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第33回 契約した会社と問題があった場合の対処の仕方

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第32回のコラムでは、契約書の扱い方と読み方について説明しましたが、今回は契約成立後に契約した相手企業と問題があった場合の法的対処と対応の仕方についてご説明します。

まず、契約成立後に問題があった場合の対処は大きく2つに分かれます。企業間のビジネス関係に関する問題がある場合と、商品やサービス等を消費者に提供する企業に問題がある場合です。前者は通常、契約法(契約内容の有効性)のみにおいて解決されますが、後者は、契約法に加えて消費者法によって解決されます。

契約法は、2者間の合意の下で決められた仕事がなされるという概念から成り立っています。業務委託者が業務依頼主に対して支払い金額に相応するサービス・商品を提供することによってお互いが利益を得ます。これを、対価または報酬(Consideration)と呼びます。双方の意思を確認するため、例外を除き、書面による契約書にお互いの署名をしたうえで業務を開始します。企業間 の契約は商業関係なので、通常、書面の契約書によって成立しており、第32回のコラムでもご説明したように、契約書も複雑化しています。従って、契約内容が違法事項を含んでいない限り、また、契約に連邦法や州法で規定されている事項が省かれていない限り、、企業間で作成された契約内容が企業間の業務関係を法的にも拘束します。そして、仮に企業間の関係が公平かつ正当でなくても、裁判官や調停人も契約内容に従って判決を下します。

しかし、場合によっては書面による契約書がなくても契約成立が認められる場合もあります。特に業務依頼主(買い手)と業務委託者(売り手)の関係においては、書面の契約書なしに取引が行われることがよくあります。例えば、車を購入する際は、売り手が買い手に車を渡した段階で契約成立となり、広告に記されていた金額に対する交渉等がなかった場合、買い手はその支払いをする義務があります。また、家庭教師を雇う場合は時として書面での契約がありませんが、時給で家庭教師を雇ったにもかかわらず、代金を支払わなければ、業務依頼主の契約違反となります。これは不当利益(unjust enrichment)の変換請求として法的に認められています。ですから、もし書面による契約書があって、業務依頼主(買い手)が支払いをしなかった場合は、依頼主(買い手)の完全なる契約違反とみなされます。いずれの場合も、もし業務依頼主(買い手)が業務内容や購入した商品に不満がある時は、早めに業務請負者(売り手)と金額を交渉することが重要です。しかし、業務依頼主(買い手)がまったく支払いをしていないにも関わらず交渉を続ける場合は問題があります。まず、委託者・売り手側が、「買い手は最初から支払うつもりがなかった」と疑いを持つ可能性があるため、依頼主(買い手)が交渉の機会をなくす可能性があります。さらに、依頼主(買い手)の誠実な意思が欠けるとして、仮にこの問題を裁判所に訴えても裁判官に納得させる要素がありません。もし、買うつもりだった商品を受け取っていながらそれを気に入らなかった場合、その商品を受け取った当初と同じ状態で返品することで契約解消が可能ですが、家庭教師や家屋修理等のサービス業に関しては、いったんサービスを提供されたらその質や内容に関わらず、妥当な支払いをしておく必要があります。

では、もし業務委託者が依頼主に被害を与えた場合はどうなるのでしょうか。これは書面契約書の有無にかかわらず、最低限の品質保障(商品売買の場合)や損害賠償を保障することが連邦法や州法によって規制されているので、業務委託者が依頼主に被害額を支払う義務があります。ただし、この損害賠償金は当事者同士の業務契約そのものとは別の問題なので、この場合でも依頼主は法的には業務委託者(売り手)に対して商品・サービスに対する支払い義務があります。

上記に加え、依頼主(買い手)は消費者として消費者法によって法的に守られています。これは、企業・ビジネスが消費者に対して詐欺や虚偽によって商品やサービスを売り込むことを防止するための法律で、経済的・情報入手に有利な立場であるビジネスが弱者の消費者を利用することを防ぐのが目的です。たとえば 連邦法の Fair Debt Collection Practices Act, the Fair Credit Reporting Act, Truth in Lending Act, Fair Credit Billing Act, and the Gramm-Leach-Bliley Act などが適用されます。このような法律は、連邦取引委員会(Federal Trade Commission)や米国司法省(U.S. Department of Justice)によって規制されています。従いまして、依頼主(買い手)である消費者が売り手の企業の押し売りで不当な売買契約やサービス契約をさせられるなど、その内容や成立過程が不正当だった場合は、仮に契約書が成立したとしても、契約解除が可能です。もちろんそれによって被害を受けた場合、被害額を請求することも可能です。さらに、売り手が罰金の支払いをしなければならないこともあります。

最後に、このような問題が発生した時の法的対処の方法として、BBB(Better Business Bureau)等に問い合わせる消費者が多いようですが、BBB は消費者のデータや不満を収集し、不平や問題が特定の企業に集中した場合はそれを公開するのが役割で、法的な問題を解決する組織ではありません。もし企業・ビジネスの行為が犯罪行為であると見なされる場合は法務省(Attorney General)に直接連絡するか、民事に関する問題であれば民事専門の弁護士を通することで、問題を解決することができます。もし被害額が5千ドル以下であれば、小額訴訟裁判所(Small Claim Court)に告訴状を提出し、弁護士を通さずに自己の弁護をすることも可能です。

シャッツ法律事務所
弁護士 井上 奈緒子さん
Shatz Law Group, PLLC
www.shatzlaw.com

当コラムを通して提供している情報は、一般的、及び教育的情報であり、読者個人に対する解決策や法的アドバイスではありません。 読者個人の具体的な状況に関するご質問は、事前に弁護士と正式に委託契約を結んでいただいた上でご相談ください。

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