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スピーチ・セラピー 第7回「構音の誤りと第2言語による発音アクセントの違い」

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第2回のコラムの中で構音障害についてお話いたしましたが、今回はそのスピーチ・セラピーの対象となる構音の誤りと第2言語による発音アクセントの違いについてお話ししたいと思います。

まず、構音についてですが、子供は発達とともに徐々にはっきりと発音できるようになっていきます。言葉に含まれる音の獲得には順序性があります。たとえば、2歳前後までに唇を使う音(パ行・バ行・マ行)、3歳前後で舌の先を使う音(タ行・ダ行・ナ行)や舌の奥を使う音(カ行・ガ行)を正しく発音できるようになり、5歳から6歳になるとサ行・ザ行・ラ行も発音できるようになるのが一般的です。一定の年齢を過ぎても特定の音をうまく発音できない場合、スピーチ・セラピーの対象となる構音の誤りである可能性があります。構音の誤りは以下の3つに大別できます。

置換:
目的音を他の音に置き換えて発音してしまう場合。サ行をタ行、カ行をタ行で発音する場合など。

省略:
「ひこうき」を「いこうき」「テレビ」を「テエビ」など音の一部を省略して発音する場合。

歪み:
息が鼻から漏れてしまったり、唇の側方から漏れてしまうために音が歪んでしまう場合。

上記のような誤りが一定の年齢を過ぎても続いてしまう場合は自然に治る可能性は低く、他の子供にからかわれたり誤解されてしまう原因にもなりうるため、スピーチ・セラピーによる改善が望まれます。一方、第2言語による発音アクセントは、日本語の方言と同じように考えることができます。地方出身のアナウンサーなど共通語を練習する必要がある人もいるでしょう。同様に、仕事などの社会的理由によりアクセントを矯正したいと望む場合、”Accent Modification”、あるいは “Accent Reduction” と呼ばれる専門サービスを提供しているスピーチ・ランゲージ・パソロジストを探すとよいでしょう。

では、上記のような構音の誤りと第2言語による発音アクセントの違いは何でしょうか。

構音の誤りとは、母国語に含まれる言語音を正しく発音できない状態であることに対し、発音アクセントとは、母国語のアクセントの影響を受けて第2言語を使う場合を指します。例をあげて具体的に見ていきましょう。

スピーチ・セラピーの対象となる構音の誤りの例:
カ行がうまく言えず、「かに」を「たに」、「こわい」を「とわい」と発音する。英語を話している場面では、「kite」と「tite」、「cat」を「tat」と発音する。

第2言語による発音アクセントの例:
R の音がうまく言えず、「rain」の発音が「dain」のように聞こえる。あるいは、「violin」を「biolin」と発音する。日本語の発音には問題ない。

上記の例からおわかりにように、大きな違いとしては、前者では母国語の日本語を話している場合でも第2言語の英語を話している場合でも共通した音の誤りが生じるのに対し、後者の第2言語による発音アクセントでは、母国語の日本語では音の誤りはなく、第2言語の英語にのみ音の誤りが生じることです。

次回は、第2言語による発音アクセントについてもう少し具体的にお話したいと思います。

情報提供:言語聴覚士 鈴木 美佐子さん

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