米国市民権は、基本的に「出生」または「帰化(naturalization)」によって取得できます。生まれながらの米国市民ではない外国人が米国市民権を取得するために行うプロセスを帰化申請といいます。
アメリカの永住権(グリーンカード)を取得しても、市民権を取得する義務は発生しません。しかし、米国市民になることを希望する場合は、申請条件を満たすことによって、米国市民権を取得することができます。このコラムでは、2025年10月20日以降の審査基準の改正についてご説明します。
帰化の申請条件
帰化の申請条件は以下の通りです。
- 18歳以上であること。
- グリーンカードを保持していること。
- 帰化申請前に、グリーンカード保持者として、最低5年間 (申請者が米国市民の配偶者である場合は3年間)アメリカでの居住期間があること。
- 5年、あるいは3年の居住期間のうち、最低半分は実際にアメリカに居住していること。
- 帰化申請時に住んでいる州に、申請前の最低3ヶ月間居住していること。
- 日常生活に必要な程度の英語の語学能力(読み・書き・会話)があること(英語テスト)。
- アメリカの歴史や政治に関して、基本的な知識を持っていること(Civics Test:公民テスト)。
- 道徳上の問題がなく、米国市民になるにふさわしい人間であること。
- 米国の憲法を支持し、アメリカに忠誠を誓うこと。
これらの申請条件は、基本的には以前から変わっていません。ただし、移民局は、2025年10月20日以降に受理された申請に対して、7番の公民テストと、8番の「米国市民になるにふさわしい人間であるか」の審査基準を改正することを発表しました。
2025年10月20日付の申請分から新しい公民テストが適用
アメリカの帰化申請に必要な公民テスト(Civics Test)が改正されました。2025年10月20日以降に申請した人は、2025年改正版テストを受けなければなりません。
新しい公民テストでは、事前に公開されている128問の中から最大20問が出題され、12問に正解しなければなりません。
一方、10月20日以前に申請した人は、従来通り100問の中から最大10問が出題され、6問に正解する必要があります。
つまり、10月20日以降に申請したケースは、次のように変更されます。
- 事前に勉強しなければならない問題:100問 → 128問
- 最大出題数:10問 → 20問
- 必要な正解数:6問 → 12問
申請者が12問に正解した時点、または9問に間違った時点で、審査官は質問を停止します。
高齢者の特例(65/20ルール)
申請者が65歳以上で、グリーンカードを取得してから20年以上経過している場合は特例があります。
公民テストは、128問の全問題ではなく、質問に星(★)印のついた20問の中から10問が出題され、そのうち6問正解すれば合格となります。
インタビュー時の言語免除条件
基本的に帰化申請時のインタビューは英語で受けなければなりませんが、下記に該当する場合は、母国語で受けることができます。
- 申請時に50歳以上かつグリーンカード取得から20年以上経過している場合
- 申請時に55歳以上かつグリーンカード取得から15年以上経過している場合
道徳性(Good Moral Character)の審査基準の改正
Good Moral Character とは、申請者が米国市民になるのにふさわしい人間かどうかを判断するための基準です。申請者の状況をケースバイケースで評価するものです。
これまでは、犯罪歴などのネガティブな要素がないことが重視されていました。しかし、2025年10月20日以降はそれだけでは道徳性に問題がないとは証明できなくなり、以下のようなポジティブな要素の立証が求められます。
- コミュニティへの貢献
- 家族への貢献
- 教育的功績
- 安定した雇用歴など
Neighborhood Investigation(近隣調査)の実施
移民局は、申請者の状況を確認するために、Neighborhood Investigation(近隣調査)を行う場合があります。審査では、申請者の自宅や職場を訪問し、隣人・雇用主・同僚などからヒアリングを行うこともあると発表しています。
琴河・五十畑法律事務所 弁護士・琴河利恵さん
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コラムを通して提供している情報は、一般的、および教育的情報であり、読者個人に対する解決策や法的アドバイスではありません。また、移民法は頻繁に改正があります。提供している情報は、掲載時に有効な情報です。読者個人の具体的な状況に関しては、米国移民法の弁護士にご相談ください。

