フグといえば毒魚の代表であるかのように、近年でもフグ中毒による死亡例が報告されていますが、「フグを食う馬鹿、食わぬ馬鹿」と言われ、フグは高級料理、または大衆料理として喜ばれます。種類は20以上ありますが、一般に見られるものは、マフグ・トラフグ・ショウサイフグ・アカメフグ・コモンフグ・クサフグなどです。
マフグはトラフグとよく似ていますが、体側に黄色の線があり、胸鰭の後方にある黒点の周囲が白いことで区別できます。体長は40cm ほどになり、本州中部以南に多く、市場に入荷するフグの半分以上を占めています。マフグ科の魚で南日本に多いトラフグは、体色は暗褐色で腹側は白く、胸鰭の後方と背鰭の付け根に大きな黒点が1つあります。フグのうちでは最高級で、もっともおいしく、価格も一番高く、また、フグ提灯を作ることができます。近年、下関沿岸も漁獲量が減少しているため、養殖したり、韓国や東シナ海のものを蓄養して、一定量を確保するのが難しくなっているようです。
フグは一般に内臓、特に卵巣・肝臓などにテトロドトキシンと呼ばれる毒性の強い物質を含んでいます。この毒は種類によって皮や腸にもあります。フグ中毒を防ぐには、内臓を注意深く除き、卵巣・肝臓・胃腸などは絶対に食べないこと。俗に、「フグ一尾に水一石」と言うのは、そのぐらい丹念に洗う必要があるということです。いずれにしても、フグを料理する場合には専門のフグ調理師免許が必要で、それを持たない人は調理することはできません。なお、フグは春に産卵するため、11月から翌年2月ごろまでが旬。春になると「菜種フグ」と言い、毒性が強くなるので食用としません。
フグは刺身・ちり鍋・空揚げ・味噌汁などに使われる他、干したヒレはヒレ酒に、白子は塩焼きや鍋物の具に、身皮は煮こごりにして食べます。特に皿の模様が透けるほど薄く切って皿に盛り付け、紅葉おろしを加えたぽん酢醤油で味わう刺身は、見た目も美しく、歯ごたえのあるフグの身をよく生かした調理法です。日本でサラリーマン生活をした筆者を含め、酒を多少なりともたしなむ普通のサラリーマンであれば、少なくとも一度はこの美味しいフグ刺しを食べた経験があると思われます。
それでは、北米にフグは生息し、生または活で販売されてるのかと言うと、残念ですが、答えは “No” です。宇和島屋鮮魚部では、フグを販売したことはありません。
掲載:2008年4月
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