前回は、構音障害と第2言語による発音アクセントの違いについてお話しさせていただきました。今回は、第2言語による発音アクセントに焦点を絞ってお話ししていきたいと思います。
アクセントは、子音母音といった英語に含まれるそれぞれの音に関するものと、リズム、ストレス、イントネーションといった音声学的特徴に関するものの二つに大別して考えることができます。
英語に含まれる音について
1. 子音:日本人に多い子音の誤りは以下のようなものがあります。
1-1. R と L:
R と L を入れ替えて発音(”gorilla” を “golira” と発音)、D や W に近い音として発音(”rain” を “dain” に近い音で発音)
1-2. TH:
有声音 TH は D(”this” を “dis” と発音)、無声音 TH は S (”south” を “sous” と発音)
1-3. F と V:
F は H (”telephone” を “telehone”)、V を B (”vacation” を “bacaton”)
1-4. 連続子音(consonant clusters):
“ring” に含まれる “ng”、”street” に含まれる “str” のように子音が2~3個続く場合、その中に含まれる子音を省略(”ring” を “rin” と発音)あるいは母音を挿入して発音(”street” を “sutoreet” と発音)
2. 母音:日本語の母音数は5つですが、方言による違いはあるものの、一般的な英語には約20の母音が含まれます。上記のような子音の誤りに比べて見落としがちな母音の誤りですが、誤った母音の発音のために別の意味で伝わってしまうこともあります。代表的な誤りは以下のとおりです。
2-1. “bat” を “but” のように発音したり “sit” を “seat” と発音するなど、単語内の母音を他の似た母音に置き換えて発音
2-2. 二重母音:”late” に含まれる “ei” という二重母音を「エー」と発音する等
2-3. R 音性母音(vocalic R):後に R が続く場合の母音の発音ですが、”dinner” に含まれる “er” のほか、”car” に含まれる “ar”、”millionaire” に含まれる “air”、”fire” に含まれる “ire”、” beard” に含まれる “ear”、”storm” に含まれる “or” など、それぞれ異なった発音方法をするので要注意です。
音声学的特徴について
実は、日本語と英語の違いは、上記のような音の違いだけではありません。英語では強調する意味を持つ単語を他の単語に比べて長めに発音するといったようなリズムがあります。たとえば、”It takes about 10 hours to fly from Portland to Tokyo, Japan.” という文では、他の単語に比べ、より重要な意味を伝える太字の単語を長めに強調して言うのが一般的です。
また、単語内でのストレス(dictionary では第1音節にアクセント)の置き方、疑問文では語尾を上げて言うといったようなイントネーション(音の高低)という英語の言語的特徴を理解することも、英語らしく発音するには大事なことです。
以上、日本人に多いアクセントについてご説明いたしました。上記のような英語に含まれる音および英語の音声的特徴を練習し、日本語アクセントをなくし、より英語らしい発音に近づけていくことを “accent modification” あるいは “accent reduction” といいます。
“accent modification” あるいは “accent reduction” のクラスでは、通常、まず、もうすでにできている発音と矯正が必要な発音の評価が実施され、その評価結果をもとに、よりネイティブ・スピーカーに近い話し方ができるように系統的に練習しながら、日本語を話す時とは異なる発声発語器官の動きを習得していきます。
これは車の運転の練習を始めた時に例えられますが、ブレーキやアクセル、ハンドル、ウィンカーなどを巧みに操りながら道路や周囲の状況にも注意を払うというマルチタスクをこなせるようになるには、日々の努力と注意力、そして練習を継続していくことが必要です。発音練習も同様、日々の努力とアクセントに注意を向けることを継続していくことで、ネイティブ・スピーカーに近い発音ができるようになるのです。
次回は、子供の発育に関する話題に戻り、絵本と言語発達の関係についてお話ししたいと思います。
情報提供:言語聴覚士 鈴木 美佐子さん