シアトルでも知られるようになった「おにぎり」というカテゴリに、新たな風を吹き込んでいるのが『Onigiri Sen』(おにぎり 千)です。代表の尾池里奈(おいけ りな)さんは、2025年の始動からわずか1年足らずで、PCC や T&T、T-モバイル・パークといったメジャーな販路を開拓しました。尾池さんに、留学から起業、販路開拓、今後の計画について伺いました。
有言実行のバックグラウンド:3ヶ月で大学を退学し渡米
幼い時から「有言実行だった」という尾池さん。受験して入学した外国語大学を「ここでは英語はうまくならない」と感じ、わずか3ヶ月で退学しました。
「ずっとアメリカでビジネスをやりたいと思っていました。世界最大の市場であるアメリカには、きっとドリームがあるはずだと」
最初こそ家族は留学に反対しましたが、尾池さんは説得するためのプレゼンを行い、納得してもらったと振り返ります。その後、コミュニティカレッジへ留学。卒業後のOPT(現地での実地研修期間)が終了する頃にはビジネスプランを具体化させていきました。
「逆算思考」で掴み取ったメジャーな販路

「日本にあるビジネスモデルをアメリカへ持ち込めば必ず成功する」と確信したのは、2025年にドジャースタジアムでおにぎりの販売が始まったと知った時。戦略は極めて明確で、「1年以内にシアトル・マリナーズの本拠地 T-モバイル・パークに入る」という高いゴールを設定。そこから逆算し、まずはブランドの信頼性を高めるため、オーガニック系スーパーのPCC(シアトル地域に16店舗を展開)や、アジア系最大手 T&Tスーパーマーケットへの卸し(ホールセール)を最優先させました。
大型注文は手作業の限界を超えるため、最新の機械を導入して数千個単位の供給体制を整備。店舗を持たず製造と流通に特化することで、ブランド力を一気に引き上げる道を選んだのです。
人脈の活用と品質へのこだわり

アメリカでのビジネスにおいて、尾池さんは「本当に、『誰を知っているか(Who you know)』が重要なことを実感しました」と語ります。ビジネスパートナーの強力な人脈を活かし、通常は困難な大手スーパーマーケットのバイヤーとの商談をスピーディーに実現させました。
もちろん、その商談を支えたのは品質やパッケージへのこだわりです。「天然の鮭やツナを使用するなど、シンプルな素材にこだわっています」という言葉通り、各マーケットの特性に合わせた商品展開を行っています。
- PCC向け:和歌山産の南高梅、オーガニックのマヨネーズを使用するなど、健康志向のニーズに合致 。
- T&T向け:4ドルを切る戦略的な価格設定(3.99ドル)で、ボリュームと親しみやすさを両立 。
千年続く文化を、シアトルの日常へ

ブランド名『Onigiri Sen(おにぎり千)』には、「千年続いてきたおにぎりを、これからも千年以上続けていきたい」という願いが込められています。
「ソーシャルメディアなどを通しておにぎりについて広く知れ渡るようになりましたが、まだまだ知らない人の方が多い。アメリカのハンバーガー文化の中に、おにぎりというヘルシーな選択肢を定着させたい」と語る尾池さん。今後は空港ラウンジや機内食への展開も視野に入れているそうで、尾池さんの描くおにぎりの未来は、シアトルの街を超えてさらに大きく広がっています。

