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アメリカのプライマリ・ケア・プロバイダー(PCP:かかりつけ医)とは?

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アメリカでは医療機関で “Who is your PCP?”(あなたのPCPは誰ですか?)とよく聞かれます。

PCP(ピー・シー・ピー)とは primary care provider(プライマリ・ケア・プロバイダ)のことで、日本で言ういわゆる「かかりつけ医」です。

もくじ

プライマリ・ケア(primary care)とは

プライマリ・ケア(primary care)は、一般的に、家庭医療(family medicine)、一般内科(internal medicine)、小児科(pediatrics)の専門を持つ医師、あるいは PA(physician’s assistant:医師の監督下で医療行為を行う医療資格者)、NP(nurse practitioner:看護師として仕事した上で学位を取得した資格者)が提供します。

家庭医療のトレーニングを受けてきた医師は、ファミリー・ドクター(family doctor)またはファミリー・フィジシャン(family physician)と呼ばれ、診療範囲が他の診療科に比べて最も広く、新生児から高齢者まで、家族全員を診ることができます。ファミリー・ドクターによっては妊婦検診、お産や産後ケアまで行う場合があります。

一般的に、内科は成人(18歳以上)のみ、小児科は新生児から18~21歳までの患者を診ます。米国では健康であっても誰もがPCPを持つことが推奨されており、時には保険会社によって指定される場合があります。

PCP(プライマリ・ケア・プロバイダ)の特徴は?

PCP は継続性を重視します。同じ患者と医師が長い付き合いを持つことにより信頼関係を築き、それぞれの患者の病歴をふまえ、家族関係や社会的背景、一人一人の価値観を理解した上で治療やアドバイスを提供するためです。

PCP はほとんどの疾患や健康問題に対応できますが、時には専門医やコメディカル(理学療法師、栄養士など)と連携してケアをコーディネートする役割を持っています。加入している保険によりますが、PCP は必要に応じて専門医(specialist)を紹介(referral)することもできます。

疾患の予防(prevention)や定期健康診断を行うのも、PCP の役目です。年齢や性別によって頻度や内容は異なりますが、予防接種のアップデートや疾患予防のために推奨される検査項目(例えば、コレステロール、子宮頸癌検診、大腸癌検診、骨粗しょう症スクリーニングなど)があれば、定期健康診断の時に推奨し、検査をします。

また、健康的な生活を応援するのは、PCP が最も望むところです。健康増進(health promotion)は重要で、運動、食生活、睡眠、タバコ・飲酒・その他の生活習慣についてカウンセリングを行います。

ストレスが多い現代生活で発症しがちなうつ病や不安障害に対するスクリーニングも行い、メンタルヘルスに対して介入するのも PCP の役割です。

PCPにかかるのは、どんな時?

  • 定期検診や健康診断を受けたい、予防接種を受けたい時
  • 高血圧、糖尿病、喘息、膝の痛みなど、慢性疾患がある時
  • 急に症状が出た時(例:じんましん、腰痛、腹痛、発熱など)
  • なんとなく調子が悪い時(眠れない、更年期障害、生活習慣病が気になるなど)
  • メンタルヘルスに対するケアが欲しい時(気分が落ち込む、不安が強い)
  • 禁煙したい・禁酒したい・その他の依存症のケアが必要な時
  • ダイエット・減量がうまくいかない時
  • 避妊の相談をしたい時(例:pill/IUD/nexplanonなどに興味がある)
  • 性病(sexually transmitted infection)のチェックをしたい時
  • gender affirming careを受けたい時
  • PTSDやトラウマ、性被害経験のケアを受けたい時
  • 巻き爪が痛い、膝の痛みのため関節注射できるか相談したい、イボの治療をしたい時(PCPによってはこのような手技も可能)
  • 妊娠したい時や妊娠した時(ファミリー・ドクターによっては妊婦検診・分娩の対応が可能)

次回は、すっかり一般的になったオンライン診療(テレヘルス/テレメディシン)についてお話しします。

執筆:西連寺智子先生(さいれんじ・ともこ)
University of Washington Department of Family Medicine, Associate Professor
Family doctor at UW Primary Care at Northgate Clinic and Northwest Hospital
米国マサチューセッツ州で幼少時代を過ごし、12歳で日本に帰国。国際基督大学卒業後、岡山大学に学士編入。卒業後、福岡県にある飯塚病院での2年間にわたる初期研修を経て、ピッツバーグ大学メディカルセンターで家庭医のレジデンシーとチーフレジデントを行う。同大学で医学教育修士課程とファカルティデベロップメントフェローシップを終え、現在はワシントン大学医学部(University of Washingon School of Medicine)で家庭医療の准教授として医学生の指導を行いながら、UW Medicine のノースゲート・クリニックと Northwest Hospital で家庭医として勤務している。

当コラムを通して提供している情報は、一般的、及び教育的情報であり、読者個人に対する解決策や医療アドバイスではありません。読者個人の具体的な状況に関するご質問は、直接ご相談ください。

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