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第51回 三冊のノート

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7月 X 日 (娘のノート)

パラパラと雨が降るシアトル。そこから、セミがミーンミーンとなく日本へと、やって来ました。緑にあふれるちどりがふち(母の注釈:「千鳥ヶ淵」のこと)のすぐ近くに住むことになりました。やがて、春になりました。日本で一番いい季節だと思います。ちどりがふちは、何千本もの桜の木に囲まれ、美しい季節になるのです。全国から、そして外国から観光客がやってきます。風に飛ばされる桜が、空中に広がり、みんなが笑顔になることができます。ボートに乗るのは特に人気があり、1時間も待って乗る人もいます。ワシントン大学のキャンパスの桜も、確かにきれいです。ただし、ちどりがふちにはかないません。こんな地域に、私はめぐまれてくらしています。(中略)

私は、日本の学校に通っています。アメリカの学校と違うところが、二つ見つかりました。一つ目は、そうじです。アメリカの学校では、大人がそうじをするけれど、日本では生徒がします。グループごとに黒板消し、そうきん、つくえ、たななどに分かれて、15分間ぐらい、そうじを行います。二つ目は、委員会です。アメリカでは、聞いたこともないことです。放送、集会、しいく、さいばいなど、いろいろな委員会があります。自分の委員会で活動することにより、学校のために仕事をします。もっといい学校にするために、委員会活動があります。この二つは、アメリカでは信じられないほど、めずらしいと思います。こんなにいろいろなことを体験できて、とてもうれしいです。

母の注釈:息子の文章とは対照的である。彼より3歳年下の分、環境順応力もぐんと高いと見える娘は、「おしゃま」という言葉が似つかわしい5年生になった。放送委員会でアナウンスをし、科学クラブで実験に興じ、休み時間には女の子数人のグループでキャッキャッとはしゃいでいる。喋り方もすっかり東京っ子ぽくなり(「だってさあ!」「そんなこと、言ってないしぃ!」)、未だ関西弁のアクセントが抜けず、東京人にはなり切れない(なろうという気もない)母を苦笑させる。

北海道大学植物園の緑に囲まれ、バイオリンの練習

北海道大学植物園の緑に囲まれ、バイオリンの練習

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