今回は、米国ワシントン州での不動産譲渡とその証書について簡単にご説明します。
ワシントン州には主に、1）Quit Claim Deed、 2）Warranty Deed、3）Bargain and Sale Deed という、譲渡証書の種類があります。
- Quit Claim Deed （RCW 64.04.050） この証書は、権利・所有権のみを譲渡人から譲受人に移転させる証書で、権利の保証やその他土地の価値等の保証はしません。したがって、土地や家屋の売買に使われる証書ではなく、多くは、親族間で名義変更をする際に使われます。また、離婚した際に片方の配偶者が土地と家の権利を放棄する際にこの Quit Claim Deed を通して名義変更をします。
- Warranty Deed – Statutory Warranty Deed （RCW 64.04.030） この証書は、権利や所有権のみでなく、土地や家に関わる価値や権利、債権・債務のすべてを保証します。この証書を通して、譲渡人が 1）土地と家に対するすべての権限を所有する、2）譲渡人以外にはその土地と家に対する何らの権限を持つものがいない、3）土地と家に関わる障害物や制限がない、4）譲渡の際に譲渡人と譲受人の間に障害となる債権・債務等がない、ということを保証するもので、一般的には、土地・家の売買をする際にこの証書が発行されます。
- Bargain and Sale Deed-Special Warranty Deed （RCW 64.04.040） この証書は、所有権の移行を譲渡人から譲受人にする際、譲渡人が土地と家を所有していた期間において、1）土地と家の権利に関わるすべての権限を持っていたこと、2）譲渡人が知る限り、または所有していた期間において、障害となる債権・債務等はなかった、3）譲渡人が譲渡をする際に譲受人が受ける所有権に障害となる要素がまったくない、ということを保証する証書です。一般的には、この証書は、土地と家が差し押さえになり処分されることになったときに所有者の債権者である銀行が発行する証書です。また、この証書は Warranty Deed に比べて保証範囲が限られるため、土地・家の売買がなされる際に譲渡人が保証範囲を限定するために使用されることもあります。
これらの証書を発行する際に必要なのは、所有者の氏名・住所はもちろん、その土地・家が他の土地・家と完全に区別できるように区画（Lot or Parcel）の特定とその番号ごとに詳しい記述と説明がなされていることです。また、この証書を認証するために、それぞれの証書に対して公証人の手続きを必要とします。さらに、これらの証書が発行される過程で、Title Company と呼ばれる組織が、土地・家の売買の際に権利や所有権等、その土地・家に関わる権利の歴史や権限に対する制約について調査をすることが一般的です。また、土地・家の購入者が、所有権を獲得するために必要な情報と証書、購入者に対する保険、譲渡手続き完了までに必要な資金管理に携わり、売買（譲渡）をスムーズにします。これらの手続きを経て、最終的に作成・発行されたこれらの証書は各郡（County）にある Recording Office に提出されて保管されます。
シャッツ法律事務所
弁護士 井上 奈緒子さん
Shatz Law Group, PLLC
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