アメリカの交通ルールは、日本と大きく異なる点が多く、特に初めて運転する方は戸惑いやすいものです。この記事では、ワシントン州の交通法規をベースに、日本人が混乱しやすい17の交通ルールを詳しく解説します。米国全土で共通のルールもあれば、州によって異なる場合もあるため、必ず現地の法律を確認してください。
1. 基本中の基本 ー アメリカは右側通行

アメリカは右側通行です。「わかってるよ!」という声が聞こえてきそうですが、左側通行の日本などから来て運転していて「交差点を曲がったときに間違って左側に行ってしまいそうになった!」という話を耳にします。うっかり左側に入らないよう注意しましょう。
2. シートベルトは全員着用が義務

ワシントン州では、運転席・助手席・後部座席を問わず、すべての座席でシートベルトの着用が法律で義務付けられています。違反した場合、着用していなかった本人が罰金を支払うことになります。
- 短距離の移動でも必ず着用
- 後部座席でも着用義務あり
- 罰金は州や市によって異なる
3. チャイルドシート・ブースターシートは年齢と体格に応じて使用
子どもを乗せる場合、年齢・体重・身長に応じたチャイルドシートやブースターシートを使用する義務があります。これは単なる推奨ではなく法律です。詳しい基準や設置方法は州のガイドラインを確認してください。

4.「ながら運転」は厳禁!罰金と保険料に影響

ワシントン州では停車中でも携帯電話を手に持って操作するのは違法。初回違反は136ドル以上、5年以内の再反は234ドル以上の罰金です。
- 初回の違反に対しては、$136以上の罰金が課されます。
- 5年以内にもう1回違反が確認された場合は、$234以上の罰金が課されます。
- 運転中に身だしなみを整える、喫煙する、食事をする、読書をするなどの行為が安全運転の妨げになり、他の交通違反が確認された場合は、$99の罰金が課されることもあります。
「ながら運転」は英語で “destructed driving” といいます。”destructed” とは「集中していない」「注意散漫な」という意味です。
5. 自転車&オートバイと安全に道路を共有するルール

「常に車が優先」ではなく、バスやモーターサイクル(オートバイ)、自転車と道路を共有する必要があります。追い越す際は最低3フィート(91cm)の間隔を空けなくてはなりません。路肩や自転車レーンの違いも理解しておきましょう。
- ワシントン州では2020年から車でサイクリストを追い越す時は最低3フィート(91cm)の間隔を空けることが義務付けられています。違反が認められた場合は、ドライバーに罰金が科されます。
- 車道の右側の白線の内側は、バス専用車線(bus only)または自転車専用車線(bike lane)でない場合、「路肩」(shoulder)です。
- 路肩は自動車もモーターサイクルも自転車も走ってはいけません。
- 自転車やモーターサイクルは、車には影響のない、またはドライバーは気づかない、段差や危険物を避けるために、シフトダウンやウィービングをしなければならないことがあります。
- 自転車やオートバイ(モーターサイクル)は、車と比べると小さく、視界に入りづらいなど、安全面で独特の問題があります。交差点で左折・右折する前など、特によく確認しましょう。
National Safety Council によると、2022年に自転車に乗っていて死亡した人は1360人。そのうち928人が自動車との衝突事故で、432人がその他の事故で亡くなりました。死亡者の87%が男性で、女性の8倍以上に上ります。
6. ヘッドライトは日中でも点けてOK
ワシントン州では、日没の30分後以内、または日の出の30分前にはヘッドライトを点けることが法律で義務付けられています。雨や霧などの時は特に、自分が前方や周囲をよく見えるようにし、対向車線・周囲のドライバー・歩行者に自分の車がよく見えるようにしましょう。
ワシントン州は秋から冬にかけて日照時間が短く(冬至では日照時間は午前8時から午後4時までの約8時間となります)、曇りがちで雨や霧などで視界が悪い状況で運転する日が多くなります。なので、日中でも安全のためにヘッドライトをつけたまま運転しても、なんの問題もありません。
- 交差点で信号待ちする時、「対向車線のドライバーがまぶしいだろう」とヘッドライトを消すことはしません。逆に怪しまれるか、ヘッドライトをつけ忘れていると誤解される可能性があります。
- 対向車線のドライバーに何らかの合図を送る(前方に事故発生、警察が待機しているなど)ために、走行中にヘッドライトを素早く点滅させること(日本でいう「パッシング」)こともあります。そういうことをされた場合は、自分がヘッドライトをつけ忘れていないか、前方に事故が発生していないかなど確認するのがおすすめです。
- ハザードランプ(hazard lights)やクラクション(car horn)は、周囲のドライバーに緊急事態や危険を伝え、注意を引くために使うもので、それ以外の目的で使うのは誤解されるかもしれません。お礼を伝えたいときは、片手をあげたりするのもおすすめです。
7. 赤信号で「右折禁止」の場合

たいていの交差点は赤信号でも完全に停車して安全を確認すれば右折することができますが、赤信号で右折してはいけない交差点もあります。それは、上の写真のように、信号の横に『NO TURN ON RED』(赤信号では右折禁止)という標識がある場合です。
自分の前にいるドライバーが赤信号で右折しないからとイライラしたり、クラクションを鳴らしたり(honking)する前に、前方の信号の横に『NO TURN ON RED』の標識がないかどうか確認しましょう。
シアトル市内の中心部では車が歩行者やサイクリストをはねる事故が多いことから、赤信号での右折が禁止されている交差点が増えています。これに気づかないで赤信号で右折したところを警察が目撃した場合、違反チケットを切られて罰金を課されることがあります。
右折や左折をする時は、曲がる角に一番近い車線、そして右折や左折しても良い車線を使います。

8. 信号のない横断歩道は歩行者優先

アメリカでは、信号のない横断歩道や交差点では、歩行者を優先します。信号のある交差点で右折や左折をする時も、歩行者や自転車がいないか十分に確認しましょう。
9. 道路標示(白線・黄線)の意味
道路の端にある白色の実線(sold white lines):白色の実線は、双方向道路の両端、一方通行道路の右端、および自転車レーンを他の交通と分けるために使用されます。下の写真の場合、白色の実線の右側は「路肩」(shoulder)です。

道路の端にある白色の実線は、道路の端、路肩を示すものです。自転車レーンではありません。
車線の間にある白色の実線:車線と車線の間に白色の実線がある場合は、特別な状況がない限り、他の車線に入らないようにします。
白色の破線(dashed white lines):車線の間の白色の破線は、安全であれば車線変更ができるという意味です。
黄色の実線(solid yellow lines):双方向道路の中央にある黄色の実線は、センターラインです。上の写真のように二重の黄色い実線であれば追い越し禁止を意味します。下の写真のように自分の側が破線であれば、安全を確認した上で、対向車線に出て追い越すことが可能です。追い越してはいけない場合、『NO PASSING ZONE』という標識がある場合があります。

前の車を追い越したい場合、自分の側が破線なので、安全を確認した上で、対向車線に出て追い越すことが可能です。
道路の端にある白色の実線は、道路の端、路肩を示すものです。自転車レーンではありません。
10. 左折専用車線(Turning Lane)の使い方

広い道路では、真ん中に左折専用車線(turning lane)があります。黄色の実線と破線の囲まれた中央分離帯のような車線に入り、対向車線の車がなければ左折できます。ただし、この車線は対向車線から左折する車も入ってくるので、うまく対応する必要があります。
11. ALL WAY STOP(全車一時停止)は先着順

日本から来て「わかりづらい」と言われることが多いのが、全車一時停止を意味する「ALL WAY STOP」。交差点で一時停止し、先に交差点に到着した車から順に進みます。
「STOP」という標識:「一時停止」という意味。一時停止し、先着車がすべて動いたら、安全を確認した上で速やかに進みましょう。先着車がいなくなったのに他の車に譲っていると、後続車にクラクションを鳴らされたり、譲られた側のドライバーを困惑させたりすることに。
複数の車が同時に交差点に到着した場合:どの車が優先されるかは、状況によって異なってきます。一番右にいる車が優先される(right of way)のが基本ですが、歩行者がいる、直進か、曲がるのかなどによって異なります。「rules of four-way stops」などと検索してみると、英語での解説がオンラインにたくさん見つかるのは、それほど混乱する人が多いという証でもあります。
また、「STOP All Way」と書いてある場合が多いですが、交差点では「STOP 4-WAY」、T字路では「STOP 3-WAY」と書かれていることもあります。また、「STOP 2-WAY」と書かれていたら、完全停止が必要なのは標識が立っている2方向のみ。残る2方向は停まらずに通過します。
赤信号が点滅している交差点は、ALL WAY STOP と同じ扱いになります。停電などで信号が点いていない時も同じです。
12. YIELD では相手を優先

YIELD(「譲れ」という意味)の標識があるところでは、自分が合流する車線を走っている車を優先します。標識の手前で徐行、または停止し、安全を確かめてから合流します。
13. ラウンドアバウトは反時計回り

左手から別の車が来ないのを確認してから、ラウンドアバウトに進入する
中央に設けられた円形のスペースを取り巻く環状道路に、3本以上の道路を接続したものをroundabout(カタカナではラウンドアバウトが一般的)と言います。アメリカは右側通行のため反時計回り。進入時は方向指示器不要、退出時に右シグナル(ウィンカー)を出します。
- 車が来ていなければ、止まらずに進んでよい。
- 車が来ていないのに停止すると、後続車に追突される可能性あり。
- 合流される車線を走っているドライバーは、そのまま通行します。合流してくる車を優先してあげようと勝手に決めて停止したり減速したりすると、後続車に追突される可能性あり。
- ワシントン州運輸省は「ラウンドアバウト進入時は方向指示器を出す必要はなく、出る直前に右の方向指示器を出す」と説明しています。
ウィンカーは、英語では turn indicators、または turn signal といいます。日常会話では、signal と言うことが多いです。
14. KEEP CLEAR の上で停車しない

交差点や指定エリアで KEEP CLEAR と書かれている場合、「この部分で停車してはいけない」という意味です。
向こう側に渡りたくてこの部分に入ってしまい、信号が赤になって渡りきれなくなった・・・なんてことになると大ブーイングで、罰金が課されることがあります。
15. スクールバスに遭遇した場合&スクールゾーンに注意

スクールバスでなくても追い越し禁止。
登下校の時間帯に運転していると、スクールバスに遭遇することがあります。スクールバスが赤い「STOP」のサインを出したら、中央分離帯がある反対車線を除き、停車しなければなりません。違反は高額罰金対象です。詳細は下記をご覧ください。

また、学校の周辺地域はスクールゾーンに指定されているところが多く、速度違反の取り締まりは監視カメラを使用して実施されています。監視カメラでライセンスプレート(日本でいうナンバープレート)の写真を撮影され、後から違反と罰金の通知が来ることもあります。

16. 緊急車両が来たらどうする?
消防車や救急車、警察車両など緊急車両のサイレンが聞こえたら、道路脇に寄って停車します。中央分離帯があっても原則停車します。(Move Over Law)。
17. 追い越し車線/HOV/CARPOOL LANE

追い越し車線:日本でも高速道路で追い越し車線があるように、アメリカでは一番左側(HOVレーンを除く)は追い越し車線です。この車線をゆっくり走っていると、後ろからクラクションを鳴らされたり、短気なドライバーにあおられたりすることがあります。
エクスプレス・レーン:シアトル地域を南北に走る I-5とレイク・ワシントンの東西を結ぶ I-90では、エクスプレス・レーンと呼ばれる優先車線を時間帯によって南行きと北行き、西行きと東行きで交替して使用することになっています。エクスプレス・レーンについてはこちら。
HOV/Carpool Lane:渋滞緩和の目的で2人以上、または3人以上乗車してる車の優先車線を、HOV(High Occupancy Vehicle Lane)または Carpool Lane(相乗りしている車専用車線)と言います。利用するのに必要な人数が書かれた標識をチェックしましょう。I-405 のベルビュー市とリンウッド市の区間は、1~2人しか乗っていない場合、月~金の午前5時から午後7時までは有料になります(3人以上は無料。この時間帯以外は、人数に関係なく無料)。詳しくはこちら。

左側に設置されている標識には、次のように書かれています。
HOV
VIOLATORS
MAXIMUM
$536 FINE
HOV の規則に違反すると、最大で536ドルの罰金が科される可能性があります。
その他に知っておくべきルール
- 消火栓4フィートルール – 消火栓から4フィート(約1.2m)以内は駐車禁止
- 駐車方向 – 進行方向に合わせて駐車。逆向き駐車は違反
- フリーウェイ合流 – 合流側が加速、本線側は速度を保つ
- 車間距離2秒ルール – 高速では最低2秒、悪天候時はさらに延長
- ハンドシグナル – ウィンカー故障や自転車運転時に使用