19歳でハンドモデルとしてのキャリアをスタートさせ、東京、そしてニューヨークと世界の第一線で活躍してきた永瀬まりさん。2025年にシアトルを拠点にハンドケアブランド『TAKE MY HAND(テイクマイハンド)』を立ち上げ、初めてのビジネスを展開しています。
ブランドの立ち上げと商品開発への妥協なきこだわり、そして「自分自身の人生を生きる」ことへの強い願いについてお話を伺いました。
聞き手:オオノタクミ
ハンドモデルとしての思いを形に

ニューヨークでの撮影現場の一コマ
19歳でハンドモデルの世界に入り、これまで150本以上のTVCMに出演してきました。もともと物事を突き詰めて考えるタイプだったので、20代の頃から「モデルとしてのキャリアを活かせる次の夢」を準備しておこうと考えていましたが、その一つが、自分のブランドを持つことでした。
日米で日々ハンドケアの相談を受ける中で、多くの方が手を隠しながら「シワがあって恥ずかしい」「見せられない」と口にされました。私への謙遜もあるのかもしれませんが、手は一番酷使するパーツでありながら、綺麗でありたいと願う葛藤がある。そこでの気づきを形にしたいと考えたのが、『TAKE MY HAND』の立ち上げの原点です。
シアトルで感じた孤独、そして見失った「自分」

©︎Kanji Ishii
ブランドの準備を始めた時期は、結婚、妊娠、そしてシアトルへの移住が重なった、人生で最も激動の時期でした。でも、見知らぬ土地での初めての育児は、想像以上に孤独なものでした。
シアトルには、私が必死で積み上げてきたハンドモデルとしての私を知る人は誰もいませんでした。どこへ行っても「赤ちゃんのお母さん」としてしか見られない。自分の個性が消滅してしまったような感覚になり、産後半年ほどは明るい気持ちになれませんでした。
いろいろ考えるうち、ふと、「誰のためでもない、自分の人生の主人公は自分なんだ」と気づきました。ブランド名の『TAKE MY HAND(私の手を引いて)』には、その時の想いを込めています。たとえ自分を見失うことがあっても、勇気を出して進んでみる。そこからまた新しい物語が始まってほしい。そんな願いを込めたメッセージでもあります。
日本の職人技とニューヨークの感性の融合

©︎Kumiko Tabata
とはいえ、商品開発の実績がなかった個人を相手にしてくれる工場を探すところからのスタートでした。最初は悔しい思いもしましたが、妥協だけはしたくなかったので、さまざまな会社に問い合わせ、ようやく、北海道に請け負ってくださる会社が見つかりました。
そこから製品開発に3年という月日を費やしました。材料については、ラボ側から価格などを理由に妥協した方がいいのではと提案されたこともありましたが、ハンドモデルのプロとして半端なものは絶対に出せません。99%以上がナチュラル成分で、バクチオールなどの高級成分を惜しみなく配合し、精油の香り一つにも自分自身の感性を反映させたい。最後には、ラボの方々も身内のような気持ちで一緒に作り上げてくださいました。

パッケージは日本の商品と比べるとシンプルです。日本の商品は情報量が多く、成分の説明がパッケージに溢れていますが、アメリカはビジュアルの格好良さや雰囲気で直感的に伝える文化。その両方を融合させたくて、あえて文字情報を削ぎ落とした、大人かわいい水色のパッケージにこだわりました。
表参道でのお披露目会と、つながる信頼

ブランドのローンチに際し、東京・表参道で発表会を開催しました。「ハンドクリーム1本でここまでの規模のイベントをやるのは珍しい」と驚かれましたが、この1本に全ての情熱を注いできたからこそ、胸を張ってお披露目できました。
当日は、製品に関わってくれたラボの職人さんや調香師さんも駆けつけてくれました。皆さんが「一緒にこのブランドを大きくしていこう」と思ってくれているのを感じ、一人ではないのだと強く実感した瞬間でした。
そんな情熱を感じ取ってくださり、「応援したい」と言葉をかけてくれる方もいらっしゃいました。
親になったことが教えてくれたバランス
かつては完璧主義で、東京で結果を出せば次はニューヨークへ…と、自分を厳しく追い込み続けていました。でも、今は家族がいますから、24時間体制で働いていた独身時代とは違います。
最初は戸惑いもありましたが、家族がいるおかげで集中しすぎず、いい意味で肩の力を抜けるようになりました。うまくバランスが取れるようになった今の方が、人生の質としてはずっといい。元気でよくおしゃべりする息子のエネルギーに圧倒されつつ、そんな日常に救われています(笑)。
今日からできる、プロのハンドケア習慣

最後に、日常で取り入れられる「一生モノの手」を育てる秘訣を。
- 油分を奪わない: 食器用洗剤は手が荒れる最大の原因です。できれば直接触らず、必ずゴム手袋を着用してください。
- 摩擦は厳禁: 手をタオルでゴシゴシ擦るのもシワの原因になります。クリームを塗る時も、皮膚を引っ張らずに、顔と同じように優しく包み込むように馴染ませるのが正解です。
- 物理的に守る:私は今もハンドモデルとして仕事をしているので、外に出る時は必ず日焼け止めと黒い手袋、さらに手もカバーするアームカバーで徹底的に遮光します。
手やネイルがきれいだと、心が弾みます。忙しい毎日の中でも、このハンドクリームを通して自分を労わる時間を持ち、今日より明日、少しだけ自信を持って新しい一歩を踏み出すきっかけになれたら、これほど嬉しいことはありません。
永瀬まり 略歴
19歳でハンドモデルとしてのキャリアをスタートし、日米合わせて150本以上のTV CMに出演。2016年に渡米し、わずか半年で Tiffany & Co.のワールドキャンペーンに抜擢される。結婚、妊娠、そしてシアトルへの移住と大きな変化を経験しながら、独自ブランド『TAKE MY HAND』を起業し、2025年に最初の商品であるハンドクリームを発売。現在は、ハンドモデルとしてのキャリアと商品開発、育児に勤しんでいる。
公式サイト:www.tmhbeauty.com
公式インスタグラム:@tmhbeautycom
聞き手:オオノタクミ

