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アメリカの労働市場と人事戦略:’Great Resignation’の終焉が見える時代

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ウォール・ストリート・ジャーナルの最新記事によると、雇用の新たなトレンドは「辞めない」ことだそうです。弊社ウェビナーでも述べましたが、テクノロジー企業は既に国際的な人員削減を開始しています。そして、現在は金融会社もこれに追随しているようです。

大手人材派遣会社アデコのデニス・マクエル CEO は「マクロ経済があまり良くないので、転職市場は冷え込むと人々は感じている。そして最後に雇用した人材から解雇される典型的スキームを考慮し、従業員は現在の仕事に留まる可能性が高くなる」と話しています。

また、モルガン・スタンレーのジェームス・ゴーマン CEO は、10月中旬の投資家との電話会議で、従業員8万人を擁するウォール街の企業で、ここ数か月で離職率低下を理由としたレイオフがあったと述べました。「本当に優秀な人材は世界中で求められているが、実際には逆の問題を抱えている」「当社は離職率が非常に低いため、経費を削減する取り組みを行ってきた」。

我々の感触としては、依然として人材採用や従業員の維持に苦労している企業がある一方で、労働市場が以前より軟化したことによって、空きポジションが徐々に埋まりつつある企業もあるようです。現在レイオフを実施しているのは超大企業ばかりですが、今後はこの流れが中堅・中小の企業にも波及する可能性があります。

このような状況を注視しつつ、企業は人事・労務管理の観点から如何に対処すべきか考えてみたいと思います。

もくじ

今、何が起きているのか

大企業の一部は既に離職率の急激な減少に直面しています。これは良いことにも思えますが、実際には高い離職率を前提に過剰採用したツケで、余剰人員の解雇を検討する事態に陥っています。にもかかわらず、従業員側は前述のウォール・ストリート・ジャーナルにあるように、転職後に景気が悪化すれば真先にレイオフ対象となることを危惧して、目先の給与アップ目的の転職を控え、現在の仕事を継続しているのです。

優秀な従業員を維持する

企業が人材採用を継続するか、低い離職率を維持するか、レイオフを開始するかなど、どの段階にあるかに関係なく、組織は常に優秀な従業員を維持し、そうでない従業員に改善を促し、時には解雇する必要もあります。このため、人事はさまざまな対策を継続的に実施することが重要となります。

1. 優秀な従業員を定義する
御社では優れた業績をあげた従業員を見極めるため、業績を正しく評価しているでしょうか?真に優秀な従業員が正当に評価される制度か、今一度、確認していただきたいと思います。各職種への期待値とその計測方法、評価項目や目標設定などの評価関連以外にもフィードバックや業績改善指導の方法など、評価者に対する研修も重要です。教科書通りではなく、自社にマッチした評価制度を構築することが現代の企業には求められています。

2. 勤怠を分析する
御社では従業員の出勤率を計算したことがあるでしょうか?米国労働統計局によると、米国の平均年間欠勤率は3.6%です。これは欠勤日数を一定期間内の労働日数で割り100を掛けることで求められます。たとえば、従業員が予定勤務日20日のうち1日を欠勤した場合、1/20 × 100で、欠勤率は5.0%になります。平均欠勤率は職業や業界によって異なりますが、2022年の平均欠勤率は2.1〜5.5%でした。もちろん、人生にはさまざまな問題が起こりますが、欠勤を分析することで対策を講じることができます。欠勤が同じ曜日や同時期に発生しているか、予定外の欠勤と予定された欠勤数を確認するなどが最もわかりやすい例です。予期せぬ欠勤はチームとビジネス全体に影響を与えます。これを避けるため、まずは状況を知り、対策を打ち出すことが必要です。

3. 昇給率データの%にだけ注目しない
勘違いも含めて、従業員は昇給が不公平であることに気づく場合があります。多くの企業が発表している昇給予算率を平均昇給率と考える方もいるようですが、これは全体予算の率であり、昇給率の平均%ではありません。人件費予算を評価に沿って設定することは、昇給金額そのものより重要です。予算の分配方法方には、下記のようなものがあります。

パフォーマンス評価昇給率
期待を上回る5%
期待に満たす4%
期待を下回る1%
表(1)

表(1)は、人事考課の結果を3段階に分けて昇給率を設定した、一般的なものです。各カテゴリに該当する人数によって、予算の分配が異なってきます。

パフォーマンス評価昇給率
期待を上回る4〜6%
期待に満たす3〜5%
期待を下回る0〜2%
表(2)

表(2)は、3段階に分けている点は表(1)と同じですが、各昇給率に幅を持たせています。同じ評価の従業員に差をつける理由は、下記の給与の社内公平性と関係があり、外部の給与相場とかけ離れている場合はそれを埋めるために調整します。

4. 給与の社内公平性を考慮する
昨今の急激な給与相場の上昇により、新しく採用された従業員の給与が以前から雇用されている従業員と同程度もしくは超えている場合があり、給与制度にひずみが出ている企業もあります。

表3は、企業の給与例である。以前から在籍している経理スタッフは給与相場の安い時に雇用され、徐々に昇給し、現在は年収$65,000支払われています。対して最近雇用されたアドミニストレーション・アシスタントは、採用に苦戦した結果、予定より20%高い年収$60,000で採用されました。一見、専門性のある経理スタッフの給与が高いので問題ないように見えますが、この給与は当該地域の賃金相場においてほぼ25パーセンタイルと下位に位置しているのに対し、アドミアシスタントの給与は90パーセンタイルとかなり上位に位置しています。これが給与の内部公平性が損なわれる可能性の高い例です。

このように、給与の内部公平性が維持されているか確認し、必要に応じ修正することで、従業員の不満を軽減し、優秀な従業員を維持することの一助となります。また、同時に給与差別による苦情リスクを軽減することも可能です。

人員削減に備える以上のように優秀な従業員から不満が出ないように制度を見直し、人員削減の必要が発生した場合は優秀な従業員を維持できるよう日頃から準備しておくことが重要です。組合がなければ、誰を解雇して誰を残すのかは会社の裁量で決まりますが、差別での訴訟というリスクを回避するために制度作り、証拠を作ることが切り札となります。

総合人事商社クレオコンサルティング
経営・人事コンサルタント 永岡卓さん

2004年、オハイオ州シンシナティで創業。北米での人事に関わる情報をお伝えします。企業の人事コンサルティング、人材派遣、人材教育、通訳・翻訳、北米進出企業のサポートに関しては、直接ご相談ください。
【公式サイト】 creo-usa.com
【メール】 info@creo-usa.com

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