ワシントン州知事は、2026年3月23日にワシントン州議会で可決された法案 HB1155に署名しました。これにより、2027年6月30日より同州の非競業契約に関する法規(RCW 49.62)が大幅に改定され、ごくわずかな例外を除き、非競業契約(Non-Compete)の締結が全面的に禁止されます。これにより、退職後や契約終了後の競合他社への転職・業務提供が自由化されます。
主な変更点
- 新たな契約だけでなく、過去に交わされた契約も禁止・無効になります。
- 正社員のみならず、独立契約者(Independent Contractors)に対しても適用されます。
- 契約書としての書面はもちろん、口頭での合意も禁止・無効の対象になります。。
雇用主が対応すべきこと
雇用主は、2027年10月1日までに、現在および過去の従業員・独立契約者に対し、「以前の非競業契約は無効になる」旨を書面で通知しなければなりません。
非競争禁止の「例外」事項
以下のケースについては、引き続き一定の制限が認められます。
- 勧誘禁止契約(Nonsolicitation Agreement):最大18か月まで。
- 守秘義務契約(Confidentiality Agreement または NDA):営業機密の保護など。
- ワシントン州の法規 RCW19.100に基づいたフランチャイズにおける非競争禁止契約。
- ビジネスの売却:事業の1%以上を所有する事業主が売却に伴って結ぶ非競業契約。
- 教育費の返還合意:雇用主が教育費を負担して雇用を約束した従業員との非競業契約。最大18か月まで有効ですが、返還額は期間に応じて按分計算される必要があります。ワシントン州の法規 RCW 50.20.050に基づき、従業員が正当な理由で離職する際、教育費支払いの放棄を約束する。
違反時のペナルティ
もし雇用主がこの競業避止義務の禁止令に従わなかった場合、元従業員や独立契約者は従業員側の雇用労働法専門弁護士またはワシントン州司法長官(Attorney General)を代理として雇用主を訴えることができます。
そして、裁判所や調停人が違反を認めた場合、雇用主は実際の被害額または5,000ドルのいずれか高い金額を支払う義務が生じます。また、これに付随する弁護士費用や法的手続き費用も雇用主の負担となります。
雇用主が支払うべき費用(民事罰)
裁判所や調停人が「雇用主側の違反」と判断した場合、雇用主は以下のいずれか高い方を支払う義務があります。
- 実際の損害額(例:転職できずに失った給与など)
- 法定の最低罰金額:$5,000
ここがポイント! たとえ元従業員に具体的な金銭的被害(損害額)が出ていなくても、違反が認められた時点で最低$5,000の支払いが命じられるという、非常に厳しい内容です。
さらに膨らむ「付随費用」の負担
上記の罰金に加え、雇用主は以下の費用もすべて負担しなければなりません。
- 元従業員側の弁護士費用
- 裁判や調停にかかった諸手続き費用
【実務上の注意点】 「契約書を直さず放置しているだけ」でも、非競業契約を根拠に従業員の転職を制限しようとすれば、即座にこのペナルティの対象となります。2027年10月1日までの「無効通知」を確実に行い、リスクを避けることが不可欠です。
シャッツ法律事務所
弁護士 井上 奈緒子さん
Shatz Law Group, PLLC
www.shatzlaw.com
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