MENU

第1回 ワシントン州での離婚

  • URLをコピーしました!

ワシントン州では、夫婦のどちらかが「婚姻関係の修復は不可能」と考え、離婚の請願書を裁判所に提出し、配偶者に渡してから90日経つと、離婚が成立することになっています。しかし、離婚の多くは、90日では済まないことがほとんどです。

Northwest Justice Project によると、離婚が成立するまでにかかる大体の目安は4ヶ月から1年半の間となっています。しかし、夫婦間で(1)負債・将来の退職金を含めた財産分与、(2)別居・離婚扶養手当、(3)子どもの養育権、(4)子どもの面会権、(5)子どもの養育費、などを含めた離婚に関する全ての問題で双方の意見が合わないと、手続きが長引きます。特に、DV や子どもへの虐待、アルコールや薬物中毒など、複雑な問題が絡むほど長くかかることが多いです。

また、離婚する際に弁護士を雇うか雇わないか、雇う場合はどの弁護士を雇うかというのは、大切な問題です。本人が州の家族法をよく理解し、自身の法的権利を十分に主張でき、なおかつ夫婦間で財産・子どもの養育権を含めた全ての点で完全に合意しているなどの場合を除いては、通常、夫婦がそれぞれ離婚を専門とする弁護士を雇うことが賢明です。特に相手方が弁護士を雇っている場合は、自分の権利を弁護士を雇わずに主張することは困難です。

どうしても弁護士料を支払う資金がない場合でも、少なくとも一度は離婚専門弁護士に相談するのが良いでしょう。特に離婚の申請書を専門家に見てもらうことは大変有意義です。キング郡在住の方は、King County Bar Association(キング郡弁護士協会)に相談し、低額または無償の法律相談所を紹介してもらいましょう。キング郡以外にお住まいの方は、ワシントン州が無償で法律相談を受けられる場所を必要とする低所得者に提供している無料サービス 『CLEAR』 にご相談ください。

配偶者から離婚請願書を受け取ったら、まず全ての書類に目を通し、定められた期日までに返答をしなければなりません。期日を過ぎると相手方の言い分がそのまま自動的に通ってしまうことがあります。一つ一つの項目に迅速に返答することが大切です。

子どもがいる場合、または夫婦どちらかに収入がないなど、夫婦間で収入に格差がある場合は、離婚の申請から終局判決が出るまでの子どもの養育権・養育費・別居扶養手当などを取り決めた Temporary Order(臨時命令)を裁判所に申請するのが望ましいでしょう。また、DV が絡んでいる場合は自身と子どもの身を守るため、Restraining Order(接近禁止命令)を申請することを考えるのが良いでしょう。

日本人とアメリカ人の離婚の場合、文化の違いや言葉の問題、移民ステータスなど、アメリカ人同士の離婚には通常出てこない問題が絡み、状況が複雑になります。日本で生まれ育った人が、幼少時代からアメリカの社会的・法的システムに馴染みんでいるアメリカ人とよりスムーズに離婚する秘訣は、信頼できる家族や友人、そして移民の立場に理解のある弁護士、ジェンダーや文化の問題に詳しい心理カウンセラーなど、経験豊富な専門家の力を積極的に利用することです。夫婦関係に疑問が生じたら、早めに専門家に相談することが賢明です。

戸村 みゆきさん PhD, Psychologist

臨床心理学者。1998年、シアトル大学心理学科卒業後、2002年に同大学の心理学科修士課程卒業。2010年、セイブルック大学の心理学博士課程卒業。専門は心理療法とペアレンティングエバリュエーション(Parenting Evaluation/離婚訴訟時の子育て能力審査)。日英両語で、個人、家族の諸問題に幅広く対応。豊かな人間関係を育みたい、自己の可能性を広げたい、健やかで充実した人生を送りたいと望むあなたの心の旅をサポートします。

【住所】 3035 Island Crest Way, Suite 108, Mercer Island, WA 98040
【電話】 (425) 429-2069
【メール】 miyuki@islandtherapy.net
【公式サイト】 www.islandtherapy.net

掲載:2011年9月

コラムを通して提供している情報は、一般的、および教育的情報であり、読者個人に対する解決策や法的アドバイスではありません。 このコラムから得られる情報に基づいて何らかの行動を起こされる場合は、必ず専門家に相談するようにしてください。



  • URLをコピーしました!

この記事が気に入ったら
フォローをお願いします!

もくじ