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第53回 民事訴訟において召喚状と申立書を受領した場合の対応とその後の手続き

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「訴訟の国」と言われる米国では、思わぬことで民事問題として告訴されることがよくあります。

自分は告訴する意思がなくても、告訴されたら相手側の召喚状と申立書(告訴状)に答弁しなければなりません。さもなければ、相手側の言い分をすべて了解し、自分(被告)の権利を放棄したということになってしまいます。従って、召喚状と申立書を受け取った場合は、期日を守り、対応することが必要です。

法廷での手続きの基本的な進め方

1)召喚状(Summons)とは、「あなたは告訴されました」と知らせる手紙です。告訴人が申し立てをした州(法廷) と同じ州で受け取った場合は 20日以内、他の州で召喚状を受け取った場合は60日以内に、添付された申立書 (Pleading) に対する答弁書を告訴人・裁判所に提出しなければなりません。この時点で重要なのは、弁護士を雇うことです。自分で自分の弁護をすると(Pro Seといいます)、手続き上の間違いや返答の仕方に関する間違いが起こる可能性が高く、結局のところ、裁判の過程を複雑化、あるいは告訴人の言いなりになってしまいます。

2)上記の召喚状に従わず、答弁(Answer)もせずにそのままにすると、告訴人には欠席判決(Default Judgment)の権利が発生し、よほどの理由がなければ、告訴人が申立書に記入した内容をすべて認めることになります。特に債権回収申請書を受けて答弁しなかった場合、欠席判決の後、告訴人は借金回収作業に入ります。その際、法廷を通して命令状 (Writ)を被告人の銀行に提出し、被告人の銀行口座から直接お金を引き落としたり、被告人の雇用者にも命令状を提出し、請求額の一部を給与から差し引くことも可能になります。また、離婚届書申請に対する返事をしなかった場合も、欠席判決として、申請側の言い分の通りに離婚が成立します。

3)では、仮に20日以内(州内の場合)に答弁書を提出したとします。告訴状にはいくつかの告訴内容と争点が記入されていますが、答弁書はたいてい、告訴人の言い分を部分的または全面的に否定する内容になります。答弁の仕方はさまざまですが、もし告訴人が正当な法的根拠のある告訴状を提出していなければ、「正当な申し立て権利を主張していない」(FRCP/CR12 (b)(6))として異議を申請することもありますが、そうでない限りは告訴人の申し立ての内容に反論するため、明確かつ法的根拠のある証拠とその理由を提示します。

4)それでも告訴人が証拠不十分として答弁してきた場合は、さらなる証拠提示手続きとして、証拠開示(Discovery)の手続きが開始されます(CR/FRCP 26)。 案件の内容によっては、この証拠開示の手続きは複雑かつ時間のかかる作業で、しかも開示したくない資料等も相手に提出せざるを得なくなることもあるので、この時点で両者が和解することもよくあります。また、証人に連絡を取り、宣誓証言(Deposition)を相手側の前でさせることもありますが、この費用負担は証人を呼び出す側が負担するので、更なる費用が発生します。

5)また、この過程において、通常、さまざまな法廷提出用の申請 (Motions) が両者からなされます。

6)裁判は、上記の過程を終えてから開廷します。裁判には陪審員を含む場合と陪審員を含まない場合がありますが、どちらを選択するかは両者の同意と裁判官の同意が必要です。

シャッツ法律事務所
弁護士 井上 奈緒子さん
Shatz Law Group, PLLC
www.shatzlaw.com

当コラムを通して提供している情報は、一般的、及び教育的情報であり、読者個人に対する解決策や法的アドバイスではありません。 読者個人の具体的な状況に関するご質問は、事前に弁護士と正式に委託契約を結んでいただいた上でご相談ください。

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