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第23回 ワシントン州での担保つき取引について

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資金の融資はビジネスのみならず友人同士でも行うことがありますが、貸す側にとっては約束した期日に確実に貸付金が戻ってくることが重要です。借用人が仮に信用のある企業・個人でも、その借用人が返済できなかったときのために財産などの差し押さえをするなど、担保付の借用書に署名をさせることがよくあります。

貸付金書類や約束手形に基づく債務の支払いに関して担保を確保する手続きについては、統一商事法典(Uniform Commercial Code Article 9)およびそれに関連する各州法 (ワシントン州では RCW62A-9A)によって定められています。

まず、約束手形を有効にする際に、1)貸付金に対する利子の割合(ちなみにワシントン州法では年利12%が上限とされていますが、州によって上限が異なります)と満期を決め、2)契約不履行の場合の規定(例えば借用人が破産した場合、借用人の事業が差し止め状態になった場合、担保価格が悪化した場合など)をお互いの合意の下で契約として認め、2)の場合は契約不履行の場合の債権者の権利と救済方法を定めます。その債権者の権利執行において借用人に借金の返済能力がなかった場合、借用人の所有物を差し押さえすることによって、残った借金返済の埋め合わせにします。法律上、差し押さえの方法に関しても債権譲渡法に基づき、債権者は借用人に良心的な通知期間を与えなければなりません。さもなければ不法侵入などで借用人から訴訟をかけられることもあります。

次に、借用人の所有物の回収方法についてですが、貸付金額やその他、未支払額のものに対する価値などによって優先順位が決定されます。例えば、A(借用人)さんに B(債権者)さんからの借金$10,000 と車のローン$30,000が 残っていた場合で考えてみましょう。A さん所有の古美術品の価値が$50,000だとしたら、仮に A さんにまったく貯金(現金)がなかったとしても、B さんからの借金の返済と車のローンの返済が十分できることになります。担保の処分方法はその内容によって異なりますが、差し押さえは通常、額の高いものから支払われていきます。なお、売買契約など、既存の商業関係のある企業間の取引においては、ある負債企業 (借用人) が貸付企業 に借金を返済しなかった場合は、未払い分の貸付金額を加味した相当の額で、貸付企業が負債企業を買い取ることもあります。企業買収はこうした関係の中で発生することもあります。ですから、企業間での資金融資をする場合は、事前に負債企業(借用人)の資産報告書や企業の経営状態をよく知った上で、資金を融資することが重要です。

最後に、約束手形や貸付金の滞納から生じる問題に関してお話します。この問題は通常、裁判によって解決されます。ただし、契約上、陪審裁判を避ける条項を設けるのが通常です。陪臣裁判を避ける理由としては、借用人が時として弱者として扱われ、借用人側の申し立てに同情する陪審員がいる可能性があるからです。貸付金の未支払いに関して裁判所を通す理由は、企業間の業務上で発生する不平や契約違反のような、両者の意見によって結果が相違する案件とは異なり、争点がはっきりしているからです。特に国際業務をする企業にとっては、ワシントン州企業が海外企業に資金融資をした立場であれば、なおさらワシントン州の法廷で裁判をする条項を設けることが有利な条件となります。

シャッツ法律事務所
弁護士 井上 奈緒子さん
Shatz Law Group, PLLC
www.shatzlaw.com

当コラムを通して提供している情報は、一般的、及び教育的情報であり、読者個人に対する解決策や法的アドバイスではありません。 読者個人の具体的な状況に関するご質問は、事前に弁護士と正式に委託契約を結んでいただいた上でご相談ください。

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