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熊本特産イグサの畳製品で起業:シアトルでの社会人留学で始めた挑戦 『Kohaku』共同創業者・小田竜輝さん

ロサンゼルスの展示会場にて
写真:本人提供
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大学卒業後、東京の専門商社で約4年間、電子部品の輸出入や国内営業を担当していた小田竜輝(おだ・りゅうき)さん。グローバルなビジネスの現場で、日本企業と海外企業の間に立ち、交渉や文化の違いに向き合う日々を送りました。「この時に身につけた交渉力や多様な価値観への理解は、今のビジネスに大きく役立っています」と振り返ります。

学生時代から抱いていた「留学したい」という思いは、野球部での活動に打ち込んでいた学生時代はかないませんでしたが、社会人になり、将来的に物流の家業を継ぎ、海外展開を目指すという目標を見据えて、ついに実現しました。

目次

畳製品で世界に挑む──ブランド『Kohaku』の誕生

ビジネスイベントの様子
写真:本人提供

シアトルに来た直後からMeetup や Eventbrite を活用し、できるだけ多くのビジネスイベントに参加し、たくさんの起業家と出会うように積極的に動いていた小田さん。留学プログラムで、データの分析、ピッチやプレゼンを学びながら、そんな起業家たちの行動力に刺激を受け、自分でも事業を始めてみようと考えるようになりました。

そこで立ち上げたのが、故郷である熊本の伝統素材・イグサを使った畳製品のブランド『Kohaku』(こはく)。もともと日本の製品を海外に広めたいという漠然とした思いがあったため、海外市場でほとんど展開されていない畳に目を付けました。「市場自体が存在しないとも言えるかもしれませんが、まずは挑戦してみようと思い、事業を立ち上げたのです」

熊本県の畳職人との商品開発
写真:本人提供

原料となるイグサは、なんと日本の約95%が熊本県産。ところが畳文化の衰退や安価な輸入品の影響で、イグサ農家は最盛期の1万世帯から200世帯以下にまで減少しているのが現状です。「この状況を何とかしたい。畳の良さを海外に広めることで、地元熊本のイグサ農家や畳業界に貢献したいという思いが強くなりました」。

代表商品である「Tatami Zen Mat」は、ヨガや瞑想、ストレッチにも使えるマットで、イグサの香りがリラックス効果をもたらします。実際に製品を手にしてみると、細かいところまで丁寧に仕上げられているのに職人の誇りを感じました。

「Kohaku」という名前は、商品の完成当初は緑色のイグサが、少しずつ色を変えて琥珀色になっていくことにちなんでいます。「畳職人の方が “琥珀” と表現していたことに、なるほどと思って社名にしました」

起業家としての第一歩は、ヨガ展示会出展から

ロサンゼルスで開催された全米最大のヨガイベント「The Yoga Expo」での展示ブース
写真:本人提供

起業してからシアトルの雑貨専門店やセレクトショップと交渉して商品を置いてもらうようになりましたが、大きな一歩として実現したのは、2025年4月にはロサンゼルスで開催された全米最大のヨガイベント「The Yoga Expo」への出展。来場者からは「ビューティフル!」「バンブーかと思った!」など新鮮な反応が続出しました。

また、実際にマットを広げて座ってもらったり、寝転んでもらったりして、感触を体験してもらうことに。「畳の存在を知らない人がほとんどでしたが、それだけに驚きも大きく、手に取ってもらえる喜びがありました」

日本人には馴染み深いイグサの香りは、森林浴の際に感じる香りと同じ成分である「フィトンチッド」を含んでいるため、イグサのマットの上で座っているだけでもリラックス効果や安眠効果が期待できるそう。展示会場では好みが分かれたものの、「この香りに癒される」という声も多く、販売や人脈形成にもつながったといいます。

マーケティング面でも、インスタグラムでのインフルエンサーとのコラボやGoogle広告、シアトル市内の雑貨店やヨガスタジオへの営業など、地道な努力を重ねています。

社会人留学という選択──自分の未来に投資する

ワシントン大学での最後の授業
写真:本人提供

小田さんが選んだ留学プログラムは、ワシントン大学の社会人向けプログラム「IBP(International Business Professions)」。ちょうどそのタイミングで新設された「Business Intelligence for Global Entrepreneurship」コースに惹かれて留学を決めたそうですが、「起業や語学力の向上を目的にしていた自分にとって、最適なプログラムでした」とのこと。

「今、家業には英語を使える人材がいないこともあり、僕自身がその役割を担う必要があります。また、自己資金で留学して、将来は家業に入るので、MBAよりも実践的で、費用対効果も現実的であることが重要でした」

また、普段から英語を使う生活も効果を感じているそう。「ホストファミリーと住んでいるので普段から英語を使っていますが、ローカルの野球チームに参加したり、現地の友人と過ごす時間を大切にしたりして、自然な会話を通じて語学力を高めています」

シアトルで感じた驚きと気づき

シアトルに来て驚いたのは、ITエンジニアの多さや生活費の高さ、そして意外なほどの人の温かさ。道ですれ違うだけでもニコッとすることに、日本との文化の違いを感じる一方、「こうした何気ない人とのふれあいに元気をもらっています」と語ります。

「12月の帰国まで、Kohakuの製品をもっと広めていきたい。そして将来的には、シアトルでビジネスを展開したいと本気で考えています」

熊本のイグサ農家や畳職人たちの想いも背負いながら、世界に向けて畳文化を発信する小田さんの挑戦は、まだ始まったばかりです。

Kohaku 公式サイト:https://kohakumats.com/
公式インスタグラム:https://www.instagram.com/kohaku_mats

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