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第10回 アメリカでのコミュニケーション方法

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日本文化の影響を強く受けた方と、アメリカ文化の影響を強く受けた方との間で見られる一番大きなコミュニケーション方法の違いは、さまざまな人間関係の中で生じる「期待」から起こることが多いようです。

もくじ

日本とアメリカのコミュニケーション方法の違い

例えば、「行間を読むこと」を重んじる日本文化では、「言わなくてもわかってくれるだろう(わかってほしい)」「いつかわかってくれるはず」という期待から、本心とは異なることを言ったり、遠回しに物事を伝える傾向にあります。このパターンが何度か続くと、「言っても無駄」「わかろうとしてくれない」「私はコミュニケーションが下手」「英語だとうまく伝わらない」「人間関係がうまくいかない」と、自分のコミュニケーションスキルや人間関係において悲観的になってしまうようです。

同調圧力の強い日本では、まず相手や周りの環境などを把握し、相手やその場に適したやりとりを試みます。その影響を強く受けていると、明確な自己主張と直接的なコミュニケーションを優先するアメリカ文化でのコミュニケーション方法を一方通行に感じる原因となります。

また、「家族の問題は家族の中で」と考えたり、「自分よりも相手を優先」という概念が強いと、個人的な内容の発言を避け、相手に受け入れられやすい内容を選びがちになります。相手の数が増えるほど同調することが難しくなっていくので、「一対一なら話しやすいけれども、グループになると話しづらい」という方も少なくありません。

もう一つは、「同意」の文化の影響です。例えば、周囲とのバランスを崩すこと懸念して、他の人と異なる意見を言うことが難しいだけでなく、例え勇気を出して自分の意見を主張したとしても、相手が自分の意見に同意や同調をしなかったときに自分の存在までもが否定されたように感じてしまう傾向にあります。

このような傾向にあると、自己主張をするアメリカのコミュニケーション方法に圧倒されるだけでなく、アメリカ人やアメリカ文化の影響を強く受けている人からは「保守的」「自分のことは話したがらない」ととらえられ、「距離を置いている」「近寄りがたい」と思われることになるようです。そして、相手が「行間を読む」作業をしているように感じられず、自分ばかりが努力したり我慢したりしているように感じる結果にもなるようです。

まずは自分への理解を深めることが大切

最近は日本でも “相手も尊重しつつ、自分の要望や意見を相手に伝えるコミュニケーションの方法” として「アサーティブ・コミュニケーション」(assertive communication)の話題や研修などが頻繁に取り上げられています。

ですが、大切なのは、それらの一般的なスキルを身につけることよりも、まずはあなた自身を十分に理解し、価値観や現在のコミュニケーション方法などを見直して、あなたにとって最適でより良いコミュニケーション方法を見出していくことが必要です。例えば、「気持ちを伝える」と言っても、感情よりも思考を話す方が得意な方、自分の気持ちがよくわからない方、まずは自分でプロセスしたい方など、さまざまです。

そこでまず自分への理解を深めることで、自然にコミュニケーションの仕方が改善していきます。

自分への理解を深めるために役立つ自分への質問

アメリカでのコミュニケーションにおいて、自分への理解を深めるために役立つ自分への質問項目の一部をご紹介します。

  • 心の中で思っていることを、実際にどれくらいの割合で発言していますか?
  • 言いたいことを言えなかった(言わなかった)時、どのようなことを言わずに終わることが多いですか?
  • 相手の話を聞きながら、批判的になったり、自己防衛の意識が働くのは、どういう時ですか?
  • 日本的価値観とアメリカ的価値観をどのように考えていますか?それぞれで重視している部分はどのようなところですか?
  • 「言う」「言わない」をどのように決めていますか?
  • 日本語で話している時と英語で話している時に感じられるギャップがあるとしたら、それはどのようなことですか?
  • 「No」と言うことと言われること、どちらが難しいですか?また、相手のどのようなことによって、その程度が異なりますか?

今から始められる、コミュニケーション力を高める方法

今から始められる、コミュニケーション力を高める方法の一例をご紹介します。

  • 傾聴(他人の言ったことと自分の心の中の声をよく聞き、批判や否定をすることなく、自分がどのように相手の言葉を理解したかを、内容をかいつまんで復唱しながら相手に確認する)
  • 自分が思っていることをうまく伝えられていないと思った時や、何を話せばいいかわからないような時には、それでも何かを話そうとするより、うまく言えないと思っていることや、何を言えばわからないこと自体を相手に伝える。
  • コミュニケーションに現れる文化の違いを、受け身になって処理したり、相手に合わせたりするのではなく、相手にもそれらの特徴を伝え、お互いの理解を深める。
  • 「No」と言うこと、言われることを、「自分に対する評価」と区別する。

例えば、「どこに食事に行く?」という話題で、自分が食べたいものを言うのが最後になった場合、他の人が言ったことを自分が否定しているように感じる方は、誰よりも先に発言する。もしそれが却下されても、意見が通ることと自分が受け入れられることを区別し、自分の言いたいことを発言できた自分を評価し、受け入れる。

相手に好かれよう、受け入れられようとするより、まずは「その場」で「あなたがあなた自身を受け入れる」ことに意識を向けることが最優先です。そうでなければ、トレーニングなどで表面的にはコミュニケーションが上達したように感じられても、自分の中での不一致が一層大きくなり、不満足度やネガティブな思考が増すことになります。

佐野圭子 Ph.D., LMHC, NCC, SAS
メンタルヘルス&キャリアカウンセリング
CCC Counseling & Consulting
843 6th Street, Bremerton, WA 98337
電話:(360) 328-1233
【お問い合わせ】info@cccplace.com
【ウェブサイト】cccplace.com

当コラムを通して提供している情報は、一般的、及び教育的情報であり、読者個人に対する解決策や法的アドバイスではありません。読者個人の具体的な状況に関するご質問は、直接ご相談ください。

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