新しい年を迎え、アメリカでは 2026年1月1日を起点に、各州で雇用や人事・労務管理に関わる法律や規定の改訂が施行されました。最低賃金の引き上げや有給休暇制度の見直し、給与や雇用情報の開示義務、さらには IRS のマイレージレート改定など、内容は多岐にわたります。
今回のコラムでは、全ての州に共通して影響する改訂事項と、特定の州のみに適用される主な州法・制度変更を整理し、2026年に押さえておきたい主要なポイントをわかりやすくご紹介します。複数州で従業員を雇用している企業や、リモートワークを含む多州展開を行う雇用主にとって、年初の情報整理はリスク管理の第一歩です。2026年の人事・労務対応を考えるうえでの「現在地」を確認する材料として、ぜひご活用ください。
全州共通:2026年 IRS マイレージ(車両通勤・出張費)レートの改定
米国 IRS は、2026年の事業用標準マイレージレートを 72.5セント/マイル に引き上げました。これは2025年と比べ 2.5セントの増額となります。
一方、医療・引越し用途のレートは 20.5セント(前年比0.5セント減)、チャリティ用途は14セントで変更なしです。
なお、これらはあくまで IRSの推奨レートであり、使用は任意であって義務ではありません。IRSによれば、この標準レートを使用せず、実際にかかったコストを計算する方法を選択することも可能とされています。 自家用車を業務に使用する従業員に対し、この標準レートを適用している企業では、早めに新レートを周知し、経費精算用シートや社内規程の金額更新を行うことをお勧めします。
最低賃金の改訂(1月1日より施行された州のみ掲載)


主な州法・制度変更
ニューヨーク州(NY)
最低賃金の段階的引き上げが継続され、2026年は NYCおよび周辺地域で $17.00、その他地域で $16.00 となります。Paid Family Leave(PFL)は制度自体継続しますが、保険料率や給付内容の調整が毎年行われるため、給与計算の正確性と従業員への丁寧な説明が重要となります。また、給与透明性規制も引き続き厳しく、求人時や昇進時の賃金表示には十分な注意が必要です。
カリフォルニア州(CA)
賃金・休暇・通知義務に関する細かな改正が引き続き行われています。カリフォルニア州内の従業員が少数であっても対応が必要なので、補遺(Addendum)に都度記載し、Employee Handbook本体の改訂をせずに管理する方法を推奨します。
イリノイ州(IL)
イリノイ州全労働者有給休暇法(Paid Leave for All Workers Act)が定着期に入り、2026年は 運用ミスが問題化するケースも想定されます。パートタイムを含む全従業員への有給休暇付与管理、繰越ルール、記録保存は、引き続きHRにとって重要な管理項目です。また、採用や昇進にAIを利用する場合の差別防止・開示義務についても、実務上の注意が必要です。
ミシガン州(MI)
最低賃金は 2026年1月1日より$13.73 に引き上げられ、今後$15.00 まで段階的に上昇する予定です。加えて、有給病気休暇制度の拡大により、小規模事業者を含めた休暇管理体制の整備が求められます。また、2025年に施行された有給病気休暇(Paid Sick Leave/Earned Sick Time)制度が、「規定がわかりづらい」「運用判断が難しい」といった声が聞かれます。理由は企業規模によって義務内容が異なる点と、付与方法(一括付与か積立式)の選択肢があることです。具体的には、企業の従業員数により付与日数や無給扱いの可否が異なり、さらに繰越・使用理由・記録保存義務が細かく規定されています。したがって、ミシガンで従業員を雇用する企業は、最低限の法定要件遵守だけでなく、Employee Handbookの記載と運用が一致しているか、改めて確認することが重要です。
ミネソタ州(MN)
州の有給家族・医療休暇(PFML)制度 が本格施行され、2026年は 保険料負担、休暇申請フロー、既存の社内制度との調整がHRの課題となります。複数拠点・多州展開を行う企業では、制度管理の煩雑化に注意が必要です。
デラウェア州(DE)
州の有給休暇制度(Paid Leave)が実質的な運用段階に入り、2026年からは 従業員が州給付を申請できるようになります。雇用主には、従業員への通知および社内手続き対応が求められます。
ワシントン州(WA)
有給家族・医療休暇(Paid Family & Medical Leave)における 「職場復帰の保護」適用範囲が拡大され、2026年からは25名以上の雇用主が対象となります。休暇取得後のポジション管理や復職対応が、これまで以上に重要になります。
オレゴン州(OR)
オレゴン州では、2026年1月1日から、新規採用者に対し、給与の計算方法・支払サイクル・控除内容などを書面で説明する義務が導入されました。これは求人時の給与レンジ開示ではなく、給与支払の仕組みそのものの透明性(Payroll Transparency)を求める新たな要件となっています。HR と Payroll が連携して通知書面の準備と年次更新が必要となります。
まとめ
- 各州の法律や規定の変更については、必ず 各州政府の公式ウェブサイト をご確認ください。
- 弊社では Employee Handbook(就業規則)の作成・改訂 もお手伝いしております。お気軽にお問い合わせください。
- アメリカのHRに携わっている方は既にお気づきかと思いますが、ここ数年、以前にも増して 連邦法にはない独自の州法が各州で施行される傾向が強まっています。かつては、カリフォルニア州など大都市を抱える州法のみを確認していれば足りると考えられていましたが、現在では 事業展開している全ての州の法令や規定を定期的に確認することが雇用主に求められています。特に、複数州で従業員を雇用している企業(リモートワークを含む)においては、州法の違いを踏まえたポリシー整備や、Employee Handbookへの追記・修正が、リスク管理の観点からますます重要となっています。
総合人事商社クレオコンサルティング
経営・人事コンサルタント 永岡卓さん
2004年、オハイオ州シンシナティで創業。北米での人事に関わる情報をお伝えします。企業の人事コンサルティング、人材派遣、人材教育、通訳・翻訳、北米進出企業のサポートに関しては、直接ご相談ください。
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