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第26回 未払金回収の方法と法的権利

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最近は未払金の債権をめぐって企業間での紛争が急増しています。今回は取引先企業が支払いを滞納した場合の法的手段について簡単に説明します。

取引先企業が支払いを滞納した場合はまず、1)企業間の取引契約書に滞納した場合の手段についての条項があるかを確認します。請求書受領から30日以内の支払いが通常の支払い周期です。次に、2)契約書にアクションの起こし方、アクションを起こすための準拠地と準拠法に制約がないかを確認します。最後に、3)弁護士料の負担を誰がすることになっているかを確認します。

1)に関しては、支払いの周期や期日が契約書によって義務づけられていたにも関わらず支払いを滞納した場合は、取引先企業に督促状・再度の請求書を出します。2)に関しては、例えば、契約書によって問題解決が仲裁や調停によって解決されるように決められていた場合は法廷を通しても問題は解決できませんが、契約書に仲裁や調停に関する項目がない場合は、通常相手企業を法廷を通して告訴することができます。また、裁判地がどの州であるかも確認します。裁判地が仮に選択されていなかった場合は通常、被告企業の居住する州で訴訟を起こしますが、被告企業がカリフォルニア州に存在していてもワシントン州で事業展開をしている場合は、民事訴訟法の “最小限の接触”(minimum contacts)を満たすため、ワシントン州の法廷で告訴することができます。さらに、準拠法に制約がなかった場合で被告人の対人管轄権がワシントン州にある場合は通常、原告の居住する州の法律が適用されます。いずれにしても、2)に関わる対人管轄権や “最小限の接触” の決定に関しては多くの判例があり、細かい法的分析を要するので、督促状を出して相手企業に支払いの意図がないと判断した段階で弁護士を代理人としてたてて債権回収をすることを勧めます。なお、3)に関しては通常、取引契約書によって、敗訴当事者が勝訴当事者に弁護士料の支払いを義務付ける規定をしています。従って、債権が確実で被告企業が倒産等の経済的問題を抱えていない限りは、最終的に、未払金だけでなく、弁護士料も回収できます。

なお、取引業務に関しての契約書がなかった場合は、原告の法的権利にかなり影響します。例えば、契約書がない取引自体が法的効力がないとみなされる可能性もあります。仮に契約書が存在していたとしても、2)と3)の部分が明確に記されていない場合は、原告に不利になる可能性があります。特に弁護士料の負担を誰がするかに関して不明確な場合、損害額の大きさによっては法廷を通して告訴することによって弁護士料の比率が損害額に比べて大きくなると予想されれば、原告側の未払金の回収に対する本来の目的が薄れます。ちなみにワシントン州法 RCW 4.84.330 では勝訴当事者が弁護士料の支払いを敗訴当事者から受け取ることになっているので、ワシントン州法が適用された場合は勝訴当事者に有利です。ただし、契約書がそもそも成立していないと、この法律は該当しません。

従って、企業間の取引においては特に、自社の法的権利の行使と、問題があった場合の防衛対策として、各条項が綿密に考慮された取引契約書を事前に交わすことが大切です。

シャッツ法律事務所
弁護士 井上 奈緒子さん
Shatz Law Group, PLLC
www.shatzlaw.com

当コラムを通して提供している情報は、一般的、及び教育的情報であり、読者個人に対する解決策や法的アドバイスではありません。 読者個人の具体的な状況に関するご質問は、事前に弁護士と正式に委託契約を結んでいただいた上でご相談ください。

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