ワシントン州認定ソーシャルワーカー
角谷 紀誉子さん
2019年3月15日付で、コンサルティングのサービスは終了しました。
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夫のことで相談があります。夫は世間では "いいひと" です。とくに親戚関係では絶大な評価を得ているようです。しかし、10年以上連れ添っている私からすると、自分がしてしまった許されないこと、例えば私に暴力を振るうもしくは振るうまねをして脅すといったことをしておきながら、それを指摘されると、完璧に否定する人です。100%していないと断言します。こちらとしては、何とか実際にはやったんだとわかってもらおうとするのですが(飲酒癖はありません)、「なにを馬鹿なことをいっているんだ。そんなことありえない」といった風で、まるでこちらがありもしないことをやったといって文句をつけているように、私がおかしいとでもいうように、あしらわれてしまいます。とても悲しく、夫が心配であると同時に自分が身代わりにされているような不安を感じます。どうすればいいのかわかりません。
回答:この文章から、あなたが混乱し、何をどう考えるべきなのかわからない状態であることが伺えます。あなたは、「どうすれば夫が暴力をふるったことを認めるのか」を知りたい一方で、「夫との結婚を続けるべきか」も悩んでいるようです。まず、あなたがしなければならないのは「あなたは」夫をどう思い、何を怖れ、どうしたいかを考えることです。結婚は外から見て良い・悪いではなく、結婚の中にいる人間だけが良い・悪いを決めることができます。夫が外では人に嫌われていても、あなたには優しく誠実な人であればいい結婚であるのと同じで、夫がいくら外ではいい人でも、あなたにはおそろしく不誠実であるのなら、それはいい結婚であるとは言えません。親戚も世間も「家の中」でカーッとなった時の彼を見たことはないのです。彼が他人の目がない場所でどんな態度をとるのかは、10年間にわたって夫婦として生活を共にしたあなただけが知っている事実です。
次に、あなたの結婚観を考えてください。「どんなことがあってもいったん結婚したら添い遂げること」を重視してきた人なら、特に今の状況を考え、結婚観や人生観を見直す必要があります。今は、添い遂げることが美徳である時代ではなく、不幸な結婚よりも幸福で平和な離婚が望まれる時代です。この際、結婚観や人生観を考え直してみる必要があります。
「夫が暴力を認め謝罪し、親戚に真実を話して改心する」というのがあなたが望みかもしれませんが、これは現実的ではありません。それは、彼は英語で言う “Denial”(否認)の状態にあるからです。通常、否認は大切な人が急死したり、火事で家が全焼した時など現実のショックがあまりにもひどい場合に、「これは起きなかったのだ」と脳が本人に思わせる現象です。もう少し微妙な否認には、家族が「あなたはアル中だ」と言っても、本人は「自分はアル中ではない、いつでも止めることができる」と言う、ギャンブルで大金を無くした人が「まだ大丈夫だ、取り戻せる」と言うなどの現象があります。あなたの夫はこの状態です。「自分は暴力なんてふるわない夫だ。現に親戚には絶大な信頼があるではないか」これが彼の現実なのです。暴力の証拠を警察や病院で公的に認めてもらわない限り、あなたの夫の否認は解けないでしょう。しかし、その前には、その後のあなたの住居や生活の目途がきちんと計画されていなければなりません。
最後に考えて欲しいのは、あなたを救うのはあなただけだということです。自分の心を直視し、どうしたいかをよく考えてください。勇気を持つこと、自分を信じること、人が言うことを気にしないこと、安全・平和をまず第一に考えること、将来に希望を持つこと、「情」と愛情を分けて考えることなどが、今のあなたには大切です。
掲載:2005年6月
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