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第40回 再販売業務契約書・販売代理店契約書 (Reseller Agreement) とは?

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再販売業務契約書とは、提供者(元売)または製造業者が商品やサービスの販路を拡大するためにその販売を請け負う仲介人または代理店と結ぶ契約書です。特にソフトウェア業界ではこのような契約書がよく結ばれます。下記にその契約書の特徴と重要なポイントを簡単にまとめました。

  1. 支払いに関して
    支払い形態としては、主に2種類あります。売れ行きと販売額に従って手数料を代理店に支払う場合と、商品に付随する価値とその知的財産権(特許権等)に基づいて販売権利(License)の支払いを代理店に請求する場合があります。前者は一般向けの商品販売によく利用される方法で、業者によっては商品を最初から値引きして代理店に販売し、代理店に最終価格の決定を委ねる販売形態を取ることもあります。後者は特に知的財産権を重視する業界(ソフトウェア業界)にとっては重要な支払い形態です。その他、年会費等を徴収する提供者もいます。このように、支払い形態と方法は、提供者と代理店の力関係によって異なります。
  2. 品質保証に関して
    代理店にとって重要なのは、製造業者(提供者)が品質を保証することです。品質保証の種類については第21回のコラムをご覧ください。ただし、運送過程で発生した商品の破損等は、F.O.B.(運送状の保障)の定義に基づいて、いずれかが保証することになります。
  3. 賠償責任について
    代理店または提供者(製造業者)が品質の不備や破損等が理由で訴えられた場合、代理店と提供者(製造業者)は通常、協力し合って訴訟に対応することを約束します。その主な理由は、相手の申し立てに対応するための資料や証拠を提出するにはお互いの協力が必要だからです。なお、訴訟に対応するための弁護士料に関しては、お互いの力関係や経済力によって決定します。
  4. 知的財産権について
    商品に関する特許権等の知的財産権は通常、製造業者が所有します。従って、代理店としては商品に対する知的財産権を販売目的に限って借りるような立場になります。前述の支払い方法では、販売権利の支払い(License Fee)がその権利の借用に値します。さらに商標に関してもどちらの商標を使用すれば販売効果があるか等の話し合いを行い、その結果に基づいて提供者の商標と代理店の商標の使用に関する決定を行います。
  5. 契約期間と満期について
    契約期間には、期間限定のものと期間未定のものがあります。期間限定でも通常は1年ごとで、その後の契約を自動更新にするのが一般的です。期間未定のものは、お互いにいつでも契約解除ができるというもので、特に代理店にとっては不利です。この場合、前述の知的財産権や企業秘密情報の処理の仕方も考慮し、契約書にその内容を明記しないと、業務上入手した情報が後に漏れる可能性があります。
  6. その他
    その他に重要なのが、企業同士の紛争があった場合の紛争解決地と適用法の決定です。また、紛争の解決を裁判所でするのか、調停で解決するのか、さらにもし一方が勝訴した場合は敗訴した側が弁護士料を負担するのかを決めておくことも重要です。

以上が主なポイントですが、実際問題として、日本企業は一般的に交渉を避ける傾向があり、仮に相手企業(米国企業)が契約書を提出してきても、それに署名しなければ業務が開始されないと解釈する日本企業もよくあります。しかし、米国では契約書には自分に有利な内容のみを盛り込み、相手がそれに対して反論や問題を提出してくるか様子を見ていることが一般的です。契約書の各項目の法的影響を考慮しないまま契約書に署名してしまった日本企業が、後の訴訟で証拠不備と契約内容の承認と主張され、不利になって莫大な費用を費やす例も少なくありません。後の紛争を避けるためにも、提出された契約書を署名する前によく読み、内容に対する意見と問題を相手に伝えることが重要です。

シャッツ法律事務所
弁護士 井上 奈緒子さん
Shatz Law Group, PLLC
www.shatzlaw.com

当コラムを通して提供している情報は、一般的、及び教育的情報であり、読者個人に対する解決策や法的アドバイスではありません。 読者個人の具体的な状況に関するご質問は、事前に弁護士と正式に委託契約を結んでいただいた上でご相談ください。

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