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アメリカの職場で従業員のモチベーションに影響を与える重要な要因

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今年に入り、従業員の大量退職もやや落ち着きを見せ、人材の採用も一時期よりは苦労が減ったという声も聞かれるようになりました。

その一方で、経験や知識が豊富で組織に不可欠な社員の退職と、その後任者の育成や採用にかかるコストに頭を抱える企業も少なくありません。

このような状況を回避するためには、従業員が継続して働きたいと思うような組織を構築する必要があります。

今回は、従業員のモチベーションを左右する要因とその解決策について取り上げてみます。

もくじ

モチベーションのマネジメント 動機付け要因と衛生要因

従業員が働く上で、何がモチベーションを上げ、何がモチベーションを下げるのかを知ることはきわめて重要です。

アメリカの心理学者フレデリック・ハーズバーグが1959年に発表した「二要因理論」(two-factor theory)は、70年近く経った今も多くの大学の講義で取り上げられますが、その要点を見ると、それが今日においても変わっていないことに気づかされます。

ハーズバーグは、仕事に対する満足をもたらす要因と不満をもたらす要因が異なることを示し、前者を動機付け要因、後者を衛生要因と呼びました。

動機付け要因衛生要因
達成感同僚や上司との関係
承認会社の規則
仕事内容職場環境
昇進の機会給与
成長の機会雇用の安定
満たされると、やる気が出る満たされないと、不満を抱く
動機付け要因

仕事の達成感、責任範囲の拡大、能力向上や自己成長、困難を伴う仕事など

衛生要因

会社の方針、管理方法、労働環境、労働条件(金銭・時間・職位)など

ここで注意したいのは、衛生要因を排除することで従業員の不満は解消されますが、満足感やモチベーションを高めることはできないという点です。

動機付け要因である「達成」や「承認」は、仕事の満足度を高める上で重要な要素ですが、衛生要因が満たされない状態で動機付け要因だけを満たしても効果はありません。給与に不満がある状態で仕事の成果を褒められても、誰もが「褒めなくていいから、給料を上げてくれ」と思うでしょう。

こう考えると、たまに耳にする「我が社は給料は安いけれど、〇〇だから」という話は通用する可能性が低いのです。 衛生要因である「給与」や「福利厚生」は、不足・悪化すると不満が溜まる原因となりますが、求める水準を超えて改善しても、それ以上の影響はありません。そして、ボーナスが支給された1ヶ月月後に「先月、ボーナスをたくさんもらったから仕事をがんばろう!」と思う社員もほぼいません。やりがいや将来性を感じられない仕事では、仮に待遇に不満がなくとも、「本当に現在の仕事を続けていくべきなのか」という不安から離職や転職へとつながります。

つまり、雇用主が社員のモチベーションを向上させるには、衛生要因における問題を解決した上で、さらに動機付け要因を満たす必要があるのです。

この理論を活用することにより、モチベーションが向上して不満がなくなれば、安定した精神状態を維持することができ、メンタルヘルスの向上も期待できます。

モチベーションに関する間違った認識

企業は従業員のモチベーション向上のためにさまざまな工夫をしていると思いますが、基本的な認識が間違っている場合もあります。モチベーションに関する間違った認識の例を下記にご紹介します。

  1. 上司の工夫で部下のモチベーションを高められる
    基本的に、モチベーションは本人にしか上げられません。上司は部下がモチベーションを高められる「環境」を提供することしかできません。
  2. 金銭的報酬が最高のモチベーション向上要因である
    これは上記のハーズバーグ理論の衛生要因で、給与が低いと不満を感じますが、給与だけが高くてもやる気は起こりません。認知的な報酬や自己成長、満足感などを提供できることが重要なのです。
  3. モチベーションは、一度高まれば持続する
    モチベーションは状況や時間によって変動するため、不変ではありません。
  4. モチベーションが高まれば、生産性も向上する
    従業員のモチベーションが高くても、自動的に生産性が向上するわけではなく、効果的な組織サポートやリソースの提供が必要です。
  5. 罰則によってモチベーションを高めることができる
    従業員への叱責、降格や減給、その他罰則や警告を与えることで、一時的にモチベーションを上げることは可能ですが、長期的な向上にはつながりません。
  6. 複数の従業員に同じ方法を使って、モチベーションを向上させることができる
    モチベーションが上がる要因は人それぞれ異なるため、残念ながら万能薬は存在しません。

部下のモチベーション向上のための環境作り

上述の通り、モチベーションが高まる要因には個人差があり、上司が直接部下のモチベーションを上げることはできません。

モチベーションを向上させるために、「すべきこと」と「してはいけないこと」をまとめました。

すべきことしてはいけないこと
ビジョンを明確に示す失敗にばかり焦点を当てる
従業員に、目標達成に必要なサポートは何かを尋ねる従業員のイニシアティブやアイデアを理由なく却下する
週に一度は褒める仕事は与えても、権限は与えない
従業員の教育と維持を最優先に考える会議などで上司が一方的に話し、部下に話す機会を与えない
期待値を設定する必要のない情報を不適切に与える
従業員に敬意を持って接する目標を達成できない場合は叱責する
失敗から学ばせる本人に起因しない失敗を指摘する

いかがでしたしょうか?既に実践していることもあると思いますが、「してはいけないこと」に心当たりはないでしょうか?部下のモチベーション向上の環境作りに活用していただければと思います。

総合人事商社クレオコンサルティング
経営・人事コンサルタント 永岡卓さん

2004年、オハイオ州シンシナティで創業。北米での人事に関わる情報をお伝えします。企業の人事コンサルティング、人材派遣、人材教育、通訳・翻訳、北米進出企業のサポートに関しては、直接ご相談ください。
【公式サイト】 creo-usa.com
【メール】 info@creo-usa.com

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