「あなたは孤独だと感じたことはありますか?」
昨年10月、外務省は、海外在住の日本人を対象に、孤独や孤立の実態を把握し、支援対策を講じるための調査を実施しました。この調査の対象は、在留届を提出し、海外に3ヶ月以上滞在している約130万人の日本人です。
約5万5千人の回答を集計したところ、16歳以上で性別が男女どちらかに当てはまる人の中で、「孤独感を感じる」と答えた人は、日本国内に住む人を対象に内閣府が実施した調査と比較すると、日本在住者よりも約5%多いことがわかりました。
この結果から、海外在住の日本人が感じる孤独感の実態が明らかになり、その解消に向けた支援策の重要性が浮き彫りになりました。
外務省による調査結果
この外務省による調査で、「あなたはどの程度、孤独であると感じることがありますか」という直接質問に対する回答は次のとおりでした。
地域 | しばしばある・常にある | 時々ある | たまにある | ほとんどない | 決してない |
海外全体 | 6.9% | 12.7% | 25.3% | 34.7% | 18.5% |
北米 | 6.9% | 12.8% | 25.6% | 34.2% | 18.3% |
日本 | 4.8% | 14.8% | 19.7% | 41.4% | 17.9% |
同居人の有無や言語・文化の違いが孤独感を高めるとの回答が多かった一方で、現在の生活への満足度、心身の健康状態が影響していることがわかりました。
心身の状態が良い人(1.8%)より、良くないと答えた人(50.2%)の方が、孤独を感じると回答する割合が特に高くなっています。
孤独と孤立の違い
孤独とは、周囲との関係や交流が不足していると感じる時に生じる心理状態と説明することができます。
孤独を訴える人の多くが、「パートナーや親しい友人がいない」「自分だけ誘ってもらえない。」「周囲に理解者がおらず、悩みを一人で抱えている」というように、自分は一人ぼっちだと感じる寂しさを表現します。
それに対し、孤立とは、周囲との関係(家族・友人・近隣・社会など)や交流が少ない状態です。
同じ状況でも、孤独を感じるかどうか、また、感じる場合はどの程度の孤独を感じるかは、人それぞれ異なります。
例えば、「一人で映画を観に行く」という状況を考えてみましょう。
「ひとりで心細い」「話し相手がいない」「友達がいないんじゃないかと思われる」などと考える。
→ 孤独感や寂しさを感じる。
「好きな映画と座席を気にせず選べる」「映画に集中できる」と考える。
→ 孤独よりも、一人で映画を観ることの利点を強く感じる。
このように、孤立した状態についての感じ方は、さまざまです。
孤独の原因
孤独を感じる原因もさまざまで、個人差があります。家族構成や社会的環境によるもの、性格や心理的特性によるもの、また、心身の健康状態によるものなどが一般的です。
家族構成や社会的環境
親しくしていた人との離別や、新しい住まい・職場・学校などの生活環境の変化、また、デジタル化社会の影響によって他人との交流が減ることが、孤独を感じる要因となります。
- 家族がいない、もしくは家族と離れている。
- オンライン授業やリモートワークの時間の増加。
- 時間的・金銭的な余裕がない。
- ソーシャルメディアを閲覧し、他人の生活と自分の生活を比較してしまう。
- 文化や言葉の違いから、他人とのコミュニケーションが億劫。
- 英語を話すことにストレスや苦痛を感じる。
例えば、まだ英語が堪能ではないAさんは、学校の宿題を終えるのに時間がかかります。そのため放課後も週末も常に勉強をして過ごすごとが多く、孤独を感じています。
Bさんは、遠距離恋愛をしていた彼が住む都市で就職しましたが、彼とばかり一緒にいて新しい友人を作らず、リモートワークが多い職場のため、同僚とも親しくありません。最近、彼と別れてしまい、ソーシャルメディアで大学時代の友人たちがパートナーや友人と楽しそうにしている写真を見て、孤独を感じて苦しんでいます。
性格や心理的特性
内向的な性格や自己肯定感が低い人は、他人を避けたり、距離を置いたりする傾向にあります。また、現在の生活や人間関係において満足感よりも不安や不満感が強い人は、「ある」ものよりも「ない」ものが気になり、より一層不安や嫌悪を感じるため、無意識に他人との関わりを避けることもあります。
例えば、Cさんは日本で親しい友人ができず、孤独を強く感じていました。海外で心機一転しようとアメリカに来ましたが、内向的で社交的な場所を避けることが多く、自分から誰かを誘うことも苦手で、アメリカでもなかなか友人ができず、孤独を感じています。
アメリカに転勤してきたDさんは、自分にあまり自信がありません。会社では評価を気にして、自信のなさを隠そうと、無理して社交的に振る舞っています。ですが、同僚と必要以上に親しくなると自信のなさがバレてしまうのではないか心配で、自分から誘うことはしないのですが、気を許せる仲間ができないことに焦っています。
心身の健康状態
個人の性格や置かれた環境にかかわらず、心や身体の不具合は孤独感を強める可能性が高くなります。鬱のような状態の時や、慢性疾患がある場合などは、家から出ることや他人と関わることにたくさんのエネルギーが必要です。いろいろな理由から、心身の不具合を他人に知られたくない場合もあります。人との繋がりやサポートが必要な時にそれらが得られないことで、さらに孤独感が高まってしまいます。
例えば、Eさんは更年期の症状がひどく、家事をこなすのがやっとの毎日が続いています。夫や子どもからの理解が得られない上、「周囲には心配をかけたくない」と、誘いがあっても断ることが続き、最近では友人とのやりとりも減ってしまいました。
発達障害がある27歳のFさんは、両親と暮らしています。同級生たちは一人暮らしや結婚をしているのに、経済的に独立していない自分の近況を聞かれるのが嫌で、古い友人とは疎遠です。習い事を始めてもうまくいかないことが多く、長続きしません。
どのような状況であっても、頻繁に孤独を感じたり、長期間にわたって孤独を感じたりしていると、心身の健康状態に影響します。ストレスを感じることもあれば、鬱気味になったり、自己肯定感が下がることもあります。では、孤独を感じる場合、どのように対処すれば良いでしょう。
孤独に陥らないようにする
予防医学と同じ考え方ですが、孤独を感じてから対処するよりも、孤独に陥らないように日頃から対処しておく方が効果的です。
- 人間関係は築き上げていくものです。無理をせず、興味のあるコミュニティやイベントに参加するなど、簡単にできることから始めましょう。
- パートナーがいても、孤独を感じることがあります。誰か一人と集中して関係を育んでいくのではなく、人間関係を多角化しましょう。
- 一人でがんばらず、助けてもらうことに慣れる練習をしましょう。問題が大きくなるまで待っていると、余計にハードルが高くなります。
- 「ないもの」ではなく、「あるもの」に焦点を当てる習慣をつけましょう。
- 日常や近い将来の明確な目的やゴールがあると、それに向かう活力が原動力となり、達成すれば自信にも繋がります。
すでに孤独を感じている場合の対処法
すでに孤独を感じている場合、「孤独な自分を誰かが救ってくれる」と思うのではなく、自分のことをもっとよく知ることが一番大切です。
孤立しているけれど、本当はその状態が楽であったり、心地良かったりするのかもしれません。でも、他人の評価を気にするのであれば、孤立した状態が苦痛に思えてしまうでしょう。でも、孤独な状況にある自分を責めることは逆効果です。孤独が苦痛な場合には、次のような対処法を試してみてください。
セルフケア
孤独から逃れようとするのではなく、一人の時こそ誰にも遠慮せず、現在の生活がより快適になる工夫をしましょう。バランスのとれた食事や十分な睡眠はもちろんのこと、運動やストレッチをして身体をリラックスさせたり、部屋の模様替えをしたり、この機会に健康的で心地良いライフスタイルを再建しましょう。
新しい繋がり
地域のサークルやコミュニティはハードルが高いという場合は、短期のボランティアや、拘束時間が少ないボランティアが最適です。頻繁に行われているものから、イベント当日の数時間のみなど、いろいろな選択肢があります。
カウンセリングやセラピー
カウンセリングは精神病の治療とは異なり、ウェルネスを主体としています。専門家と話をすることで、セルフケアの方法を見直したり、孤独を感じる原因を探り、自分に合った対処法を見出すことができます。また、同じような境遇の人と共感し合うことができるグループセラピーという方法もあります。
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佐野圭子 Ph.D, LMHC, NCC, SAS
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