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第6回 ドメスティック・バイオレンス(DV)とその対応方法

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アメリカでは、パートナー間で虐待や暴力があったとき、特に女性が被害者の場合には、一時的に滞在できる施設を紹介されたり、法的な手続きを進められることが多くあります。そして、後日引き返すことができなくなり、「そんなつもりで相談したのではなかった」と泣きながら訴えられるクライアントさんがいらっしゃいます。

そこで、今回は、どうしてこのようなことが起こるのかを考えてみたいと思います。

もちろん、暴力は二度と起こってはいけないことですが、別れることを選択肢とせず、他の解決方法を見出そうとされる日本人の方は多くいらっしゃいます。

まず、カップルや夫婦の在り方、価値観、コミュニケーションの取り方、またカップルを取り巻く周囲との関係性などが、日本的考え方とアメリカ的考え方では異なるようです。日本人が「共存」を重視し、カップル間だけでなく、周りの人との調和や人間関係を考慮しがちなのに対し、アメリカ人は「独立・自立」ができるよう、個人のための情報や資源の確保を優先しがちです。そのため、「他人に迷惑がかかること」を気にする日本人、特に被害者の方は、自分を中心に進んでいくアメリカでのDVの解決方法に戸惑いを感じるようです。

また、日本人の方に多く見られるのが、アメリカ文化で耳にする権利の主張と、ご自身の中で強く感じる義務感との間で困惑するケースです。我慢することが美徳とみなされることの多い日本文化の影響から、「自分さえもう少し我慢すれば・・・」と思う一方、誰かに相談をしたり頼ったりすることを「弱い自分」と感じたり、「自分で解決する能力がない」と、一人で問題を抱え込んだり、自分を責めることがあるようです。また、たとえ専門家や友人に相談を持ちかけても、「こんなに親身になって時間を費やしてくれたのだから・・・」と、その人たちに反する自分の希望や要望を言い出せなかったり、心から賛同できないアドバイスに否応なく従うような結果となってしまいます。そのため、周りに流されたまま、納得のいかない解決策を強いられたり、心の傷が深まったり、また、パートナーとの関係に一層ダメージを及ぼすようなこともあります。

では、パートナーから DV を受けたり、その可能性がありそうな場合は、どうすればいいでしょう。

(1)安全の確保
まずは精神的・身体的に安全と思える場所を確保することが最優先です。恐怖感や危険を感じるようなストレスの多い環境では、的確な考えや判断がしづらくなります。子供や老人に対する虐待と異なり、パートナー間の暴力においては、命の危険やその恐怖を訴えない限り、残念ながら、カウンセラーなどの専門家には通報の義務がありません。それよりも、守秘義務の方が優先されるため、被害者ご本人の同意なしには通報が難しく、通報が遅れる場合もあります。そのため、ご自身の判断と行動力がとても重要です。

(2)複数の専門家に相談
誰かに打ち明けるのは容易ではないかもしれませんが、問題が大きくなる前に相談しておくと、安全対策になるだけでなく、情報を得ることによって視野が広がります。複数の専門家との対話を通してさまざまな角度から物事を考えるきっかけともなります。ですが、専門家の情報は一般論であったり、過去の事例であることもあるので、必ずしも今のあなたにとっての最善策とは限りません。相談相手との間に文化の差や価値観の差を感じるような場合には、「文化の違いを考慮してほしい」と伝え、納得がいくまであきらめず、ご自身にとって一番良い選択肢を検討してください。

(3)相手との話し合い
カウンセリングには、被害者だけではなく加害者もいらっしゃいます。話すことによって、感情の奥に見え隠れするものが明確になり、自分や相手への理解が得られるようになっていくようです。また、カップル・カウンセリングは、二人の仲を改善するためだけではなく、お互いが納得いく別れ方をする場としても頻繁に利用されます。

佐野圭子 Ph.D, LMHC, NCC, SAS
メンタルヘルス&キャリアカウンセリング
CCC Counseling & Consulting
843 6th Street, Bremerton, WA 98337
電話:(360) 328-1233
【お問い合わせ】info@cccplace.com
【ウェブサイト】cccplace.com

当コラムを通して提供している情報は、一般的、及び教育的情報であり、読者個人に対する解決策や法的アドバイスではありません。読者個人の具体的な状況に関するご質問は、直接ご相談ください。

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