鳥インフルエンザの拡大が続くアメリカでは、卵の供給が減少し、価格が上昇し続けています。米国労働統計局(BLS)のデータによると、2023年10月から2024年11月の12ヶ月間で卵の平均価格は約38%も上昇しました。2024年11月時点で12個入り卵の平均価格は3.65ドルに達し、10月の3.37ドル、さらに前年11月の2.14ドルからも大幅に値上がりしています。卵が品切れになっている状況に直面することも少なくありません。
地域によって異なる卵の価格
米国農務省農業マーケティングサービス(USDA AMS)の1月10日付の報告によると、3.65ドルという価格はあくまで平均値です。
ニューヨーク市場での大きめのカートン入り殻付き卵の小売店向け卸売価格は、1ダースあたり0.19ドル上昇して6.25ドルとなりました。主要な中西部の生産地域では、大きめの白い殻付き卵の倉庫向け卸売価格が0.16ドル上昇して1ダースあたり5.91ドル、また、生産者に支払われる大きめのカートン入り殻付き卵の価格も0.15ドル上昇し、1ダースあたり5.87ドルとなっています。カリフォルニア州の基準価格は変動せず、1ダースあたり8.97ドル。一方で、カリフォルニア州の基準を満たしたバラ売り卵の卸売価格は0.47ドル上昇し、1ダースあたり8.04ドルとなりました。
高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)の大流行
この値上がりの背景には、2020年にヨーロッパで始まり、2022年にアメリカでも始まった高病原性鳥インフルエンザ(avian influenza:HPAI)の大流行があります。
CDC(疾病予防管理センター)によると、高病原性鳥インフルエンザウイルスは非常に感染性が高いウイルスで、2022年1月から現在までに全米50州とワシントン D.C. で1億3,000万羽以上が処分される、米国史上最大の鳥インフルエンザウイルスのアウトブレイクとなりました。
動植物の健康保護を通じて農業を支援する米国農務省の動植物検疫局(U.S. Department of Agriculture’s Animal and Plant Health Inspection Service, APHIS)の公式サイトでは、これまでに殺処分された鳥類の個体数が公開されていますが、それによると、これまでに影響を受けた産卵鶏は9,850万羽以上になります。アウトブレイクが発生すると、卵生産者は感染拡大を防ぐため、鶏を処分せざるを得なくなり、市場に供給される卵の量が減少します。
NerdWallet.com は、卵の価格は生産者が卵の生産水準を回復するまで不安定な状態が続くと予想しています。昨年10月以降もアリゾナ、カリフォルニア、アイオワ、オハイオ、オレゴン、ユタ、ワシントンを含む7つの州で複数のアウトブレイクが発生し、国内の産卵鶏3億1200万羽の約7%にあたる2100万羽以上の産卵鶏が10月から12月の3ヶ月間で失われています(米国農務省)。
ケージフリー卵の供給不足
また、NerdWallet.com によると、ケージフリー卵(cage-free egg)の供給不足が拡大していると指摘しています。これは、動物福祉を理由に、ワシントン州やカリフォルニア州など8つの州で従来型卵の生産を禁止する新しい法律が施行されたことが、鳥インフルエンザの大流行に重なっているためです。
ケージフリー鶏は全米の卵産業の3分の1を占めるものの、現時点で鳥インフルエンザ感染の60%近くを占ています。この影響で供給が減少し、価格が高騰しています。また、厳しい規制がある地域では、基準に適合する供給業者の確保が難しく、価格上昇や品薄が生じています。
アメリカの典型的な朝ご飯にはオムレツや目玉焼きなど卵を使ったメニューが多く、また、日本食にも卵は欠かせない食材となっていますが、そんな身近な卵が高級食材となってしまっているのが現状です。