経済分析会社 Tourism Economics(Oxford Economics 傘下) の最新予測によると、2025年の米国全体の国際宿泊客数は前年比8.2%減少する見通しです。
この減少の背景には、貿易摩擦や入国規制、渡航警告などがあり、米国に旅行する意欲の低下につながっていると指摘されています。
米国全体で続く国際観光の減速
主な動向は以下の通りです。
- カナダからの訪問:前年比23.7%減(陸路は-28.0%で4カ月連続30%超の減少、航空便は-13.3%)
- 外国市場全体:前年比1.2%減
減少幅が大きい国:エクアドル(-16.2%)、韓国(-11.2%)、ドイツ(-9.6%)、フランス(-8.0%)
増加した国:アルゼンチン(+22.8%)、イタリア(+8.8%)、台湾(+8.0%)、日本(+3.9%)、中国(+2.6%) - 外国からの訪問者数は2025年も2019年比で15%下回る見込み
カナダからの訪問者に依存度が高い都市は特に影響が大きく、シアトル(-26.9%)、ポートランド(-18.3%)、デトロイト(-17.3%)などで大きな減少が見られます。
シアトルは主要都市で最大の減少幅

シアトルでは、2025年の国際宿泊客数が前年比約27%減少すると予測されており、これは米国主要都市の中で最も大きな落ち込みとなります。Tourism Economics やシアトル市の Seattle Office of Economic and Revenue Forecast によると、最大の要因はカナダからの訪問者が大幅に減少していることです。
シアトルの財政への影響
シアトル市の発表によると、市の売上税収入は、レジャー・ホスピタリティ分野への依存度が高く、観光の減少は財政に直結します。2023年後半以降、観光関連分野からの売上税収の伸びは弱く、減少が長期化すれば財政運営への影響は避けられません。
- 2023年実績:3億3,990万ドル
- 2024年実績:3億4,040万ドル
- 2025年予測:3億4,470万ドル(前年比+1.26%)
- 予算赤字:約1億4,300万ドル
回復の見通しと追い風
シアトル市によると、2026年には国際宿泊客数が増加に転じると予想されていますが、完全な回復は2028年の見込みです。
- 2016年:宿泊観光客 約900万人
- 2024年総訪問者数:4,000万人(前年比+5.3%)、州・地方税収は8億3,900万ドル(Visit Seattle)
- 2026年予測:宿泊観光客 約1,000万人
FIFA ワールドカップ開催による訪問者増加の予想

©︎ City of Seattle
2026年にはシアトルでもFIFAワールドカップの試合が6試合開催される予定で、約40万〜75万人の追加訪問者が見込まれています。
6月15日(土)グループステージ
6月19日(水)USAグループステージ アメリカ代表第2戦
6月24日(月)グループステージ
6月26日(水)グループステージ
7月1日(月)ラウンド32
7月6日(土)ラウンド16

まとめ
2025年の米国全体の国際訪問者数は、依然としてパンデミック前(2019年)比で15%減少すると予測されています。 Tourism Economics は July 2025 Inbound Outlook の中で、カナダ市場への依存度が高い都市ほど打撃が大きい一方、アルゼンチン、イタリア、台湾、日本、中国などからの旅行者は増加傾向にあり、市場の多様化が今後の回復に向けて重要だと指摘しています。さらに、シアトル経済予測局は2026年度の予算編成に向け、2025年10月に最新の観光・経済予測を発表する予定です。