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第8回 子供のアイデンティティ

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アイデンティティは、自信や自尊心の発達に大きく影響し、その形成は大半が無意識的に生涯にわたって行われます(Erikson, 1959)。

エリクソン心理社会的発達理論

学齢期ごろまではご両親の影響や家庭環境などによって自我が形成され、以降は自らが作り上げていく自我へと変化していき、アイデンティティの確立(同一視/自我同一性)が課題となっていくと考えられています。それは、「自分が何なのか」、「自分がどうありたいのか」、というような問いに自分なりに答えを見つけていく作業です。

アイデンティティの形成には、乳児期の信頼の感覚の形成が基盤となり、信頼の感覚には、他の人を信頼することと自分自身を信頼することの二つの局面があります。それらを基盤に、自立性や自主性の発達と伴い、周囲を観察したり、対人関係での経験を通して、アイデンティティが形成されていきます。

自分自身の在り方や独自のやり方が、自分の所属する集団(家族や学校など)のアイデンティティと一致しあっているという感覚を通して、他人からの信頼、自分自身でいる感覚、そして「大丈夫」という感覚を結び付けていくのです。

ですが、家庭と社会との間で、ルールや秩序、自分の役割や他人からの評価、信頼感覚の不一致などが起こると、アイデンティティの形成がより困難になります。

例えば、個人主義のアメリカ文化と、集団のアイデンティティを重要視しがちな日本文化の間で、言語力や表現力が発達途上の子どもは、不安定さや違和感などをうまく「ことば」として理解することや伝えることが難しく、「感覚」や「体験」として、不一致感や不信感が強く心に残ります。

この感覚が、Anxiety、自己不信、自己否定などとして現れたり、周囲と異なることを恐れて、自分のアイデンティティを消してしまうことになります。日本文化では特に、無意識に自分のアイデンティティを消して集団の文化に合わせることが繰り返され、「自分が何なのか」がますます理解しづらくなっていきます。結果、「他人が期待するような自分」となり、将来仕事を選ぶときに「何がしたいのかわからない」と悩んだり、「どれが本来の自分なのかわからない」と思ったり、また、本来りたい自分像と現在の自分像の差に戸惑ったりするようになります。

アイデンティティは何度も作りかえられ、その過程で迷い続け、葛藤し続けるものです。そのプロセスの中で、自分を信頼することができ、「大丈夫」と思えることがカギとなります。

お子さんがご両親と異なるアイデンティティを表現されたとき、どのように対応されますか?それがあなたの価値観や信念と異なった場合は、どうされますか?

また、次のような行動が見られた時には、お子さんと普段以上にポジティブなコミュニケーションを取り、お子さんと世界観や自分像などについて話し、お子さんを「ありのまま」受け入れる良いお手本を見せてください。

  1. 両親や他人の顔色を伺う。
  2. 友達と比較することが多い。
  3. 友達の真似をする(洋服、食べ物、言葉遣い、習い事、芸能人、宗教など)。
  4. 自分の肌の色、性別、家族形態などに関して質問する/疑問を持つ。
  5. 家庭の中と外で(または一緒にいる人によって)行動や言動、態度が大きく異なる。

Erikson, E. H. (1959). Identity and the life cycle: Selected papers. Psychological Issues, 1, 1-171.
Kawai, T. (2013). A consideration on Erikson’s identity theory and social theory. Kyoto University, 59, 639-651.
Mathews, A. (2018). The authentic self. With a capital “S.” Psychology Today. Retrieved from https://www.psychologytoday.com/us/blog/traversing-the-inner-terrain/201802/the-authentic-self
McLeod, S. (2018). Erik Erikson’s stage of psychosocial development. Retrieved from https://www.simplypsychology.org/Erik-Erikson.html

佐野圭子 Ph.D., LMHC, NCC, SAS
メンタルヘルス&キャリアカウンセリング
CCC Counseling & Consulting
843 6th Street, Bremerton, WA 98337
電話:(360) 328-1233
【お問い合わせ】info@cccplace.com
【ウェブサイト】cccplace.com

当コラムを通して提供している情報は、一般的、及び教育的情報であり、読者個人に対する解決策や法的アドバイスではありません。読者個人の具体的な状況に関するご質問は、直接ご相談ください。

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