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第15回 アメリカで働く外国人のための新しい教育政策

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ここのところアメリカでは移民労働者が増加しています。これによって雇用・労働に関する問題も増加していますが、そうした問題の大きな要因が言葉の壁であることが明らかになっています。また、言葉の壁に伴って、なかなかアメリカ社会に溶け込めない労働者も多くいます。そこで今年7月21日、立法機関と議院によってアメリカで働く移民(この場合、アメリカ市民権を持っている外国人)のための新しい教育政策が提案されました。政策の主な内容は下記の通りです。

  1. 雇用者が外国人(移民労働者)である被雇用者を英語教育・学校に通わせた場合、その雇用者は、1,000ドルを上限とし、その学費の20%の税額控除を受けることができる。
  2. 外国人(移民労働者)に英語を教える英語教師は5年間にわたり1年に750ドルまで税額控除をうける。また、6年目から10年目までは1年間500ドルの税額控除を受ける。
  3. 外国人(移民労働者)向け英語教育に関するプログラムに対して2001年より各州に70億ドルから200億ドルの資金を提供する。資金総額は各州の移民の増加によって決定する。

第14回のコラムでもご説明したように、かなりの英語力を要求する仕事であり、英語が問題で企業の業務に損害を与えたという証拠がない限り、英語がうまく話せないからといってその外国人(移民労働者)を解雇することは差別とみなされ、違法行為になります。ましてこの提案が合法化されれば、被雇用者が英語学校に通い語学力を強化したいという意思があるにもかかわらず、その機会も与えず解雇すると罰則を科される可能性もあります。さらに差別という観点から、同じ職種で外国人(移民労働者)の被雇用者を解雇してアメリカ人を採用する際にも注意が必要です。

それに対し、上記の政策を理解した上で外国人被雇用者の教育に力を入れたにも関わらず業務成績が悪いという理由で解雇した場合は、被雇用者側からの「国籍や民族が理由で解雇した」という主張に対する反論材料になり、抗弁の余地があります。

いずれにしても、この政策が合法化されることによって企業の外国人(移民労働者)の扱いに関するガイダンス・従業員案内書を改訂するとともに、雇用・労働に関する方針の見直しが求められます。

シャッツ法律事務所
弁護士 井上 奈緒子さん
Shatz Law Group, PLLC
www.shatzlaw.com

当コラムを通して提供している情報は、一般的、及び教育的情報であり、読者個人に対する解決策や法的アドバイスではありません。 読者個人の具体的な状況に関するご質問は、事前に弁護士と正式に委託契約を結んでいただいた上でご相談ください。

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