、遺産税の課税対象となった時点で(実際には免除額以下で税金の支払いがない場合でも)、所得税上のキャピタル・ゲイン税の計算ベース(Tax Basis)が死亡時の時価に引き上げられますので、一部の例外を除き、相続した財産をその後に売却した場合のキャピタル・ゲイン税は、相続以降の売却利益のみに課税されます。
例:親が$10,000で買った投資株を長年所有したまま亡くなり、死亡時での時価が$50,000だった場合、その株を死後すぐに相続した息子が$50,000で売却した場合には売却利益は「$50,000-$50,000」でゼロとなる。または、株の時価が$60,000となった数年後に売却した場合は「$60,000-$50,000」で差額の$10,000の売却利益に対して税金がかかる。これに対して、親が死亡直前に$50,000で売却した場合には、親の売却利益は「$50,000-$10,000」なので、$40,000に対してキャピタル・ゲイン税がかかる。
もう一つの税法は、現行の法律が制定される前の法律、つまり遺産税を廃止するという法律です。ただし、遺産税がかからない代わりに上記のキャピタル・ゲイン税の扱いが変わり、場合によってはかなりの所得税上がかかることがありますので、税法のアドバイザーにご相談ください。また、この税法の適用を希望する場合にはIRSから発行される用紙にて適用を選択する必要があります。何もしないと上記の遺産税が復活した税法が適用されますのでご注意下さい。
では、2011年以降はどうなるかというと、残念なことに、長期的にはまだ不安定な状態が続きます。新法では$5,000,000の免除額と35%の税率が2011年と2012年に亡くなった人に対して適用されます。つまり、この新法は2年間のみ有効なのです。ですから、せっかく新しい法律ができても、結局また2012年末までに議会が何らかの法律を可決しなければ免除額$1,000,000、最高税率55%の累進課税に逆戻り、という状態です。
ちなみに、以前のコラムに書いたとおり、ワシントン州には別に州の遺産税がありますが、こちらは以前と同じく免除額$2,000,000、最高税率19%の累進課税のままとなっています。ですから、ワシントン州の遺産税が適用される人(ワシントン州の住民及び、ワシントン州内に財産のあるその他の人)の場合、遺産税対策が必要かどうかの基準は$2,000,000です。州によっては免除額がさらに低いところ、遺産税がないところなどもありますので、州ごとに法律の確認が必要です。
(2011年7月)
= お断り =
コラムを通して提供している情報は、一般的、及び教育的情報であり、読者個人に対する解決策や法的アドバイスではありません。読者個人の具体的な状況に関しては、お住まいの州のエステート・プランニング弁護士にご相談ください。
なお、このコラムにおける法律の情報は特に明記されていない限り、掲載時のワシントン州の法律に基づいております。エステート・プランに関する法律は州によって大きく異なりますので、ご注意ください。